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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
獣の章
204/496

VS世界樹・始まり

今回は短いです。

 そう、確かに《聖氷槍(せいひょうそう)》は世界樹に突き刺さった……。

 じゃが……、それは……。


「…………ク、クヒッ! クヒッ! クヒヒヒヒッ!! ざ、残念だったなぁ~! あと少しだったのによぉ~! けど、これでテメェらの最後だっ!!」


 《聖氷槍》が突き刺さった世界樹の向こうから、アークの笑い声が響いた。

 アークとの間を巨大な樹に阻まれ、どんな顔をしているのかは分からないが……正直、今はそれ所では無さそうになっていたのじゃった。

 何故なら、《聖氷槍》が突き刺さったのは……アークがめり込んだ世界樹の幹とは別の幹……いや、元々は一本の世界樹だったが、今は変化し終えて彼女とアークを阻む幹は腕であり……彼女たちを見下ろすようにして世界樹が変化した黒色の巨人が居た。

 元々の世界樹よりも少しサイズが縮んでおるようじゃが……、ホンニャラッカのデパートよりもでかいようじゃった。

 マ、マジかよ……。というタイガの声が聞こえて漸く彼女もハッとして、現状を飲み込めたのじゃが……その存在はあまりにも巨大じゃった。

 その存在に萎縮する彼女たちに、形勢逆転を感じたアークの笑い声が周囲に響き渡った。


「クヒャヒャヒャッ!! これでテメェらは終わりだぁ~! まずはテメェだ売女! おい、足元の虫を叩き潰せっ!!」


 アークの命令を聞いた世界樹ゴーレム(たった今命名)は、足元に居る虫を叩き潰すために腕となった太い枝を大きく振り上げ――、一気に振り下ろした!

 とっさのことで彼女は驚いたが、すぐに防御を行おうとしたのじゃ。じゃが――。


「……え?」

「がぼぁぁぁっ!!? テ、テメェ!? 何しやがる! 足元の虫だって言ってるだろ、足元の!! って、もげあぁぁぁぁっ!?」


 振り下ろされた腕は勝った気でいたアークを払い、いったい何が起きたのかと理解出来ず……世界樹ゴーレムに向けてアークは怒鳴りつけ、もう一度命令を下した。

 結果、もう一度同じようにアークは力いっぱい払い飛ばされた。

 いったいどういうことかと彼女も混乱したが……すぐに、世界樹ゴーレムの行動の意味が理解出来たのじゃった。


「あ……、足元の虫……なるほど」


 ん? 分からぬか? ならば教えてやろう。彼女も世界樹ゴーレムの足元に居るが……、アークも世界樹ゴーレムの足元におった。そして、見た目がどう見ても虫なアークのほうを世界樹ゴーレムは攻撃したんじゃよ。

 それに気づいていないアークは4度ほど叩きつけられ、ボロボロになってしまい。そこで漸く、自分が言った命令がこうなることを理解したのじゃった。

 緑色の血をダラダラと身体中から流しつつ、アークは血塗れの瞳で彼女を睨みつけた。


「殺す! 殺す!! たとえ、この場を生き延びたとしても、テメェの大事な物すべて壊して、絶望させて心をズタズタに引き裂いてから、ジワジワと殺してやる!! アァ、楽しみだ! テメェの絶望する顔がスゲェ楽しみだよっ!!」

「何度も言いますが、アナタのようなゲス野郎と……逃がすと思いますか?」

「思わねぇなぁ~……けど、俺を気にかける余裕は今から無くなるんだからよぉ~~っ!! この国全てを……ぶち壊せ!! 草木残らずすべてなぁっ!!」

『GGGGGGGGGGGGGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA――――!!!』


 逃がす気はないとすぐさま魔法を放てるようにしていた彼女に対し、アークの命令を受け取った世界樹ゴーレムは――森全体を揺るがすほどの雄叫びを上げ、手を広げて腰をグルリと振り回した。

 腕による直接の衝撃と風圧が周囲の木々を薙ぎ倒し、一同はしゃがみ込んで攻撃を回避しておった。

 そして、その隙を見逃すこと無く……アークはフラフラと飛び上がったんじゃ。


「クヒャヒャッ!! これでこの国はもう終わりだぁ~! くひゃ! クヒャヒャ! クヒャヒャヒャヒャヒャ~~!!」

「くっ!? 逃がしま――きゃ!」

「残念だったなぁ~! どうせ、生き残るんだろ? だったら、今度は絶望を感じさせてやるよ! クヒャヒャヒャッ!!」


 飛び上がったアークを魔法で撃ち落そうとした彼女じゃったが、もう一度世界樹ゴーレムが身体を振り回し……その衝撃に耐えれずに、彼女は膝を付いてしまったのじゃった。

 そして、アークは笑い声を上げながら空中で《転移》を使ったのじゃろう……、闇に沈むようにして消えていきおった。

 それでも何とかするために、彼女は即座にチェシャキャットで魔法を乱そうとしたのじゃが……アークの姿は掻き消えてしまっていた。

 消えてしまったアークが居た場所を睨みつつ、彼女は小さく舌打ちをしたが、すぐに世界樹ゴーレムを見た。

 まったく理性が無い……顔のような空洞の目、口のような洞からは樹液のような物を垂れるのを見ながら、彼女は世界樹ゴーレムの前に立つのじゃった。

 そんな彼女をじっと見つめていたティアたちに彼女は告げた。


「ティア! これは、アタシが相手をします……ですから、ティアたちはフィーンを……まだ無事な妖精たちの保護をお願いします!!」

「ああ、分かった……! アリス、頑張ってくれっ!!」

「頑張りますっ!!」


 ティアにそう叫び、彼女はワンダーランドを構えて、世界樹ゴーレムへと駆け出したのじゃった。

うーん、頭が混乱し始めてるかな……。

頑張ろう、頑張ろう。

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