森の神の説明・後編
「アリスちゃんが世界樹の種を全力全開な《浄化》で綺麗にしてくれたから、こうやってぼくも早く出ることが出来たんだよね。ありがとね、アリスちゃん」
「は、はあ……」
森の神(小人状態)が彼女にお礼を言うのだが、いまいち理解出来ていないのか、彼女は気の抜けた返事を返すだけだった。
ちなみに彼女の浄化が効いたのか、どうしてなのかは知らないが……世界樹の種を植えていた場所には、種ではなく既に小人状態の森の神ほどの大きさの若木が生えておったのじゃった。
そんな森の神を見ながら、彼女は聞くべきことは聞くべきと考えて、森の神を見たのじゃった。
「あの、それで……どうしてフィーン。それと、他の妖精の子たちも大きくなっているのですか?」
「うーん、それなんだけどねー……言っちゃっても良い?」
彼女の質問に、森の神は物凄く言い辛そうな表情をして、マジマジとフィーンや他の妖精の子たちを見ておった。
その反応にどういうわけだか分からずに彼女は首を傾げながら……、頷いたのじゃった。
「じゃあ、言うけどねー……、アリスちゃんがこの子たちを治すために色々してたときに、ぼくの樹液を使ったよね?」
「は、はい……狂っていたアナタが使うようにと指示してきたので……」
「うん、それは良いんだよ。それは良いんだけど……《異界》からそれを出すときに、ぼくの身体の一部とキミの使っていた武器の欠片が落ちちゃってたんだよね」
そう森の神が言った瞬間、周囲が静まり返ったのじゃった。
ジーッという効果音が付きそうなほどの視線を彼女に向けるティア。
何となく理解出来ていないようだが、こいつのせいかという視線を送るフェーン。
話に入れないが、また何かをやったのかという視線を送るロンたち4名。
キラキラとした瞳を彼女に向けるフィーン。
……そして、そんな瞳にどう反応すればいいのか分からず、汗をダラダラと流す彼女。
「えっと……その、それで……フィーンたちに異常があるのでしょうか……?」
「異常? んー、まったくないけど……まあ、しいて言うなら普通の妖精よりも位が高くて、ティタよりも低い存在になったってところかな?」
「そ、そうですか…………、実際のところは?」
「ただちょっと頭がよくなったのと、言葉が上手になったことだねー。あと魔法少しだけ使える」
「あー、ほんとだー! 言われてみれば、フィンいっつも考えていること言い切れなかったけど、上手く話せてるー♪」
森の神の言葉にフィーンが嬉しそうに頷いて、はしゃいでおるのを見て……ティアは微笑んだ。
そんな2人を彼女は微笑ましく見てから、森の神へと振り返った。
「フィーンたちがこうなったのは分かりました。……それで、アナタがまた狂わされるという心配は無いのでしょうか?」
「ああ、そうだよねー……うーん、困った困った。だけど、ああいうタイプって一度失敗したらそこにちょっかいはかけないように思うんだけど?」
森の神がそう言うと、一度あのムカつくニヤケ顔を思い出して……納得出来たようじゃったらしく、彼女も頷いた。
「……それもそうですよね。では、フィーンたちをどうしますか?」
「どうって言うと?」
「こうなりはしましたが、元の街に帰すかどうか……ですよ」
そう彼女が言うと、森の神もその考えが至っていなかったのか、うーんと腕を組んで唸り始めたのじゃった。
ちなみにフィーンのほうはティアと離れたくないと言う風に、抱きついておった。
しかし、残りの妖精たちは何処か虚ろというか……無関心といった感じじゃったんじゃよ。まるで他人事のようにの。
そんな妖精たちに、森の神は尋ねることにしたのじゃった。
「んー……、ねーキミたちはどうしたい?」
「……別に」
「帰っても意味がないし……」
「街がないし……」
「居場所がないし……」
「どうして死ななかったのかぁ……」
……元々そんな感じにダウナー系だったのか、瘴気の影響だったのかはわからないが……フィーン以外の妖精たちは膝を抱えてそう呟いておった。
ちなみに街がないと言った妖精の声を聞いて、魔族4人組は申し訳なさそうに目を逸らしていた。
「だそうだけど……、どーしようかアリスちゃん?」
「そう……ですね。…………あ、いっそのこと、世界樹を育てる役割に就かせたらどうですか……なーんて」
「あ、いいねー。それいいねー♪ キミたちもどうかなー?」
「……え”?」
冗談で言ったつもりだった彼女の言葉に、森の神は頷きながらダウナー系妖精集団に問い掛けおった。
すると、ぼんやりとしながらダウナー系妖精たちはそれぞれを見て、何かを相談するようにしていた。
……そして、結論に達したのか小さく頷いた。
「じゃー……そっちのほうでお願いするー……」
「よろしく、神様ー……」
「どー手入れしたら良いのか、神様おしえてー……」
「こんごとも、よろしくー……」
そう口々にダウナー妖精たちは告げ、小人な森の神は元々乗り気だったからか……よろしくよろしくー♪ と言って楽しそうであった。
まあ、楽しそうであればそれで良い……と言えば良いのじゃろうか?
そんな風にわしらは思うっておったが、彼女のほうは自分が言った言葉で妖精たちの今後が決まったことに決まりが悪そうじゃった。