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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
獣の章
224/496

着替え

 ロンとタイガが目を覚ますと、周りでは見たことも無い服を身体に当てている妖精たちが居た。

 ……正直言って、何を言ってるのかさっぱりじゃろうが、目覚めて周囲を見て、そんなことになっていたら頭がフリーズするのも当たり前じゃよな。

 しかも、彼女たちが持っている服はこれまでの人生の中で見たことが無い類の服じゃった。


「……これは、いったいどういう状況なんだ…………?」

「オ、オレに聞かれても分かるわけねぇだろ……? トールとフェニは何か知ら――あれ?」


 頭を抱えるロンに同じように困惑していたタイガが隣に居るはずのトールとフェニたちに問い質そうとした。

 ……だが、問い質した相手はその場には居らず、タイガは首を傾げたのじゃった。そんなタイガの肩をロンがポンと叩き……ある場所を指差したのじゃ。

 そのロンの反応に若干嫌な予感を感じながら、恐る恐るタイガはその方向を見ると……探していた2人の姿が見えたのじゃった。

 やはり、女性というのはこういう見たことが無くても可愛らしい服というのには目がないのじゃな。

 KAWAIIは正義ということじゃよ!


「ああ、2人とも起きたんですね」

「……アリスか。これはいったいどういう状況なんだ?」

「えっとですね……。これはカーシから帰ってくるときに着替えを貰ったので、折角なので好きな服を皆さんに選んでもらおうってことになったんです」

「そ、それであれなのか……? けど、人間サイズの服なんだから、フェニとトールには合わないんじゃ――」

「……タイガ。そういうのを面として言うのは止めたほうが良いですよ? じゃないと、トラウマを見ることになりますから」


 彼女の底冷えするような一言に、タイガは顔を蒼ざめながらコクコクと頷いておった……。

 いったい彼は何を見たんじゃろうな……。まあ、聞くのは怖いから聞かぬがな。

 ちなみにそんな彼らの様子に気づかずに、おんなのこたちは服を見ていたのじゃった。

 そして、それからしばらくして妖精たちは自分が着たいと思った服を選び終えたらしく、着替えを開始したのじゃが……その前に、男2人……じゃなかった3人は隔離じゃ隔離。


「だせー! ここからだせー!!」

「フェーン、五月蝿いよー」

「うぅ……フィ、フィーンー……」


 隔離した土壁の空気穴からフェーンが叫ぶが、フィーンの一言で情けない声を上げてから反応が無くなりおった。

 というか、こやつ彼女について、カーシの街に帰らなかったんじゃな……。

 とか思っていると、着替えが始まったんじゃが……、彼の世界で言うところの小中高生な少女たちの着替えというのは微妙に背徳感を感じるのは何故じゃろうな……。

 まあ、はしゃぐことも無く、黙々と着替えて行くダウナー系妖精たちとフィーンとティアたちじゃが……覗き要因も排除しておるし、ラッキースケベな出来事も起こるわけがない。なので、着替えは少し手間取っている妖精たちの手伝いをするぐらいで特に目立ったことは無かったのじゃった。

 とか思っていると、トールとフェニの2人は着替えをせずに、見ているだけだということに気がついたのじゃ。


「お二人は着ないのですか?」

「あんたねぇ……、ウチらがこれとか着れる体型をしてるって言いたいの?」

「可愛い、し……着て、みたい。けど……破れ、ちゃう……」


 彼女の言葉に、フェニは苛立ちながら答え……トールは羨ましそうに呟いておった。

 そんな2人を見ながら、彼女は考えごとをしているのか、顎辺りに指を当てていた。

 とかやっている間に、ティアたちの着替えが終わったらしく、彼女たちに声をかけて来た。


「あ、着替えが終わったみたいですね。じゃあ、男たちを出しますよ?」

「あ、ああ……別に構わないが……。いや、まあ……感想を言ってくれるような者たちではないから別に平気か」

「あんたら、何気に酷いことを言ってるわね……。でもまあ、ウチも否定はしないよ」


 ティアの言葉に同意しながらフェニは頷き、それを見ながら彼女は男3人を隔離した《土壁》を解除した。

 《土壁》の中は暗かったからか、日の光にロンたちは目を細めたが……すぐに光に慣れたらしく、軽く目を瞬かせてから着替え終えた女性陣を見た。


「これは……、どう言えば良いのか分からないが、色んな格好だな」

「うわ、すげぇ……」

「……ね。予想通りの反応だったわ」


 そう言った、ロンとタイガを見ながら、フェニが溜息を吐いておったが……2人にはわかっていないようじゃった。

 ちなみに彼女たちの服はこんな感じじゃったが……、わしの下手な説明で理解できるかと聞かれたら不安じゃが、まあ何とかなるじゃろう!

 まずはティアじゃが、コンセプトは冒険者の服なのじゃろうが……上半身は乳白色の臍だしシャツに、ショート丈の蒼系の半袖ジャケット。下半身はショートパンツと太股辺りまでの長さの靴下と足首までの革靴といった物じゃった。

 似合っているかどうかは別として、彼女自身はこういう服に憧れていたのか、凄く嬉しそうにしながら変なところはないかとキョロキョロとしておった。


「ティアー、フィンの服装どう、どう?」

「うん、フィーンも凄く可愛いよ。と、ところでフィーン、あたしのほうは……どうだろうか?」


 そして、隣のフィーンは背中に大きな黄色いリボンがついた黄緑色のワンピースに、その色を少しだけ濃くした色の縁がフリフリとしたケープを着ておった。

 ちなみに髪のほうにもリボンを付けており、リボンが花のように見えていた。


「うん、似合ってるよティアー。皆も似合ってるよー♪」

「「あー……うん、ありがとー……」」


 ティアに笑い掛け、フィーンは続いてダウナー妖精たちに笑いかけた。

 すると、ダウナー妖精たちも言われて照れたのか、少しだけ頬が紅くなっていた。

 ダウナー妖精たちは色々悩んだみたいだが、統一的なことはしなかったらしく……それぞれ違った衣装を身に纏っておった。(主にイロモノのじゃが、気にするべきではないじゃろう)

 ヒノッキの街でロンたちに話しかけた青髪ダウナー妖精は、何故かシスター服。

 ナーラの街に居たという灰色髪ダウナー妖精は、古き良き時代の体操服(ブルマー)

 スギーの街に居たという桃色髪ダウナー妖精は、アキバ系メイド服。

 ヒーバの街に居たという黒髪ダウナー妖精は、紺色が眩しい旧スク水のような服。

 ケヤッキの街に居たという白髪ダウナー妖精は、白と朱の上下である巫女服。

 マッツの街に居たという橙色髪ダウナー妖精は、チアガール衣装。

 …………うん、イロモノじゃ。本当にイロモノじゃな。

 ちなみに髪のほうは、彼女が弄ってツインテールだのポニーテールだのおさげだの三つ編みだのと仕上げていきおったのじゃった。


「……さて、次はアナタたちの番ですね」

「「「「……え?」」」」


 一通り、髪型を整え終えた彼女はロンたちのほうへと向き、そう言った。

 いきなりそう言われた彼らはどういうことだと、互いを見回していた。

 そんな彼らへと、彼女はとんでもない一言を口にしたのじゃった。


「何をするかという顔をしているので、言いますが……ちょっと魔族辞めましょうか」


 この一言に、彼らの目が点になり……息が洩れるように、声が口から出たのじゃった。


「「「「は…………はぁ?」」」」

妖精たちの着せ替えは完了ー。

ってことで、次はロンたちを着せ替えます。

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