ロンたちの答え・前編
※視点はロンです。
「準備をするので、その間にアナタたちで決めてください」
そう言って、アリスは隅のほうへと歩いていった。
それを見終わり、自分たちは互いの顔を見渡した。
アリスに苦手意識があるタイガは自分で言ったことを彼女に駄目だしされたのが悪かったのか、まだ少し落ち込んでいるようなので、少しそっとして置こう。
フェニを見ると、魔族としてのプライドはあるが……魔族であることを貫き続けると、自分だけではなく歳若いトールやタイガまでも巻き込むという事実を受け止めているようで、眉間に皺を寄せていた。
やはり、自分が持つプライドが高くても、こいつは優しいな……。特に自分自身ではなく友人を気にかけるところがな。
そう思いながら、トールを見ると自分がタイガたちを見られていることに気づいていたようで、自分に向けられた視線を逸らすように目を背けていた。
……恥かしいからと言いつつ、盾役を務めるのだからトールは良く周りを見ている。
そんな風に思っていると、フェニが自分に話しかけてきた。
「ロン、さっきからウチらをジロジロ見てるけど、あんたはどうなんよ?」
「自分か? 正直悩んでいるが……、あえて言うならばれないように魔族を辞めることにはなんら問題は無い」
「っ!? あんた、魔族辞めた場合、力が弱くなるって言うのを分かって言ってるっ!?」
「そうなったら、弱くなった力を鍛えて強くなれば良い。それに、自分のプライドがとアリスに視線で訴えかけていたが、多分本当の理由に気づかれていたと思うぞ」
「な――っ!? そっ、そんなわけないんよっ! というかそもそも本当の理由なんてっ!!」
自分の言葉にフェニは顔を紅くして大慌てし始めた。
しかし、恥ずかしがることではないと思うのだが……。まあ、人それぞれということだろう。
そしてフェニはそれを誤魔化すようにしてタイガとトールの2人にもどうするかを問い掛けた。
いきなりというわけではないはずなのだが、タイガのほうは両腕を組みながらウギギギ……と唸り声を上げながら悩んでいるようだったが……本当に悩んでいるのか疑わしく見えるが、本当に悩んでいるのだ。
そして、トールのほうはトールのほうで頭ではどう言えば良いのか理解できているようだが、言ったら言ったで怒鳴られたり相手が思っていた答えと違っているのではないかと考えて間誤付いているように見えた。
そんな風に思っていると、考えすぎたタイガが頭をクシャクシャとかきながら突然叫び出した。
「あーーっ! くっそーーーーッ!! 悩んでも思い浮かばねーーっ!!」
「タ、タイ……ガ、落ち着……い――ひゃうぅぅ……」
「あ、わ……わりぃ。けど、こう悩むのって凄く苦手なんだよ……」
落ち着かせようとしたタイガに驚いたトールが縮こまったところで、自分かフェニが嗜めるよりも前に落ち着きを取り戻して謝っていたが……もう少し、怖がらせないようにしたほうが良いと思うぞタイガ……。
とりあえず、フェニにトールを頼むと視線で送ると、何時ものことだから理解してくれたらしくタイガに向けて呆れたといわんばかりの溜息を吐きながら、顔を出して涙目になっているトールをフェニを慰めてくれていた。
その姿を見て、タイガがやはりシュンと落ち込んでいたが……まあ、今は良いだろう。
「けど、けどよぉ……いきなり辞めろとか言われても、納得できねぇよ……」
しょんぼりしていたタイガが項垂れながら、そう口にした。
……確かに、いきなりそう言われて納得できるわけは無いと思う。けれど……。
「納得が出来ないとしても、今は生きるためなら自分は魔族であることを捨てても構わない。そう自分は思っている」
「ロン……。けど、ウチもタイガと同じ意見だって言わせてもらうわ。けど……そう言っていたら、ウチらはきっと全てに追われる日々になる」
「ああ、そうしたら、悔しいが自分にはお前たちを護る術がない」
「ま、護るって……オレは護られるほど弱くねぇよ!」
「わた、しも……護ら、れてる……わけじゃ、ない……!」
自分は、お守りという意味で言ったわけではないのだがタイガとトールはそう思ったらしく、拗ねるような口調で自分に向けて言ってきた。
それに対して少し困った自分に呆れているのかフェニは溜息を吐きながら、見ていた。
そんな風にしていると、準備が終わったらしいアリスがこちらへと近づいてくるのが見え、自分の視線に気づいた3人もアリスを見ていた。
「準備は出来ましたが……答えは出ましたか?」
「もう少し待ってく……いや、アリス。聞かせて欲しいのだが、魔族を辞めた場合……もう戻ることは出来ないのだろうか?」
「戻れますよ?」
……アリス、出来ればそれは初めに言ってくれないだろうか?
そう思いながら、自分は悩んでいたフェニとタイガを見ると……固まっていることに気づいた。
隣を見るとトールも安心しているように見えたのだから、気にはしていたのだろう。
そんな風に考えていると、2人がプルプルと震え始めた。
「「そ、それを早く言えええええぇぇぇぇぇっ!!」」
まあ、そうなるな。そう思いながら、自分は耳に手を当てていた。
一気にやるよりも、明日の更新でどうなるかのほうが良いと考えたので、区切らせていただきます。
一応、明日は少しだけサービスシーンありかも?




