それぞれの道
これからのことを話し合う、と言うことで一同は世界樹の若木が生えた場所に集まったのじゃった。
ティア、フィーン、フェーン、ロン、タイガ、フェニ、トール、ダウナーイロモノ妖精6人と彼女の合計14人。
それらが一同に集まると、ある意味壮観な光景じゃな。
「それで、これからのことを話し合うと言っていたが……どういうことだ?」
「んー……一応長くなるかも知れませんので、その前に座る物を用意しますね」
ロンの問い掛けに彼女がそう言うと、素早く《土壁》を工夫して、地面から土を盛り上げて人がひとり座れそうな椅子を14個分ほど創り出した。
ちなみに《土壁》として出した時点で、土のほうは固くなっており……濡れる心配などは無いようじゃった。
それらに全員が座るのを見て、彼女も土椅子の前に立ってから、話を始めた。
「では話をさせていただきますね。まず最初に、これからの話……と言うことですが、現在それぞれがどうするかというのを確認させてもらいますね」
「……分かった」
「「おっけー……」」
彼女の言葉に一同は頷き、ダウナー妖精たちにいたっては手をダラーっと挙げておった。
そして、まず初めにティアが手を挙げて、話を始めた。
「じゃあ、まずはあたしからだな。あたしはフィーンと共に魚人たちの国に向かおうと思っている」
「うん、フィン。ティアと一緒に海を見に行くんだー♪」
「そ、そーなのかっ!? だったら、オレも……」
「フェーンはお留守番だよー。だって、普通の妖精はこの国から出られないんだからねー」
「そ、そんなぁー……」
ティアの言葉にフィーンは嬉しそうに彼女の身体に抱きつき、フェーンの言葉に毒を吐いておった。
……うん、フィーン、でかくなって頭の回転も良くなった代わりに腹黒くなったようじゃな……。
そう思っていると、次は別の方向から声が掛かった。
「はいはーい、次はぼくが言うよ。このぼくがー!」
「あー、神様だー……」
「やっほー……」
「おはようー……」
「どーしたの……?」
何時の間にか現れた小人姿の森の神にダウナー妖精たちが口々に挨拶をしていく。
そんな彼女たちへと、森の神は手を振って応対しつつ……彼女が座るはずだった土椅子にちょこんと乗るようにして座ったのじゃった。
「おはようございます、森の神様。それでは、お話をお願いします」
「おはよー、アリスちゃん。それでね、昨日も決まってたけど、この妖精ちゃんたちはぼくの世話をしてもらおうと思っているよー」
「ああ……そういえば、そうでしたね」
「どんなことをするのか教えて、神様ー……」
「いっぱい世話するよー……」
「凄く可愛がるよー……」
「オッケー、任せてどんとこーい! っと、アリスちゃん。物は相談なんだけどさ、この子たちのための住む場所を創ってもらえないかな?」
暗そうではあるがテンションノリノリになっているダウナー妖精を見ながら、森の神は彼女にそう頼んだのじゃった。
頼まれた彼女は、神使に頼めば楽ではないのかと疑問に思いつつ、森の神を見ると……困った顔をしおった。
「うーん、リアードちゃんに頼みたいんだけど……あの子も、ちょっと別の植物に移ろうとしているから、時間が掛かるんだよねー」
「そうですか……。まあ、リアードが無理な理由はアタシたちですから、分かりました。後で、簡単なログハウスのような物を作ります。ちなみに木を伐採しても?」
「別に大丈夫だよー。というか、1本2本切ってどうこう言ってきたら、ぼくが何とかするからさ」
そう言って、彼女と森の神の間でダウナー妖精たちの家が創られる話が決まったのじゃった。
ちなみにダウナー妖精たちもきっと凄腕の世界樹の世話職人になるんじゃろうな。というか、巫女のようなものなのか? これは?
「じゃあ、妖精ちゃんたち……呼び難いから名前を言ってー」
「名前? ウィーン……」
「クィーン……」
「スィーン……」
「ツィーン……」
「ヌィーン……」
「ムィーン……」
「ィーンって名前が多いですね……。というか、国の名前とか女王様っぽい名前も居ましたし……」
そう小声で小さくツッコミを入れつつ、彼女は妖精たちを見ておった。
ちなみに名前を聞いていた森の神は分かったようにうんうんと頷いておるが……なんじゃろうか、この頷いていたら十分みたいなオーラは。
「うん、分かったよー! それじゃあ、向こうでどんなことをするか話をして決めようか、妖精ちゃんたち!」
「「はーい……」」
……うん、やっぱり覚え切れなかったようじゃな。
それを彼女も思いつつ、ウィーンと名乗った妖精の頭に乗って、ダウナー妖精と森の神は向こうへと歩いて行ったのじゃった。
そして、彼女はロンたちのほうへと向きおった。
「それで、アナタたちはどうするのですか?」
「自分たちか? ……正直何も考えていなかったな」
「オレもそうだよ」
「ウチも……」
「わた、しも……」
彼女の言葉に、ロンたちは何も考えていなかったことに気づき、腕を組んで悩み始めておった。
そんな彼らへと、彼女は手を差し伸べたのじゃった。
「……そんなに悩むのなら、皆さんはティアに着いて行ってはどうでしょうか?」
「ティアについて、魚人たちの国へか?」
「はい、それに今はいろんな国を見てみたほうが良いとアタシは思うんですよね」
彼女がそう言うと、彼らは再び考え始めたのじゃった。
そんな中で、ティアは彼女が言った言葉に疑問を抱いたらしく、話しかけてきた。
「なあ、アリス……。キミのその言いかただと、まるでキミはついて来ないと言ってるように聞こえるんだが?」
「はい、ついて行きませんよ」
「なっ!? 何故なんだ? キミも来てくれるものと思っていたのだが?」
「アリス、フィンたちと一緒に行かないのー?」
ティアは一瞬驚き、フィーンも悲しそうな顔を向けておった。
そんな彼女たちに対し、彼女は自身が向かう先を口にしたのじゃった。
「はい……。アタシは、魔族の国に行こうと思っています」
直後、周囲が固まり……、ざわめきが起きたのじゃった。
そろそろ、第三章として読み聞かせではなく、別視点を始めたいと思っています。
ちなみに舞台は魚人の国です。