劇的びふぉーあふたー。
「ア、アリスッ!?」
眩い光がフィーンたちが閉じ込められている黒い卵を包み込んだ瞬間、糸が切れたようにアリスがガクリと倒れた。
それを見たあたしは驚きながら、アリスの名前を呼びながら駆け寄り……彼女を抱き上げた。
「アリスッ! 大丈夫か!? アリス、返事をしてくれ! アリ――すまない」
必死にアリスの身体を揺すったが、彼女は何の反応も示さず。
白磁のように白い肌は青みがかっており、具合が悪そうに見え――そうだ、これは……魔力が枯渇したときの症状だ。
……じゃあ、アリスは今使った《浄化》にすべての魔力を注ぎ込んだというのか……?
それに気づいたとき、あたしはアリスに向けて感謝と同時に彼女に任せすぎてしまったことに申し訳ない気持ちとなってしまっていた。
そんな想いを胸に抱きながら、あたしはフィーンたちが包まれている光を見守った。
「お願いだ。まだあたしたちを見守る神がいるなら、アリスの頑張りを無下にしないでくれ……フィーンたちを、助けてくれ……、おねがい……します」
その光を見守りながら、ぽつりとあたしは誰にも聞こえないように呟いた。
……本当に、あたしは……弱いな。
○ ● ○
くらい、くらいなか……だけど、いつものみたいにつめたくて、いたいようなかんじがまったくしなかった。
ううん、それどころかー……なんでー……? なんだか、すごくきもちがいい……?
あぁ、そっかー……フィン、しんじゃったんだ……。
ティア、ごめん。ごめんね、つらいやくめをおしつけちゃって……。
だけど……だけど……。
「また、フィン。ティアのまわりをとびたかったな……」
「だったら、飛べばいいじゃない♪」
「だ、だれー……!?」
ひとりきりだとおもっていたばしょに、こえがきこえて……ふりかえるとしらないおんなのひとがたっていた。
はじめてみるひと。……だけど、すごくなつかしくてあんしんできるようなきぶんになってくる。
こんなきもちははじめてだけど……、もしかして……。
「か、かみさま?」
「流石、妖精の目っ♪ 分かっちゃうみたいだねー!」
「え? え? ど、どーして?? フィンをむかえにきたの?」
「うーん。まー迎えに来たっちゃあ迎えに来ただね♪ ただし、皆の下にだけどね」
かみさまはやさしくフィンにわらいかけ、さそうようにフィンへとてをのばしてきた。
フィンがそのてを、おそるおそるつかむと……かみさまはやさしく、そしてはっきりとうなづいた。
「さあ、それじゃあ帰ろう! 皆の下へ!!」
「う……うん!」
フィンがちからいっぱいにうなづいたしゅんかん、くらいなかにひかりがさしこみ……まわりをあかるくてらしだした。
そして、フィンはかみさまにてをひかれて……ひかりのおくへとすすんでいったんだー。
そのひかりのおくにすすむと、いつのまにかフィンはねころんでいたらしく、おきあがった。
○
「…………あ、あれー……? フィン、本当に……生きてる?」
ぽつりとフィンはそう呟いてから、身体を起こした。……あれ? 何だか……、変?
何がどう変なのかは説明し難いので、フィンはうんうん唸りながら周りを見たんだ。
すると、フィンが居るすぐ近くにアリスを抱くティアの姿が見えた。
「ティア? ティアだー……!」
「フィーン……? フィーンなのか?!」
「うん、フィンだよ。待ってて、すぐそっちに行くからー! うーん! うーん!! ……あれ? 飛べない??」
向こうに見えるティアの下へと、フィンは翅を広げて飛び立とうとしたけれど……何故だか重くて飛べなかった。
どうしてだろう? 疑問に思ったけど、飛べないなら歩こう。そう思いながら、フィンは立ち上がってティアたちのほうへと歩いて行った。
……あれ? 普通に歩いてただけなのに、どうして簡単にティアたちのほうへと到着出来たんだろう?? 本当だったら、50歩ぐらいは歩かないとティアたちのほうに着かないよね?
そう思っていると、ティアが目を点にして驚いた様子だった。どうしたのかな?
「フィ、フィーン……なのか?」
「どーしたのティアー? フィン、やっぱりまだ何処か変なのー?」
「い、いや! 特別変だとかそんなことはないぞ、うん! ただ、ただなぁ……」
何だかとても言い辛そうな顔をしてティアがフィンを見ている。本当、どうしたんだろう?
そう思っていると、ティアの隣でフェーンが顎を外れそうな勢いでフィンのことを見ていた。見ていたんだけど……。
「……フェーン、縮んだ??」
そう、フィンの目の前に居るフェーンは、フィンと同じ位の大きさだったはずなのに、どうしてかフィンよりも小さく見えた。
そう言うと、フェーンはプルプルと震えてギロリとフィンのことを睨みつけてきた。
「オ、オレがちいさくなったんじゃなくて……、おまえがでかくなったんだよーーーーっ!!」
「ふぇぇぇぇぇっ!? ……え、えーーーーッッ?! フィ、フィンおっきくなっちゃったの!?」
フェーンが言ったその一言で、漸くフィンは自分に起きたことに気づいたんだー。
で、でもどうしてこうなったのー?!
驚きながら、フィンは振り返ると……沈んだ表情をした、フィンと同じ妖精の子たちが5人しゃがんでいることに気づいた。
そして、その妖精たちもフィンと同じように普通の妖精よりも大きくなっていたんだー。
ど、どうしてそうなったんだろう?? アリスなら何か分かるかなー?
そう思いながら、フィンがアリスを見ると……それに気づいたティアとフェーンもアリスを見たんだ。
「……とりあえず、アリスが目覚めるまで待とうか」
「そ、そーだな」
「うん、わかったー」
そう言って、フィンはティアの近くにしゃがみ込んだんだー。
えへへ、ティアの温もりとにおいだー♪
いや、元々ティアと一緒に瘴気背負う的なことを考えてたんですよ。
世界樹戦前まではそう考えてたのに、こうなってしまいました。
手の平サイズの妖精もいいけど、子供サイズの妖精もかわいいと思うんですよね。