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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
獣の章
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VS世界樹・終

 ……あれ? 何が起きたか分からないって感じがするね?

 大丈夫大丈夫♪ 狂ったぼくもまったく解っていないみたいで、笑みを浮かべているけど心の中はかなり動揺してるんだよねー。

 ちなみに、腕が元に戻らないみたいな感じだけど……そりゃ簡単な答えだよ。だって、狂ったぼくと大本の世界樹はこの世界に顕現するための媒介……だけど、狂っちゃったなら大本はそれを切り離すに決まってるでしょ?

 だから、今の狂ったぼくは神であって神でない。倒されたらやられる存在になってるんだよね。


「ふ、ふふ……何をやったかは分からないけど、先程まで汝は我にダメージを与えることなど出来なかった。それがここまでとは……面白い、本当に面白いよ」

「面白いとか言ってるなら、早くその腕を元に戻したら良いじゃないですか? 片腕だけだと、上手く戦えないですよね?」

「いや、それには及ばない……というよりも無理なんだよ。……ああ、汝に入っていなかったな、今の我がどんな状況かを」


 そう言うと、狂ったぼくはアリスちゃんに今ぼくが説明していたことを説明したんだよね。

 アリスちゃんは静かにそれを聞いていて、すべて聞き終えると……頷いたんだよ。


「……分かりました。アナタ個人としては、どうしたいのですか?」

「我の意思か……、正直狂ってもう何が正しいのかは分からない。だから、もう楽にしてほしい……って言うのが正直なところだよ。ああ、けど我が倒されて世界樹が枯れたとしても、種は残るから浄化して埋めてくれれば良い。……あと」

「あと?」

「我の外で、魔族の手によって弄られた妖精の目たちの命が尽きようとしている。だから、急いだほうが良い。汝のことを呼んでいるようでもある」


 あ、そうだそうだ。外のほうでは、ぼくの国の子が優しい魔族の子たちと妖精の目となっている子たちを助けようとしてるんだったんだよね。

 助けようと彼女たちは必死なんだけど……、もうかなり限界みたいで見ていて辛いよ。

 その言葉にアリスちゃんは驚いた顔をしたんだけど、すぐに落ち着かせて……狂ったぼくを見つめたんだよ。


「本当に……良いのですね? 何か言い残すことは?」

「言い残すこと……か。ああ、あったな。我の身体に流れる体液、それは浄化し固めることでかなりの回復を見込める霊薬の材料となる。だから、それを使って我が子らを治してやってくれ」

「……出来るだけ、やってみます」

「出来るだけ……か、信じているよ。じゃあ……、行こうか!」


 静かに狂ったぼくがそう言うと、アリスちゃんに向かって飛び掛っていったんだよ。

 ……うん、狂っていてもぼくはぼくだね。根本は変わらないってことだよね。

 とか思っていると、狂ったぼくはアリスちゃんに向かってハイキックを放った。それを察したアリスちゃんも同じように脚を振り上げて、同じようにハイキックを放ったんだ。

 2人の脚がぶつかり合った直後、ガキンッ! っていう金属がぶつかり合うような音が響き渡ったけど……狂ったぼくの身体は木製だけど並大抵の金属よりも堅いって言う自覚はあるよ。でも、アリスちゃんから金属のような音が出るのはどうしてだろうね?

 そんな風に疑問に思ったんだけど、それよりも先に狂ったぼくの脚が地面に付いた瞬間――バキンッと音を立てて、折れたんだよ。

 折れた脚から体液が零れて、それを風で巻き上げて《異界》の中に放り込んでいるアリスちゃんのほうは、傷一つ無いようだったんだ。……うん、本当に何をやったんだよ!?


「うん、どうやって我の脚や腕を砕いたのかは分からない。けれど、あと一息だ。頑張ってくれ」

「言われなくても分かっています。ですが、アナタは動けないじゃないですか」

「動けないというか、もう動かないでトドメを刺して欲しいのだが……そう簡単にはいかないみたいだ」


 そう溜息を吐きながら狂ったぼくが言うと共に、柱に巻きついていたサイリスの蔓が狂ったぼくへと集まっていったんだ。

 集まった蔓が、砕けた腕と折れた脚に巻きつき始め……ウゾウゾと纏わりつき、最終的に狂ったぼくに蔓で作られた腕と脚が付いていたんだ。

 うん、切り離されているのに何でこうなったとツッコミたいって感じだから、言うけど……このサイリスの蔓は世界樹の中にある物で、世界樹と狂ったぼくは一心同体だから、半ば強制的に動いたみたいなんだよね。

 で、それを狂ったぼくがアリスちゃんに説明してるけど……凄く面倒臭そうな顔をしていたんだよね。


「……まあ、速く片付けてくれとお願いしたけど…………頑張ってくれ」

「しょ、正直、ここはアナタが繋ぎ止めている間にトドメをというパターンじゃないんですかー!?」

「うん、まあそうしたい。そうしたいんだけどね……頑張ってくれ。応援だけはしておくよ」


 アリスちゃんの叫びにそう返した狂ったぼくは、最後にそう言うと一気に襲い掛かったんだよ。

 もう正直面倒臭くなってきたけれど、アリスちゃんには頑張ってもらうしかないよねー……。

 そんな感じに思っていると、攻撃を避けていたアリスちゃんが深い溜息を吐いたんだ。


「…………すみません、これ以上アナタに構っていられそうにもないので……欺かせてもらいます」

「――え」


 そう言った瞬間、アリスちゃんの身体が光ったんだよね。

 で、光が消えると……何時の間にか狂ったぼくは倒れていたんだ。

 いったい何が起きたのかは分からないけれど、アリスちゃんがやったんだろうね。

 ぐらぐらと揺れる首を動かし、狂ったぼくがアリスちゃんを見て……笑ったんだ。


「何をしたのかは……わからないけど、あとは……おねがい」

「……分かりました。後は任せてください」

「じゃあ、またね……」

「はい、また会いましょう……」


 そう言って、悲しそうな顔をしながら……アリスちゃんは狂ったぼくにトドメを刺したんだ。

11月辺りからは雪がそろそろ降ると思うので、毎日更新から2日ずつの更新になるかも知れません。

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