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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
獣の章
200/496

転写

 そんなこんなで、フェニと彼女が主体で魔方陣の話が開始されようとしていたが……止める者が居ったのじゃった。


「オマエら! いーかげん、フィンをたすけろよー!!」

「あ、フェーン……す、すみません……かなり脱線しかけていましたね」

「あら、ごめんなさい。妖精さん。ウチはこういうことには目がないんよ。許してね」

「~~っ! もーいい! オレひとりでも、フィンをたすけてみせる! 待ってろフィ――…………」


 謝る彼女とフェニじゃったが、我慢の限界が短いフェーンは言うだけ言うと、即座に結界から飛び出して世界樹に向けて飛び立とうとしたのじゃが……、フラフラと地面に落ちて行きおった。

 どうしたのかと首を傾げながら、フェーンを見ていると……突然、地面を掘り始めたんじゃ。

 それを見た一同は驚いた顔をして、彼女はフェーンに手を伸ばしかけたのじゃが……手が結界から出る前に止まりおった。

 何故止まったかというと……、地面を掘り始めていたフェーンがもぞもぞと身体を地面の中に突っ込み始めたからじゃった。そして、それを見た瞬間、彼女はフェーンが言ってた彼の常識が狂った世界を思い出しておったんじゃ。


「何でしょうか……こう、フェーンを見ていると……何の対処もせずに飛び出したら、一貫の終わりになりそうな気配は……」

「え、ええ……正直、ウチもそう思ったよ……。絶対にこれの外に出たら、またおかしくなるみたいな感じで……」

「……下手すると、オレも明るい農村ライフをしそうで怖いぜ…………」

「それを言うなら、自分も……槍一本で頑張っていたはずなのに、飛び道具を平然と使いそうだな……」

「わた、しも……ジュース、いっぱい飲み、そう……あ、別にいい、かも……?」


 若干一名が幸せそうなことを口にしておるが、どっちにしろ何の対策も無しに魔方陣から飛び出したら、悲惨な目に合うこと間違いなしじゃろうな……。

 とりあえず、フェーンは彼女が作り出した蜘蛛糸を身体に引っ掛け……一本釣りの要領で一気に魔方陣の中に引っ張ると、先程のトンチキ行動が嘘のように、ボーっとしておったのじゃった。

 まあ、しばらくすると元通りに戻ったらしく、パタパタと宙を飛んでホバリングをしておったが……よっぽど怖かったんじゃろうな、疲れたときは地面に下りるよりも彼女の肩に引っ掴んでおった。


「か、かんちがいするなよ! オレは、オマエがへんにならないかをみはってるだけなんだからなー!」

「はいはい、判っています。判っています。それで……どうしましょうか?」

「わかってないだろー! ちゃんとオレのはなしをきけー!」

「妖精さん、今大事な話をしている最中だから、もう少し静かにしてくれない? とりあえず……その絵を身体か服に付けた状態で出て何とも無いか試すと言うのはどう?」

「その方法ですか……、まあやってみる価値はありそうですよね。ですが、誰がしますか?」


 フェニと彼女の話し合いで、そんな結論に出始めているらしく……実験だ、もとい勇気ある挑戦者を選び始めたのじゃった。

 とりあえず、一番最初にはギャーギャーと五月蝿く喚くフェーンにしてみようかと思いつつ、彼を見ると……身体をガクガク震わせながら、ブンブンと首を降り始めた。よっぽど怖かったんじゃろうな……。

 トールを見るが……、女の子にそんなことをさせるのは酷いと思ったので、心で却下しておったようじゃな。

 タイガも……やめておいたほうが良いと思ったんじゃろう。本人は何だか乗り気だったようじゃが……あえて無視じゃ。

 ティアは、既に抗体的なものが出来ているから大丈夫じゃろうな。自己犠牲カモンみたいな感じのポーズを取っておったが無視じゃ無視!


「……自分が行こう。お前たちよりも、自分のほうがまだ良いだろう」

「ロ、ロンッ!? 何を言うんだよ、オレだって出来るって言って――」

「いや、この中で自分が一番歳が上だろうし、年長者としての義務というやつだ。……アリス、頼めるか?」

「え、ええ……でも……」


 ロンの言ったことに戸惑いつつ、彼女は他の3人を見た。タイガは不満そうに彼女を睨みつけており、トールは心配そうにロンを見つめ、ティアは「彼が無理ならあたしが」と呟いておった。

 何度も言うが、ティアのことは無視するとして……暫し目を閉じてから、彼女は覚悟を決めたようじゃった。


「分かりました。とりあえず……手の甲に描いてみますね。それと、すぐにこちらに引き戻せるように腹に蔦も絡めておきます」

「……かなり厳重だが、分かった」

「それじゃあ、行きますよ。えーーいっ!!」


 周りがゴクリと息を呑む中、彼女は気合を入れつつ……ロンの手に『聖』の属性を込めた蜘蛛糸を使い、先程地面に描いた見られないようにするおまじないを描き上げた。

 描かれた魔方陣は手の甲の上に乗っていたが……一気に光が鈍くなっていったのじゃった。

 そして、ロンがクッと呻いたのを最後に、光は消え……魔方陣を描いていた蜘蛛糸は地面に落ちていきおった。


「これは失敗……でしょうか?」

「ロン、どうなのよ? 何か変わったことは無い?」

「特に変わったことはな……いや、あった。これを、見てくれないか?」

「これって……おまじない、ですか? けど、肌に直接付けられていますね……?」


 首を傾げながら彼女は、ロンの手の甲を見た。するとそこには、彼女が描いた魔方陣と同じものが焼き付いておった。

 いったいどういうことだろうと首を傾げた彼女じゃったが、ロンはすたすたと気にせずに魔方陣の外へと歩いていった。


「――って、何すたすたと出ようとしているんですかっ!?」

「大丈夫だ、問題ない」

「何そこで失敗フラグ立ててるんですかっ!? 大丈夫か事態わかっていないんですからっ!!」

「まあ、そうなんだが……こうなっているのに効果があるかを試してみるべきだと思うんだが?」

「そ、そうですけど……」

「それなら問題ないだろう、変だと思ったら引っ張ってくれ」


 モゴモゴしている彼女に、ロンはそう言うとそのまま魔方陣の外へと出て行った。

 度胸のあり過ぎるロンに彼女は驚きの声をあげたが、ロンは気にせずに魔方陣の外で少し立ち止まり……フラッと身体をふらつかせおった。

 そんなロンを見て、急いで腹に巻いた蔦を引っ張り……魔方陣の中へと入れたのじゃった。


「大丈夫ですか? ふらついていましたが……」

「ああ、大丈夫だ……。多少クラッと来たが、特に問題は無いようだ。これはそのおまじないが身体に浸透したということだろうか……?」

「多分そう……ね? まあ、確証は出来ないけど……多分、これで大丈夫なはずよ。だから、お願い出来る? ウチは大丈夫だけど、みんなは?」

「あー……じゃあ、オレもしてもらう」

「わたし、も……おねが、い……」

「あたしにもお願い出来ないかアリス」

「ふんっ、べつにいーけど、どーしてもっていうならやれよ!」

「……無理はしないでくださいね。というか、多いですね…………」


 心配そうに彼らに言ってから、苦笑しつつ……彼女は彼らの手の甲におまじないの魔方陣を描いていったのじゃった。

魔方陣を手の甲につけるイメージは、刺青シールです。

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