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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
獣の章
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合流

 疑惑の視線が一斉に彼女に突き刺さり、とりあえず言うだけ言っておくかなノリで彼女はそれを口にしようとした瞬間。


「「アリス様ー、何処に居ますかーっ?! 居たら返事をしてくださーい」」

「あ。アンたちですか……あ、そういえば、何処かに行くって連絡は…………してませんでしたね」

「「アリス様ー、何処ですかー!? 生きてたら返事をしてくださーい!!」」


 洞の外から聞こえるアンたちの声に彼女は誰にも言わずにここに来たことを思い出し、冷静になってからこちらを見る4人を見返したんじゃ。

 すると、顔を向けられた4人はビクッとし……助けてはくれたが、何者か分かっていない上に、もしかしたら元四天王を倒した相手かも知れないと考えたようで、微妙に警戒をし始めおった。

 ……何というか、4匹の野良猫を餌付けして、頭を撫でようとした瞬間に一斉にビクッとされたような気分じゃな。猫ではないが、事実そうじゃよな……。


「……アタシは彼女たちと合流しないといけませんが……あなたがたはどうしますか?」

「…………出来れば、自分たちも一緒に行こう。そのほうがあなたにも良いだろう?」


 そうロンは言うが、彼を含め……4人は彼女から視線を外さない。

 そして、ロンが言うように、彼らが居たらヒノッキの街がどうなったかと言うのをアンたちに説明することが出来る。

 そんなことを考えつつ、彼女は彼らに尋ねることにしたのじゃ。


「もし仮に、アタシが元四天王を倒したゆうしゃだとして、あなたがたはどうしたいのですか? 仇討ちをするのですか?」

「……いや。仮にあなたがゆうしゃで、師匠の仇を取るかと言われたら……それはしない。それをしたら、命を懸けて戦った師匠たちの死を穢すことになるからな。お前たちもそうだろう?」

「父上は、色んな物を破壊し続けた。だから、死ぬときは死んだときだと言っていた」

「伯父様も、『死とは味わってこそ分かる知識である!』って言ってたわね……」

「おじー、ちゃ……ん。い、つも……、老いた、から……死ん、でも……かまわ、ないって……言って、た」


 彼らはそう呟いて、在りし日の記憶を思い出しているようじゃった。ちなみにトールは祖父を思い出したらしく、瞳が潤んでおった。

 そんな4人を見て、彼女は目を閉じ……しばらく考え、決意した。

 彼女の一挙手一動を見逃さないとすべく、彼らはジッと見ている中……彼女は口を開いた。


「ハガネ、ティーガ、クロウ……彼らとは本気の勝負でした。そして、ウーツには……本当に申し訳ないことをしました。気づいたのは冒険者ギルドでだったので…………」

「……つまり、あなたが本人だと認めると言うことか?」

「はい。ですが、現在の姿は詳しくは聞かないでください」

「分かった。だが、教えて欲しい。師匠たちの死はモンスターから聞いただけだったから、どのような死に様だったのかは聞いていない。……師匠たちは全力だったのだな?」

「何が何でも自分を生かしておくわけには行かないと、鬼気迫っていました」


 ロンにそう言うと、そうかと呟き……師匠への冥福を祈っているようじゃった。

 そして、タイガたちを見ると……今にも飛び掛りそうであるが、ロンに言われたことを思い出しているからか……動かずに居た。ただし、様々な感情を瞳に宿しておったがな。

 怒り、憎しみ、悲しみ、そんな負の感情と同時に、タイガからは戦ってみたいと言う感情が、フェニからは知識を見たいと言う感情が、トールからは困惑の感情が感じられた。

 そんな彼らを見て、彼女はふと思い出したことがあったので、この際に聞いてみるとにした。


「あの、ひとつ聞きたいのですが……。ティーガとクロウは、魔王から貰った力だと言って使ってたのですが……黒くドロドロとした姿に覚えはありますか?」

「黒いドロドロだと?」

「魔王様から貰った……?」

「はい、ティーガとは命を懸けたやり取りで、傷付きながらもアタシが勝利しました。けれど、死んだはずのティーガが甦り、そのドロドロと混ざり合って……スライムみたいになっていたんです。最後には破壊しか頭にありませんでした」


 その結果、殺されたのだが……そこは言わなかったのじゃ。そして、それを聞いていた4人は信じられないと言った顔をしておった。

 父親の話をされていたタイガでさえ、初めは父の最後に鼻をグスっといっておったが……そのあとの言葉に耳を疑っているようじゃった。

 それもそうじゃろうな。何せ、父親がスライムのようになってしまったと言われたら疑うのも無理はないじゃろう。

 そして、伯父もそんな風になっていたと考えて、フェニも複雑そうな顔をしておった。


「……あ」


 そんなとき、何か思い当たったように、トールが小さく声を上げ……彼らの視線が向かい。顔を赤くしてしまっていた。

 けれど、俯くことで見られていることを逸らし始めたようで、彼女は続きを話し始めた。


「あの、ね。おじー……ちゃ、ん。前に、ぃって、たの……。魔王、様が……おじー、ちゃんたち、に……強くな、れる……飲み物、勧めてた……って」

「飲み物? ……ああ、確か師匠は怒りながら『魔王様は我らが強くないと仰られるのか! 強さなど、自らを鍛え上げれば良いのだ!!』と言ってたときがあったが。もしかしてそれか?」

「う、ん……おじー、ちゃんも……飲まな、かった……よ」

「そ……そういえば、父上が魔王様から力を頂いたと、嬉しそうに笑っている日があったな。あんな高笑いする父上なんて久しぶりに見たからオレ覚えてる」

「伯父様は……多分、飲んだんだと思うけど……忘れてるわね。力を貰ったてこと以外は……」


 4人が4人、思い当たる節があったらしく当時の元四天王の様子を語っておった。

 というか、飲めば強くなる飲み物って、怪しさプンプンじゃな。

 そう思いながら、彼女は外で呼ぶ声にそろそろ出るべきだろうと考え始めた。


「もしも魔王に会ったら、聞きたいことが増えましたね……。それで、もう合流してもよろしいでしょうか?」

「わかった。兎に角いまはあなたについて行くことにしよう。しばらくよろしく頼む」

「こちらこそよろしくお願いします。それと、あなたがたは……獣人と言えば良いですか?」

「……いや、魔族で構わない。あの街がああなってしまった原因は自分たちにあるんだ。だから、隠すつもりは無い。良いだろうか皆?」

「ああ、罵られたとしても当然なことをしたんだ。だから、オレは別に構わねぇ」

「う、ん……。わた、しも……」

「ええ、ですがあの腐れアークを痛い目に会わせないと、ウチは気がすまないわ」


 フェニの言葉に残りの3人も同じように頷いた。正直な話、彼女もそう思っておるようじゃった。

 まだ見ぬアークという魔族じゃが、ロンの話を聞く限り……ゲス野郎で間違いは無いじゃろうな。

 そのゲスがこの国で何かをしようとして、妖精の目を持つ妖精を捕まえている……どう考えてもただ事ではないはず。

 そう考え……彼女は彼らを見渡した。


「わかりました。それではアンたちと合流しましょう。ですが、酷い目にあわせるつもりは無いので……」


 彼女はそう言ってから、4人を連れて洞から出てアンたちと合流するのじゃった。

やばい、ちょっとスランプ気味。頑張れ、湧き上がれアドリブ力……!

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