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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
獣の章
193/496

それぞれのいし

 ――――――――


 名称:魔込石(まごめいし)


 説明:

  魔族の国にある鉱脈で採掘可能な希少な石。

  特性として、魔法を込めておくことが可能なため、その名前が付けられた。

  一回だけだが、どんな魔法でも封入が可能。

  ただし込められた魔法の強さと石の強度によって、使用回数は決まる。


 ※既に魔法が入れられているため、別の魔法を入れることは不可能となっている。

 ※発動形態は魔法を込めた者に一存される。


 封入魔法:『火』属性魔法《火柱》 1/1


 発動形態:時限式

 残り時間:8.00.21


 ――――――――


 それが、彼女が《鑑定・極》で石を見た結果知り得た情報じゃった。

 厄介であると思うと同時に……、便利な道具だと彼女は心から思ったようじゃ。

 ん? 何でかじゃと? つまりじゃな、込められた魔法が《火柱》ではなく《種火》じゃったら、それを発動しただけで《種火》が発動されるんじゃ。要するに、火を着ける際にこれを使えば火打石で火をつけるという手間が省かれるようになると言うわけじゃ。

 そう思いながら、彼女は最初は断ち切る手筈で居るつもりじゃったが、考え直すこととなったのじゃった。


「アリス、これは……」

「ティア……、触らないようにお願いします。これは一種の爆弾のような物なので」

「ッ!? あ、ああ……分かった」


 触れようとしたティアに彼女は一声掛けると、すぐにティアは手を引っ込めた上にスススッと後ろに下がりおった。

 見た目は変わってもヘタレはまだ残っておるようじゃな。

 ちなみに彼女はと言うと……悩みながら、目の前にある魔込石をどうするべきかと悩んでおった。

 正直な話、簡単に斬り捨ててハイ終わりと思っていたら、とんでもない物が出てきたのじゃから当たり前じゃな。


「絶対に、普通に斬ったら暴発しますよね……」


 そう思いながら、彼女は何も考えずに叩き切らずに《鑑定・極》を使った自分自身を褒めることにしたと同時に、叩き切った瞬間にカッと光って大爆発を起こしていた未来を考えておった。

 ほ、本当にそうならなくて良かったのう……。

 じゃが、どう対処するべきかを考えながら、彼女は真剣に目の前の魔込石を見ておった。


「……とりあえず、どうしましょうか? 下手に触ると爆発しそうなのですが…………」

「そ、そうなのか……? だったら、カーシの外に出して、爆発させるとかはどうなんだ?」

「それも良いと思いますが……なんだか本当に触った時点で嫌な予感がするんですよね……」

「いや、そんな……、いくらなんでもそんなことは……」

「仕掛けていった人物が、あなたをこんな風にしたゲスですよ?」

「……そう言われると、ありうるとしか言いようが無いな……」


 楽観視していたティアじゃったが、彼女の言葉で即座に顔をしかませ……肯定した。

 とりあえず、もう彼女たちの中ではアーク=ゲスで信用しないほうがいいになっておるようじゃな。


「ですが、どうしましょうか……、もういっそのこと凍らせてみますか……」

「でも、凍らせたらどうなるかが……。あ、そういえばワンダーランドが出て来ていた物の中に入れるというのは出来ないのか?」

「《異界》ですか? まあ……やるだけやってみます。だけど、唯一の救いは……あのゲスが覗き見をしていないことですね」


 そう言うと彼女はやる気を出すように、肩を動かし魔込石に近づいたのじゃった。

 ちなみに覗き見自体は最初はしていたのかも知れぬが、ティアを戻す際に行った『聖』の光で消されてしまったのかも知れぬな。

 浮いている魔込石の前に立つと彼女は、両手を魔込石を包むようにして構えると……魔力を練り上げ、『水』の属性を与えて両手から解き放った。

 瞬間、彼女の周囲が冷え込み、魔込石の表面に霜が走ったのじゃった。


「凍りはしましたが……、このまま《異界》に放り込んでおきましょう」


 そう呟いて彼女は素早く凍り付いた魔込石を《異界》の中へと放り込んだ。

 《異界》の黒い穴が閉じるのを確認し、彼女はティアへと振り返り……安全を伝えることにしたのじゃった。


「ティア、もう大丈夫ですよ」

「そ……そうか……。カーシの街は安心……ということで良いんだな?」

「はい、ですがその前に……周りのオークやゴブリンの成れの果ても何とかしないといけませんけど、目の前の危機は過ぎ去りました」

「そうか! だったら、一度下まで下りてそれらを倒してからアルトたちに無事を知らせよう」


 そうティアに言うと、彼女は笑顔を作り……下に下りる気満々の様子であった。

 そんな彼女(ティア)のあとに付いて、彼女も歩いていたが……食堂辺りを歩いていた辺りから、感じていた違和感を……ティアへと問いかけることにしたのじゃった。


「……ティア、あなたは……カーシの安全を確保したら、アルトたちと会うのですか?」

「…………ははっ、アリスは鋭いのか鈍いのか分からないな……。けど、キミの思っている通り、あたしはカーシの街を助けたら、キミと共にフィーンを助けに行くよ。そして、……このままこの街には戻る気はないよ」

「そんな見た目だから……ですか?」

「ああ、こんな見た目になってしまったから、あたしはもうアルトと会うことなんて出来やしない。だから、あたしはそのまま何処かに行くよ」


 そう言いながら、ティアは食堂から飛び出した道具の中にあったテーブルクロスを掴むと、少しでもその姿を隠したいのか身体をそれで隠したのじゃった。

 彼女にはこの姿を見られても大丈夫と言うことなのじゃろうが、昔からの付き合いであるアルトにこの姿を見られたくはないということじゃろうな……。

 そんなティアを彼女は見ており、その視線に気づいたティアはゆっくりと首を振った。


「アリス、そんな風に思わないでくれ。キミが何とかしてくれなかったら、あたしは狂い果てて……下手をすればアルトたちを殺してたかも知れなかったんだ。だから、キミには感謝している」

「ですが……いえ、ティアが言いたいのなら、それでも構いません……」

「ありがとう。さあ、アリス……カーシの平和を取り戻して、フィーンを助けに行こうじゃないか!」


 元気良くティアが言って、飛び出し……それを追うように彼女は家から出るのじゃった。

 そして、一々階段を使って下りるのも面倒なので、一気に下りるためにティアを抱き締め……共に吹き抜けを一気に落ちていったんじゃ。

 ああ、途中途中で減速と衝撃吸収するために、蜘蛛糸を振袖から飛ばしていったんじゃよ。

 地面に降り立つと、濃い瘴気が溜まっており……その中を、ドロドロに融けたオークやゴブリンだったものが歩いておった。


「一気に殲滅します。それと……この場の浄化もっ!」

「だったら、あたしも貢献しないといけないね。見ていてくれ、アリス……あたしの力を!」


 彼女が大扇型のワンダーランドを構え、ティアは黒い細剣と白い細剣を掌から出すと構えてそれらへと向かっていったのじゃった。

一度頭を空っぽにしてみたい。

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