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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
獣の章
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VSアンバーゴーレム・前編

 ちょっと彼女の戦いの間に、下の様子を語ります。

 上のほうでは、世界樹ゴーレムと彼女が接戦を繰り広げておるが……一度、少し時間を巻き戻して下の光景を見ることにしようか。

 ぬ? 面倒臭いじゃと? そう言うでない、彼女の戦いだけだと盛り上がりに欠けるじゃろ? じゃから、ロンやティアたちの戦いを見て見ないとな。

 というわけで、巻き戻すからの。


「ロン、タイガ、トール、フェニッッ! これを使ってください!!」


 …………うむ、巻き戻ったのう。

 数体のアンバーゴーレムに立ち向かおうとしていたロンたちが上方を見ると、彼女が何かを4本……地面に向けて投げ付けてきたのが見えた。

 キラリと光る何かであったが、それが徐々に変化をし始めたと思った瞬間、彼らの目の前の地面へと突き刺さったのじゃった。

 湿気を帯びた土だからか、地面からは土埃は舞い上がらず……地面に小さな窪みを造り、彼女が投げた物が彼らの目に留まったのじゃった。


「これは……師匠の槍?! いや、似せてあるだけか」

「あいつっ!? ……いや、今は使わせてもらうぜ!!」

「これ、……うん。行け、る……!」

「この杖……、思う存分使わせてもらうよ!」


 目の前に突き刺さった武器を、ロンたちは口々に何かを呟きつつも……今のこの状況で使わせてもらうことにしてそれぞれに合った武器を掴んだのじゃった。

 ロンは、ハガネが使っていた槍に似せて変化した槍を……。

 タイガは、赤と金の2つの手甲を……。

 トールは、自身の身長よりも巨大な朱色に輝く盾を……。

 フェニは、赤と金の2種類の金属らしき物が捻り合い、透明な金属球が先にはめられた杖を……。


 ……ちなみにティアに武器が与えられなかったのは、瘴気を使って自ら作り出せるようになった武器のほうが慣れていると考えた結果なのじゃろうな。


『AAAAAAAGGGGGGGGGGGGGGGGAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaa!!』

「わた、しに……まかせ、て……! <タートル、ウォール>……!!」


 直後、硬化が終えたのか意思が全身に行き渡ったのか、どちらにせよ準備を終えたアンバーゴーレムは吠えて、襲い掛かり……茶褐色の巨大な拳が彼らに向けて一斉に振り下ろされた。

 だが、振り下ろされたと同時に……小柄なトールが前に飛び出すと、巨大な盾を地面に突き刺して構えた。

 すると盾を中心に亀の甲羅のような形をした障壁が出て、アンバーゴーレムたちの拳を受け止めたのじゃった。

 拳を受け止められたアンバーゴーレムは気に喰わなかったのか、二度三度とドガドガと力強く障壁を殴りつけておったが……ヒビ一つ入ることは無かった。

 そして、一方で盾を構えたトール自身も驚いておった。


「すご、い……全然、殴られても、痛く……ない。これ、なら……! え……えぇ~~いっ!!」

『GAAAAA!?』


 ゴクリと乾いた口に唾を飲み、トールは地面に突き刺した盾を持ち上げて歩き始めた。すると、盾の上に展開された障壁も前へと動き、殴り続けるアンバーゴーレムをよろめかせ……、そこから一気に押し込んでアンバーゴーレムたちを仰向けに倒したのじゃった。

 そのトールの行った行動に、彼女を知る3人は驚きを隠せなかった。何故なら、彼女の使うスキル<タートルウォール>は彼女自身、でかい金属製の盾を使用するために地面に突き刺して、攻撃を防ぐという方法で戦うことしか出来なかった。

 それが、盾を持ち上げただけでなく……前へと押し出して、アンバーゴーレムたちに青空を見せることが出来たのだ。驚くなと言われたとしても驚くだろう。


「っ! 呆けてる場合じゃねぇ!! 喰らいやがれ! <ファングブレイク>!!」

「GOO!? GGGGGOOOOOOOOOOOOOAAAAAAAAAAAAAAA!!!」


 呆気に取られていた3人だったが、タイガの声ですぐにハッとし行動に移った。

 ロンとフェニへとそう言ったタイガは、空高く跳躍し……グルグルと自身を回転させながら、地面へと落ちて行き……仰向けに倒れたアンバーゴーレムの1体を叩きつけるようにして両腕で胸部を殴りつけた。

 固まった樹液は、メキャリと音を立て……バキバキバキと砕けていった。そして、砕けて露出された黒い卵を開いた手で毟り取ると一気に後ろに下がっていった。

 そこからもう一撃を喰らわせようと、拳を構えたが……アンバーゴーレムも学習したのか、一時的に樹液を軟らかくして背後へと下がっていった。


「ちッ! 無理だったか……、けどトールが言ってるように凄いなこいつ……」

「慢心をするな、タイガ。お前たちの攻撃を見て、この武器は威力が強いというのは分かった。けれど、自分たちにはこれは完全に扱い切れないと言うのも同時に分かった」

「わ、分かってるって! 過ぎた力で身を滅ぼすなって言いたいんだろ!?」

「そうだ。だが、今は……この力を使わせて貰おう」


 牙をむき出しに笑うタイガをロンが嗜め、言うと嫌そうな顔をしつつも……その言葉を受け入れていた。

 そして、言うだけ言うと彼も戦うために、槍を構えてアンバーゴーレムへと駆け出した。

 近づいてくるロンに気づき、2体のアンバーゴーレムたちは頷き合い、協力するかのようにロンに向かって駆け出して行ったのじゃった。

 それを見たタイガが後ろから、「こいつら、ずりぃ!」と叫んでいるがそれは無視して、ロンは迫り来る2体のアンバーゴーレムの足元を薙ぎ払った。


「<ウインド・スラッシュ>!」


 槍を振るい、ビュオッと風を切る音が聞こえた瞬間には槍は通り過ぎており……足で地面を踏み締めてから、力いっぱいロンを殴りつけようとしたアンバーゴーレムたちであったが……、ズズッと身体が揺れ……気づくと地面に倒れこんでいることに気づいた。

 その原因が足を斬られてしまっていることに気づいたときには、アンバーゴーレムたちは後の祭りであった。


「胸のそれを取り返すように頼まれたから、返させて貰うぞ……<十連突き>!!」


 片方のアンバーゴーレムに狙いを定め……ロンは素早く槍を突き出し、胸に填められた黒い卵の周囲をくり貫くようにしてアンバーゴーレムの胸を穿いたのだった。

 胸が穿たれ、滑るようにして黒い卵が地面に落ちると……アンバーゴーレムはうめき声を上げながら、目の前で元の樹液へと姿を変えていった。……良く見ると、タイガが倒したアンバーゴーレムも同じように樹液になっているようであった。


「なるほど……、攻撃力は半端なく上がってるみたいだけど、魔法のほうはどうなのよ? ロン、どいて! ウチの魔力を糧に、対象を燃やしたまえ――《火炎》!」


 詠唱を終え、杖をかざすと杖の先に付いた金属球が赤い光を放ち、激しい炎がアンバーゴーレムを包み込み、燃やしたのじゃった。

 それを見ていたフェニは一瞬呆気に取られたが、すぐにハッとして魔法のキャンセルを行った。

 すると、炎はすぐに消え、半ば融けかけたアンバーゴーレムがおった。

 そんな目の前の光景と、握り締めた杖を見て……フェニはどう言えば良いのか分からず、引きつった笑みを浮かべるのじゃった。

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