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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
獣の章
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妖精の靴

 彼女のその一言で、周りに立っていたエルフたちはホッと息を吐いておった。

 それはヒノッキまでの道のりが危険だと言うことなのだろうか、それとも何時オークたちが襲ってくるか分からないから迂闊に動けないからだったのだろうか?

 どうなのかは分からないが、カーシは頭を下げてきたのじゃ。


「感謝する。では、今日は準備や移動方法を説明する時間に当てるので、それを覚えて明日からの移動をお願いしたい」

「分かりました。……あれ? ですが、移動方法って……ゼブラホースとかのホースに乗って行くんじゃないですか?」

「いや、ホースはこういった木々が多い森の国では移動には向いていない。だから、これを使っている」


 カーシはそう言うと、控えていたエルフに頼むと一足の革靴を持ってきおった。

 何の変哲も無い、照りが掛かっていないファンタジーでありがちなブカブカな革靴。

 いったい何なのだろうと首を傾げていると、カーシから彼女に靴の説明が行われた。


「この靴は、妖精の靴と言って妖精の力を借りることで自身の重さをまったく感じさせないようになる物だ。我々はこの靴を使って、木々を移動するという方法を使っている」

「なるほど……、つまりは軽くなって木葉のように飛んで行くように移動して行くのがこの国の主流……と言うことですね」

「そうだ。そして、この靴を使うには最低条件として、妖精との信頼が必要なのだが……」

「……ああ。あれ? ですが、フィーンとは無理なのですか?」

「フィンはねー。そのくつとなんだかあわないのー」


 彼女が疑問に思ったことを問い掛けると、フィーンが口を挟むようにそう言ってきたのじゃ。

 要するに妖精にも向き不向きがあると言うことじゃな。

 そんなことを思いながら、彼女は妖精の靴をジッと見つめると……例の如くウインドウが表示されおった。


 ――――――――


 名称:妖精の靴(フェアリーブーツ)


 説明:

  妖精たちが作った靴。

  妖精の力を借りることで、自身の重さを軽減させ、移動を容易にする。

  妖精との相性が最高に達していると、空を飛ぶことも可能とも言われている。


 ――――――――


 まあ、要するに妖精の手を借りることで移動を容易にする靴というわけじゃな。

 きっと、イメージで言うとニンジャというところかも知れぬな。

 ん? ニンジャとは何じゃと? ……んー、確か見た者はアイエエエエとか言って恐怖のどん底に沈む職業。だったはずじゃな。

 わしはあまり詳しくないからのう。


「あの、フェーン以外の妖精に頼むのは無理なんですか?」

「……可能と言えば可能なのだが……。彼は一番妖精の靴と相性が良く、キミたちが早く到着するように選んだんだが……な」

「中々気難しい妖精みたいですね……」

「んー……、フィンがお願いしてこようかー?」


 困っている彼女たちを見たからか、フィーンが心配そうにそう言ってきたのじゃが……言っては何じゃが、現在のフェーンにフィーンが声を掛けて、それが彼女の助けになってという物じゃったら、より拗れることが間違いないじゃろうな。

 それを頭の中で瞬時に理解した彼女は、フィーンに優しく笑いかけおったのじゃ。


「大丈夫です、フィーン。それには及びません。彼……フェーンも落ち着いたら、考え直してくれると思いますので、心配そうな顔をしないでください」

「そうー……? アリス、だいじょうぶー? フィンができることがあったらなんでもするからー」

「そうですね……。では、何時フェーンが来ても大丈夫なように、妖精の靴に慣れたいのでお願いできませんか?」


 心配そうにしていたフィーンにそう言うと、一瞬驚いたが何処か嬉しそうな表情をした。けれどすぐに悲しそうな表情をしたのじゃ。


「え……、でもフィンのちからはくつとあわないよー?」

「大丈夫です。それに、使えないのではなく合わないというのなら、訓練すれば上手になる可能性だってあるってことじゃないですか」

「そーなのかなー……?」

「そうですよ、きっと。だから、アタシと特訓してみませんか?」


 彼女がそう優しく言うと、悩んでいたフィーンじゃったが……覚悟を決めたらしく、彼女のほうを見たのじゃ。

 けれど、その表情はまだ何処か不安を感じている表情ではあったが……。


「うんー、だったらフィンはアリスといっしょにがんばるー」

「ありがとうございます。カーシ様、靴の練習は何処で行えば良いのでしょうか?」

「場所はティアに案内させよう。良いか、ティア?」

「分かりました、父さん。こっちだ、アリス……ありがとう」


 彼女が練習場所をカーシに問い掛けると、話はもう終わっていたからか止めること無く、ティアに案内を頼んだのじゃった。

 ティアはいい返事をして、彼女を練習場所へと案内するために部屋から出て行ったのじゃが……、フィーンに聞こえないようにこっそりと彼女に礼を言ったのじゃった。

 もしかすると、ティアもフィーンが悩んでいるのを何とか助けてやりたいと思っていたが、何も出来なかったのかも知れないのう。


「いえ、気にしないでください。アタシも助かることですし」

「そうか……それでも礼は言わせてくれ。ありがとう」


 そう言って、ティアは彼女にフィーンに気づかれないようにして頭を下げたのじゃった。

 それから少し歩いて、彼女はカーシの街の中層から外に出るための洞へと案内されたのじゃった。

ファンタジーアイテムが出ました。

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