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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
人の章
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冒険者の噂

 それで、そのあと……ってもう眠そうね。

 まだ聞きたいって? んー、じゃあもう少し話してから眠ろうか。ね?

 うん、じゃあ約束ね。指きりげんまん……それじゃあ、話すわね。

 それから数日間、彼女は冒険者ギルドの2階でお世話になることになったんだけど、どうやら2階はお金が無い駆け出し冒険者たち用の宿泊もしていたみたいなの。

 そこで彼女は慌しい中で分かれた冒険者の青年と再会したわ。ちなみにそのときにようやく、その青年の名前がフォードと彼女は知ったわ。

 フォードの冒険者としての腕は、実力はあるけどお調子者のために最後の最後でヘマを良くするので、駆け出しから抜け切れていないというのがギルドマスターの見解だったわ。

 ……彼女? 彼女はまあ…………ギルドで寝泊りするようになってからというもの、グータラして日中は良く眠るような人物だったわ。

 偶にホールのほうに食事を食べに降りてくると、冒険者たちは素材はいいのにまったく手入れをしないという意味の残念そうな視線やら、ゆうしゃのくせに日中怠けて何をしてるんだという侮蔑の視線を向けていたわ。そんな視線に対して彼女はまったく気にしなかったけどね。

 フォードもハガネが攻め込んできたときに跳んだのを見たのだから、彼女のことを怪しんでいたけど、ぐうたらな彼女を見ていると気のせいだったと考えるようになっていたわ。


「って、なんで何時も俺の隣で寝てるんだよ!?」

「んー……ふぁぁあ…………いやん?」

「俺のほうがいやんだよっ!」

「あー、ごめんごめん。寝惚けてて部屋を間違えたんだね。失敗失敗、今度は気をつけるよ」

「そう言ってまた明日も潜りこんで来るんじゃねーぞ! いい加減、俺が男だって自覚しろよ!!」

「あはは、してるしてる。……ふぁあ、それじゃあオレは部屋に戻ってもう一眠りするよ……おやすみ~」


 顔を赤くするフォードをからかうようにして彼女は部屋から出ると、自室に入ってすぐにベッドに潜り込むと夢の世界へと旅立って行ったわ。

 ちなみにベッドはふかふかしていないしゴツゴツしてるけど、ベッドがあるだけマシだと思う世界なので十分と思ったの。ベッドってゴツゴツしてるものじゃないかって? んー、王様とか貴族とかはふっかふかのベッドに寝てるに違いないわ。

 そんな彼女が寝ているころ、ホールではある噂が流れ始めていたわ。


「なあ、知ってるか? 最近、ここが運営している修練場のほうから何かを打ち付ける音が聞こえるらしいぜ」

「ああ、おれも聞いたことがある。何でも、金属音がしたと思ったら、雄叫びが聞こえたらしいぜ。ウオオオォって」

「こっちは物凄く明るい光が修練場からしたって聞いたぞ?」

「そういえば聞いたか? 近所の鍛冶屋の話」

「あの腕はいいけど、道具が粗末過ぎて良い出来にならない鍛冶屋か?」

「そうそこ。なんでも、マスターが何処かで手に入れたハンマーと金床を寄付したらしいんだけどよ。凄いことになってるらしいぜ」

「凄いことって言うと……ついに大失敗か?」

「ちげえちげえ。その逆だよ逆、素材が何かは分からないけど、それらが凄すぎて鍛冶屋の腕が十全に発揮できてるらしいぜ」


 と、そんな感じの話がホールを飛び交い、それを聞きながらフォードは食事を取っていた。けど、そろそろお金も少なくなって来ているから依頼を受けないと行けないとも考えていたみたいよ。

 だけど、彼の持っていた剣はアリスが持ち去った上に、無くしたと言われたので依頼を受けようにも丸腰は厳しかったみたい。

 そんなモヤモヤとした思いを抱えながら、彼はホールから聞こえる喧騒を聞きながらベッドで横になっていたわ。それから数時間経って、営業時間が終了して静かになり始めたころ、隣の部屋から物音が聞こえたの。

 こんな時間に隣の部屋の住人(アリス)が出るなんてどうしたのだろうか。そう思いながら、フォードは扉を少し開けてこっそりと廊下を覗いたわ。

 するとそこには黒尽くめの服装に身を包んだアリスが1階へと降りるのが見えたの。彼は後をつけようか悩んだけど、やめておくべきだと考えて、気になりつつも眠ることを選んだみたい。


 翌日、またもフォードの隣でアリスはぐっすりと眠っていたんだけど何時もと違ったの。

 何故なら、彼女は1本の()を抱くようにしていたの……って、あらら、もう限界みたいね。

 彼女は寝てるから、あんたも寝ないとね。さ、灯りを消すわよ。大丈夫、あんたが眠るまで側に居るわよ。

 うん、それじゃあ……おやすみなさい。

次回、舞台裏。

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