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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
人の章
2/496

目覚めたら異世界でしかも……。

更新は不定期です。

 さ、そろそろ眠る時間だよ……ああ、わかったわかった。

 続きを話すからそんなに怒らないで、あんたの可愛い顔が台無しよ。



 彼はベッドから落ちたのだと気づき、身体を起こしたけど物凄い違和感を感じたんだよ。

 だって、自分が寝ていた部屋が夜眠る前とまるっきり変わっていたのだからね。

 現代建築の築十年のマンションに一室じゃなくて、大分昔の外国の建物のような部屋だったからね。

 マンションって何か? んー、いわゆる長屋が縦に長くなってるって感じね。

 で、頭の中でハテナを浮かべながら、彼は起き上がるとすぐ近くの窓から外を眺めてみた。


 すごく、ファンタジー的な街並みです……。


 一瞬呆けてしまった彼だったけど、よく漫画とか小説……娯楽の本を読んでたから、もしかすると異世界に迷い込んでしまったのかと驚き半分、期待半分に胸を弾ませた。

 まあ、心弾ませながら部屋から飛び出す前に部屋の中をいろいろ見て回るべきだって思ったのか、彼は部屋の中をうろちょろと調べ始めたんだけど……また新しい驚きが彼を襲った。

 部屋の隅に置かれた姿見にひとりの可憐な少女が、ローブのような寝巻きに身を包んで立っていたんだ。

 金色に輝くサラサラとした髪、エメラルドのように綺麗な碧眼、陽にあまり焼けていないのか真っ白い白磁のように白い肌。

 ちなみに胸は発展途上だったのか、小さな起伏しかない……14歳くらいの少女。

 その可憐な少女の容姿に胸をときめかせたけど、即座に彼は愕然とした。


「オレ、おんなのこになってるやんけ……」


 膝を突いて、彼はその場で落込んだんだけど理解したね……。

 どうやらついさっき見ていた夢は、異世界に転移するときのキャラメイク的なものだったのだって……。

 キャラメイクって何か?

 んー……、あんたがあんたじゃない誰かになる。って感じかしらね……って、大丈夫大丈夫、普通はそんなの起きないから。

 そして、恐る恐る彼は『ステータス』と呟くと目の前にパネルが表示され、見慣れたものが書かれていたんだ。


 ~~~~~~~~~~~~


 名前:アリス

 職業:ゆうしゃ

 性別:おんな

 年齢:14歳


 ~~~~~~~~~~~~


 要するに、彼は彼女となってこの世界へとやって来てしまったようだったのよ。

 少しばかり落込んでいると、そんな彼――んー、もう彼女で良いや。の部屋へと誰かが入ってきた。

 アリスを年取らせて、恰幅の良さそうにしたおばちゃんだったんだけど、どう考えても彼女の母親だったの。


「アリス、起きたのなら早く支度して城に行ってきなさい。今日はあんたの始まりの日なんだからね」

「えっと……始まりの日って、何だっけ?」

「あんた、まだ寝惚けてるのかい?」


 呆れ返る母親を見ながら、彼女はさっぱりだったがすぐに説明された。

 始まりの日、それは『ゆうしゃ(勇者)』として生まれた者に義務付けられた役割で、王に謁見してから旅に出るというものだった。

 簡単に言うと『勇者として生まれたんだから今まで国が補助してたんだから、とっとと魔王倒して来い』ということであったの。

 彼女の部屋が広かったり、普通よりも良い暮らししてるように思えたのは国が補助していたからだったのよ。

 いきなりだったけど、やっぱりファンタジーであるのだから、そうなのだろう。

 そう理解すると、彼女は頷き着替え始めるために寝巻きを脱ぎ捨てたの。

 この世界にも下着の概念っていうのはあったらしく、寝巻きの下には14歳にしては子供らしい猫パンツだったわ。

 それから、女性用の冒険者の服と皮のブーツを履いた彼女は、ファンタジーっぽさを増した自分に感心しつつ部屋から出て下の居間のような場所へと向かったわ。


「それじゃあ、行ってきます。母さん」

「頑張ってお勤めを果たしてくるんだよ」

「ぜ、善処します……」


 苦笑しつつ、彼女が外へと出ると欧州の古い町並みを連想させる石畳が所狭しと敷き詰められ、その上を人や馬車が移動していた。

 その始まりの第一歩に興奮を覚えながら、彼女は外へと踏み出して城へと歩き始めた。

 そして、しばらく歩いてから彼女は気づいたんだ、重大なことに。


「あれ? 城って何処だ? あ、あれー??」


 ファンタジー世界(異世界)に降り立って、一時間ほどして彼女は迷子を経験した。

 ちゃんと場所を知らずに街の外に出るべきじゃないわね。

ところがどっこい、夢じゃなかった。

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