これからのこと
「……何故自分は殴られたのだろうか…………?」
「あんたねぇ……、ウチも裸で、あんたも裸だったら、眼を背けるとか言うのが当たり前だと思うのよ!!」
折角のイケメンとなったロンじゃが、両頬を真っ赤に腫れ上がらせながら不思議そうに呟いておった。
そんな彼が言った言葉に鋭い目つきをより鋭くさせたフェニが、ロンを射殺さんばかりに睨みつけながらそう叫んでおったのじゃが……しばらく彼女は腸詰め料理は食べれんじゃろうな……。
ん? いったい何がどうしたかじゃと? ……お主にはまだ早いから、気にするでないぞ。
そして、射殺さんばかりの殺気がビリビリと放つ視線を送られているにも拘らず、フェニの言葉にロンは不思議そうに首を傾げておった。
「? たかが裸だろう? 自分は相手が裸でも自分が裸でも気にしないぞ?」
「ウチが気にするの! ……はぁ、ハガネ様はロンの馬鹿にもう少し性知識的なものを教えてあげるべきだったと思うのよ……」
「失敬な、自分は師匠に『喰いたいときに喰う。抱きたいときに抱く』と教わったぞ」
「ハ、ハガネさまぁぁぁぁぁぁぁーーーーっ!!!?」
キリッとした表情で言ったロンの言葉に、フェニは天に召されたハガネへと怨嗟の声を送っておった。
そんな彼女の声を間近で聞いていたトールは不安そうにフェニを見ていた。
トールの視線に気づいたフェニは、申し訳なさそうに謝りながら彼女の首に巻かれたリボンを上手に結びなおした。
「あり、がと……フェニ、おねえちゃん」
「どういたしまして。それにしても、こういう服は可愛いって思ってたけど……、初めて着るから心配だったけど……案外良い物ね」
「う、ん……フェニ、おねえちゃんも……似合って、るよ?」
「うん、ありがとう。トール」
恥かしがりながら、そう言ったトールに礼を言ってフェニは少しだけだが気持ちが落ち着くのを感じておった。
ちなみに彼女たちの会話で分かるように、4人はちゃんとしたアルト謹製の服を着ておった。
フェニは、ヒラヒラとしたフリルがいっぱい付けられた黒色のワンピース……彼の世界のゴスロリと呼ばれるタイプの衣装を着ておった。
そして、トールの服装は胸元の大きな赤いリボンが特徴的な……所謂テレビの中だけのファンシーな感じの魔法少女といった服装じゃった。
「戦馬鹿になりすぎるとこんな風になるんだな……気をつけないと」
「タイガ、戦馬鹿とは何だ戦馬鹿とは」
「戦馬鹿って呼ばれたくないならもう少し、女性の気遣いを知れっていうんだよ! オレも全然だけどさぁ!」
珍しくロンにツッコミを入れるタイガは、スリットが入った袖なしの厚手のジャケットっぽい物と短い短パンという、格ゲーと呼ばれる彼の世界の遊びの一つに出てきそうな服装をしておった。
ちなみにロンにそうツッコミを入れるよりも前は、フェニの睨みに恐怖を感じており、その前の着替えた直後はカッコイイと感じていたのか……それとも服装に師匠が無いかを感じているのか、手足を動かしておった。
そして、年下なのだから敬語を使うようにと叱るべきかと悩んでいるロンは、上半身が裸だった。
……もう一度言うが、ロンは上半身が裸で下には野暮ったい黒色のズボンを穿いているだけじゃった。
上半身MAPPAじゃよ、MAPPA! イケメンの裸。少女が見たら鼻血ものなイケメンの裸じゃ! じゃが、悲しいことに此処には鼻血を流しそうな美女が居なければ、フェニが蔑む目で見ているだけじゃった。
そんな風に思っておると、彼女がロンへと胸当てを渡してきたんじゃ。
「はい、出来ましたよロン」
「すまない、……よし、これで完璧だ」
彼女から受け取った胸当てを地肌に装着すると、ロンは満足そうに腰に手を当てて頷いておった。……完璧なのじゃろうか、これは?
ちなみにこの胸当てはロンが元々装備していた物を、彼女の手によって少し加工した逸品のようじゃな。
そんなロンの胸当てをタイガは羨ましそうに見つめており、フェニは何言ってんのコイツ……と言う視線を送り、トールは現在の防御力に不安を感じているのか胸辺りに手を当てておった。
「防御力に不安があるように思っているようですが、この服もエルフの作ったものですから簡単には破けませんし、防御力もあるみたいですよ」
「そう、なの……?」
「本当かよ? ただの布だぜ、どう見ても……」
「はい、エルフ特製の布を舐めてもらっては困るということです」
彼女が言ったことをいまいち信用できずに、タイガとトールは自分が着ている服をマジマジと見ておった。
じゃが、彼女の瞳にはそれらの服の詳細が見えており、特性にタイガの着ている服には火耐性:弱が付いており、トールの服には闇耐性・弱が付いておった。
ロンとフェニの服には何か付いていないのかじゃと? ふむ……、フェニの服には魔法軽減・弱が付いており、ロンのズボンには素早さ上昇・微が付いておるな。
まあ、彼女はその特性を語るつもりは無いので、何か効果があるみたいだとか凄い服と思ってもらうだけで十分じゃろうな。
「まあ、何にせよ……準備は出来たみたいですね。っと、これは腰にでも付けていて下さい」
「これは……ヘンシンアイテムの元と言っていた物か?」
「はい。これを掲げて、『変身』と叫べば魔族の姿に戻ることが出来ます。ですが、その際は着ている物はすべて破けてしまいます。あと、5分経つと今の姿に戻ってしまいますから注意してください」
「分かった。気をつけよう」
そう言って彼女、紐を通した木札を4人は受け取った。
木札を見ると、それぞれ焼印で文字が書かれているのじゃが……彼らが、見たことも無い文字じゃった。
4人はそれを受け取ると、紐を服の腰辺りで結んだ。
「では……これからのことを話し合いましょうか」
付け終えるのを見届け、そう彼女は彼らに向けて言うのじゃった。
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ちなみに、彼らのヘンシンアイテム(笑)は世界樹の板製でそれぞれ「龍」「虎」「鳥」「亀」と書かれています。