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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
獣の章
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ヒノッキに到着

 翌朝、一行は昨日と同じようにフェーンに妖精の靴に力を通してもらうと、枝を揺らしながら樹と樹の間をすり抜けるようにして森の中を跳んでおった。

 今日中には辿り着きたかった一行は、昼食として妖精の隠れ家から取ってきた果物を齧りながらも跳び続け、唯一の問題であった彼女の妖精の靴を扱う技術も高くなっていき……そのかいあって、昨晩アンが言っていたように夕方前にはヒノッキが見える場所まで到着したのじゃった。

 そして、ヒノッキに近づくに連れて……木々のにおいに混じるようにして、何かが焦げるような臭いが漂い始めた。

 全員が不思議に思いつつも、何が起きてるのかを確認すべくヒノッキに近づき……、臭いだけだった周囲に白い煙が周囲に溜まり始めておったのじゃ。

 まるで、生木を乾燥させずにそのまま燃やしたような白い煙と、燃えたのに更に燃やした結果出たような黒煙……。その煙に嫌な予感を感じつつも一行はヒノッキの街の前へと到着した。

 そう、ヒノッキの街だった(・・・)場所に……。


「何ですか、これは……? ヒノッキの街は?」

「いったい……なにがあったんです……?」

「うそ、だろ……? みんなは?」

「誰か、居ないんですか……?」


 衝撃を受けすぎたのか、呆然とアン、トウ、ロワ、フェーンの4人は呆然と呟いておった。

 森と共に生きているというエルフや妖精なのだから、目の前の光景は信じられないと言ったところじゃろうな。

 事実、彼女も目の前の光景に言葉を失っておった。

 この……ヒノッキの街であったであろう、カーシに劣らぬ巨大な樹は……まるで高温で焼かれたかのように、炭のように燃えており……。その熱を受けたからか、周囲の木々も燃えて白い煙が上がっておったのじゃ。

 それを見て呆然としていた彼女じゃったが、何とか正気を取り戻すと即座に手をパンッと叩きおった。

 その音にハッとして、4人も正気に戻ると一斉に彼女を見たのじゃ。


「呆然としているところ悪いですが、今は状況を確認しましょう。あと、生き残りも居るかも知れません」

「はっ、はいっ! 分かりました!!」

「そ、そうだよねっ! 誰か生きてるはず……!」

「それに、燃え広がらないようにしないといけませんし!」

「そ、そーだな! こいつにいわれるのはしゃくだけど、ぼーぜんとしてたらだめだよな!」


 4人はそう言って、それぞれの役割を行い始めたのじゃった。

 アンたちは生き残りが居ないかと確認しながら、水属性の魔法や土属性の魔法、風属性の魔法を駆使して、周囲に燃え広がり始める火を鎮火させ始め……。フェーンは、そんな彼女たちのサポートをすべく付いて行ったのじゃった。

 そんな彼女たちを見送り、彼女はどう動くべきかを考え始めた。


「とりあえず、通話の枝を使って、ヒノッキの現状を報告……いえ、確認をしてからのほうが良いですよね。じゃあ、アタシも火消しをしつつ、生き残りがいないか――」


 そう呟いていた瞬間、突然彼女は足元から《土壁》を創り出しおった。直後、ガキンという音と共に《土壁》が叩かれる音が響いたのじゃった。

 役目を終えた《土壁》は即座に地面へと消え、目の前には白と黒の毛並みを持った虎の獣人らしき少年が蹲っておった。

 多分、力いっぱい彼女の頭を殴りつけようとしたようじゃが、その拳は《土壁》に吸い込まれて行き、結果目の前の人物は蹲る羽目になったようじゃな。


「テ、テメェ……なんで、オレの気配を……!?」

「そんなバカみたいな殺気を出していたら気づいてくださいと言ってるようなものですよ?」

「な、なるほど……じゃねぇ! おい、命が惜しければ回復薬や食べ物を寄越せっ!」

「命が惜しければって、殺して奪うつもりだったじゃないですか。そして、今は……誰が命を握ってるか判っていますか?」


 そう言って、優しく微笑んだ彼女に虎の少年は顔を一気に蒼ざめさせて、ガクガクと震わせおった。

 何でじゃろうな、彼女は普通に微笑んだだけなのにのう。本当、普通にのう……。

 そんな中、彼女たちとは違う声が聞こえてきたのじゃった。


「それくらいにしてもらえないだろうか?」

「……このかたの仲間ですか?」

「ああ、こいつが失礼をした。けれど、回復薬や食べ物が欲しいのは本当のことなんだ。あと2人連れが居るのだが……怪我をしていてな」

「そうですか……」


 荒々しい気配を持つ虎の少年と違って、次に現れたのは青い鱗を持つ龍が人化したらしき青年は理知的なのか、謝罪をして自分たちがそれらを要求した理由を答えてくれた。

 それを聞きながら、彼女は返事をし……考える素振りをする。

 そんな彼女の態度に龍の青年の表情からは焦りが窺え……、虎の少年からは殺気は消えたが求めるような瞳が向けられておった。

 彼らを見ながら彼女はあることを訊ねた。


「ひとつだけ聞かせてください。ヒノッキの街をこんな風にしたのはあなたたちですか?」

「「――っっ!!」」


 その言葉に、2人は表情を硬くし……唇を強く噛むのが見えた。

 けれど、意を決したのか虎の少年が口を開いた。


「げ、原因はオレたちだ……でも、でもオレたちはこうなるって知らなかったんだ! 父上の名にかけて嘘じゃないって誓う!」

「……では、貴方たち4人以外にヒノッキに生き残りは?」

「多分、居ない……。自分たちでさえ、彼女たちが居なかったら死んでいたかも知れないから……」


 彼女の問い掛けに龍の青年は表情を暗くし、そう告げた。

 そして、虎の少年は縋るような瞳で彼女を見ながら、言葉を口にする。


「な、なあ、頼むよ。回復薬や食べ物を分けてくれよ! そうしないと、あいつらが……!」

「……それは無理ですね。アタシは貴方たちに上げるような回復薬はありません」

「どういう意味だ……? 返答次第では容赦はしない……」


 龍の青年がそう言うと、虎の少年と共に殺気の篭った瞳で睨みつけてきおった。

 そんな彼らの殺気を無視して、彼女は2人を見た。


「アタシをその2人の元に連れて行きなさい。……大丈夫、酷い目に合わせるつもりはありません。たとえ貴方たちが何であろうとも……ね」

「……分かった」

「ロ、ロンッ!?」

「タイガ、今ここで口論している間にもトールとフェニは危険な状態なんだ。だったら、今はこの人を連れて行くべきだ」

「け、けどよぉ……。わかった…………」


 タイガと呼ばれた虎の少年は反論しようとしたが、ロンと呼ばれた龍の青年の言葉に頷いた。

 そして、2人は彼女を見ると、トールとフェニと呼ばれた2人の元へと案内を始めたのじゃった。

新キャラって増やしすぎると良くないけど、頭で勝手に書かれちゃうんですよね。

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