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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
獣の章
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ロンたちの答え・後編

※今回もロン視点です。

 あのあと、戻れると言うことを知るや、フェニとタイガの2人も一時的になら良いと頷き、トールも皆が良いならと反対すること無く、全員が頷いていた。

 あそこまで話し合った意味はあったのだろうか……。まあ、しかし話し合いがあったから、認識していたことが改めて理解出来たのだから良いと考えるべきか……。


「それじゃあ、行きますよ。――っと、皆さんこれを持ってください」

「何だこれは? 木札のようだが……」

「んー、所謂……『変身』アイテムの元ってやつですかね?」

「? すまないが、何を言ってるのかわからないのだが……む――」


 そして、アリスの準備の下……自分たちは彼女が指定した円の中に立っており、突然思い出したようにアリスは自分たちに何かの木で作られたであろう札のような物を渡してきた。

 というか、ヘンシンアイテムとはいったいなんだ? そう思いながら、自分は尋ねようとした。

 だが、それよりも先にアリスが自分たちに対して魔族を辞める……いや、詐称する行動を開始したらしい。その瞬間、アリスの身体と何時の間にか減っていた四本の尻尾が光を放つのが見え……直後、自分たちの足元から白い煙が立ち込めた。


「なっ――何よこれっ!!? 目くらましなわけっ!?」

「うわっ!? け、煙っ!? 煙たくないし、咽ない……よなぁ……?」

「あれ? 目、しょぼしょぼ……しな、い……?」

「……………………」


 3人が心配そうに言う中、煙は自分たちを覆っていき……自分たちをすべて覆い隠していったところで、煙は増えるのを止めたらしい。そして、その煙の中で、自分たちから何かが抜けて行くのを感じ……同時に、手に握った木札が熱くなったような気がしていた。

 そして、しばらくして身体から何かが抜け終わり、手の木札から熱が無くなっていったと同時に、煙が徐々に晴れて行き……そこには……。


「…………タイガ、なのか?」

「え? も、もしかして……お前、ロン……なのか?」

「フェ、ニおねえ……ちゃん? え、え?」

「その口調……、ト、トールなの?!」


 白黒の毛並みの頭と耳、股の間から見える尻尾という見覚えのある特徴から、目の前の獣人らしき子供がタイガであることが、自分には何となくだが、理解出来た。

 そして、タイガが驚いているところを見ると、自分も変化しているのだろうと思いながら顔を確認することが出来ないために、両手を見てみた。

 すると自分の視界に映った両手は……手の甲から肘辺りまでの外側に蒼い鱗がある以外、人間のような肌色をしていた。

 下を見ると、腰に付けていた装備がずり落ちてしまい、下半身が清々しいことになっているところを見ると……身体自体も青い鱗が若干あるだけで肌色になっているのだろう……。

 そんな風に、思いながら他の2人がどうなっているのかとふと気になり、煙が晴れて行く中で2人のほうへと視線を向けてみることにした。

 下はまだ煙が立ち込めているが、顔が見え……赤いウェーブがかった髪の勝気な雰囲気をした少女と目が合った。

 一瞬誰かと思ったが……、耳辺りに見覚えがある羽が見えたのでフェニだと自分は確信した。

 向こうも、自分を見て呆けた顔をしたが、話しかけることにした。


「フェニ、トール。お前たちは身体に異常は無いか?」

「え、ええ……ウチらは特に問題な――――ちょ、ちょっと待って! ロ、ロン……よね? それとタイガも、ちょっと向こう向いててっ!! トールも、こっちに来てッ!!」

「? フェニ、おねー……ちゃん? どー、した……の?」

「どうしたもこうしたも無いわよっ! トール、あんた自分の今の格好見て見なさいよっ!!」

「ふぇ? ふぇ、ぇ……? え? えぇぇぇ??!」


 煙の中に頭を隠したフェニに疑問を抱きながら、向こうを向けと言われたが心配なために……自分はその願いを聞かずにジッと見ていた。

 そうして待っていると、タイガがどうしたのかと首を傾げながら、こちらへと近づいてきた。

 そして、しばらくすると煙が晴れて、フェニとトールの姿が自分たちの前に曝け出され、2人からも自分たちの姿が晒された。

 屈んだ状態で自分たちに背中を向けたフェニの背中から見える翼は縮んでおり、空を飛ぶというよりも飾り羽というような印象が強くなっており、尻の真ん中には鳥魔族特有……いや、多分鳥型の獣人にもあるのかも知れない、赤色の尾羽があった。

 その奥には、黒ずんだ緑色の髪をしたタイガほどの年頃の少女が、何故自分が裸となっているのか理解出来ずに気弱そうな印象を持つ顔を呆然とさせながら立っていた。

 多分、だがその少女が……トールなのだろう。

 そんな風に思っていると、トールと目が合ったが……混乱しているからか、ジッと自分を見るだけだった。

 そして……、トールがジッと自分を見ていることに気づいたフェニが、トールへと問い掛けていた。


「トール? 一体何を見――」

「うぇぇっ!? ま、まさか……トールゥ!? フェ、フェニィィ!?」

「――え?」


 振り返ろうとしたフェニだったが、自分の隣で盛大に大声を上げたタイガの声に気づき……、完全に振り返ったときに漸く自分が見られていたということに気づいたようだ。

 ちなみに振り返ったときに彼女の動き易いことこの上ない、慎ましやかで成長の見込みが無さそうな少しだけ盛り上がりのある胸が自分たちの視界に晒された。

 ……そして、見られていたということに気づいたフェニは顔を真っ赤にしながら、パクパクと口を動かしていたが言葉にはなっていないようだった。

 仕方ない、ここは素直に謝るとしよう。


「すまないフェニ。あの煙で何かあったのではないかと少し心配になって、向こうを見ていなかった。本当にすまなかった……どうした、フェニ? やはり何処か具合が悪かったりするのか?」


 顔を赤くして口をパクパクし続けるフェニに何処か身体の不調があるのかと思いつつ、近づくと耳まで赤くなり始め……最終的に糸が切れたかのように気絶してしまった。

 いったいどうしたというのだ? そう思いながら、自分は首を傾げる。というか、裸で気絶していて大丈夫なのか? そう思いながら、隣のトールを見ると何故か両手で顔を隠しながら、自分を見ていた。

 一体全体どうしたというのだろうか? そう思いながら、自分は首を傾げていた。

 ……フェニが何を見たかは察してください。

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