森の神の説明・前編
それからしばらくして、彼女は意識がまだはっきりとはしていないが目が覚めたのじゃ。
ぼんやりとした意識の中で、起き上がると……置き上がった彼女に気づいたティアたちが近づいてきた。
「アリス、大丈夫か?」
「は、はい……まだ頭がくらくらしますが、大丈夫……です」
「そうか……なら良かった。だったら少し聞きたいことが――」
ティアが何かを言おうとした瞬間、彼女へと突然抱きつく存在がおった。
ふんわりとした草木の香りが鼻を擽り、目にサラサラとした輝く若草色が目に留まったのじゃった。
「アリスー、アリスー! ありがとー! ありがとー!」
「え? え? だ、誰ですか……?」
「フィンだよー、おっきくなっちゃったけどフィンだよー!」
目を白黒させる彼女へと、お主をもう少し大きくさせたぐらいの……10歳児ぐらいの大きさの少女がそう言ったのじゃった。
そう言われた彼女は目を瞬かせながら、マジマジとフィーンと自らを名乗る少女を見たのじゃ。
銀色にほんの少しだけ緑色を垂らしたような、光に透けて輝く若草色の長い髪。
子供特有の瑞々しい肌とぷっくりとした唇。そして、瞳はフィーンと同じく全てを見通せそうな瞳。
誰が用意したのかはわからないが、身体を包む気休め程度の白いワンピースのような服。
その背中からは、妖精特有の翅……ただし、普通の妖精と違っているのか若干黒く透けていた。
「え……? ほ、本当に……フィーン、なのですか?」
「そうだよー!」
「……ですが、どうしてそんな風に……?」
「あたしも、アリスなら知ってると思ったんだが……分からないのか?」
思案顔で呟く彼女へと、ティアが近づいてそう問い掛けてきた。けれど、分からない物は分からないので、彼女は静かに首を振った。
しかし、その答えは思わぬところから返ってきたのじゃった。
「それなら、ぼくが説明してあげるよ」
「え?」
「なっ!? だ、だれだ!?」
不意にした声に、聞き覚えがあった彼女は振り返り……。ティアは驚きつつ、周囲を見渡しておった。
そして同時に、声がした場所が世界樹の種を植えた場所であることに気づき……その場所を見ると、小人らしき人物が立っておったんじゃ。
それを見たとき、フィーンがパアッと満面の笑顔を作り、ティアは警戒しつつ見ており、彼女は呆気に取られておった。
「やーやー、無事に戻って来れたみたいで良かったよ。元気にしてたかい、妖精ちゃんたち♪」
「だ、だれだっ!?」
「アナタは……、いえ先ほどとはまるっきり違いますから……そっちが素ですか?」
「うん、ごめんねアリスちゃん。狂ったぼくが色々としちゃってさー」
「いえ、気にしないでください……まあ、若干イラッとはしましたが……」
「あはは、微妙に黒いねー。アリスちゃんさっすがだねー!」
疲れた顔をしながら、小人と話す彼女。そして、それに返事を返す小人。
そんな両者を見て、ティアは物凄く困惑しておったが……彼女に聞ける雰囲気ではなかった。
そんな困惑するティアへとフィーンが袖を引っ張って顔を近づけるように言ってきた。
「ん? どうしたんだ、フィーン?」
「あのね、ティア。あの人……神様だよ」
「……え? か、かみさま?」
「うん、フィンのことを助けてくれた神様なの」
フィーンの言葉を噛み砕くようにしながら、ティアがフィーンと小人をマジマジと見比べるのが見えた。
そして、ティアの頭が目の前の小人が森の神様であることを漸く理解した瞬間、驚きの声が森の中に木霊したのじゃった。
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雑記で書いたように、昨日は本当にやばかった……。
風邪なのか、食あたりなのかは分からないけれど、本当にオエー鳥状態だったのが……。