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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
獣の章
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それをはずすなんてとんでもないっ!

 お腹いっぱいか? うむ、良かったのう。では続きを見るとするか?

 いや、色々と終わった後か一応わしが見てからじゃぞ……うん、大丈夫じゃな。それでは、続きを見るとするかのう。

 明赤夢を着て……ぐったりとした彼女、やり遂げたと言う風にお肌がツヤツヤになっているティアとアルト。

 それをフィーンは楽しそうに見ておったのじゃ。


「凄かったよアリスー♪」

「そ、そうですか……。ありがとう、ございます……?」

「ふう……満足した」

「わたしもです~……。アリス、着てみてどう~? 苦しいとか、きついとかは無い~……?」


 ニコニコしながら近づいてくるアルトに、彼女は本能的にビクッとなって一歩下がるが……平然を装いながら、ビクビクしつつ。


「え、ええ……特に苦しいとかはまったくないですね……」

「そっか~……。じゃあ、このまま仕立てるね~」

「お、お願いします。それじゃあ、これはもう脱いで……あれ? 脱い……で? あ、あれ??」


 明赤夢に手を掛けながら、彼女はあれあれと呟き続けおった。

 その言葉に、全員が首を傾げ……ティアが代表して聞いてみることにしたのじゃ。


「どうしたんだアリス? もしかして……、嫌がってるけど着たかったのか?」

「ちっ、違いますっ! 何故か脱ごうとしてるのに、服が脱げないんですっ!!」

「そんな馬鹿な? 仕方ない、あたしが脱がせてやろ――ほぶっ!?」


 彼女が言ってることが信用できないらしく、ティアが笑いながら明赤夢に手を掛けた瞬間、彼女が振ってもいないというのに振袖がブンと舞って、ティアを殴りつけたのじゃ。

 いきなりのことで、周りは驚き目が点になり……彼女も何が起きたのかと唖然としておった。

 けれど、放心していてもダメだと考えて、恐る恐るティアに近づくと……目を回して気絶しておったのじゃ。


「え、えぇーー……?? な、何ですかこれ……」

「え、えっと……ア、アリス……ティアを殴ったらダメだよ~……」

「うわー、いたそー。ティアー、しっかりー。きずはふかいぞー」

「アッ、アタシやったこと確定ですかっ!? 無実です、アタシは無実です! と言うか、アルト、いったいなんですかこの着物はっ!? 何か脱げないし、勝手に動くんですけどっ!!」

「アリス……、困ったからって着ている服のせいするのは良くないよ~……ひゃっ!?」


 哀れむような瞳でアルトが彼女に近づいて肩をポンと叩いていたのじゃが、突然ビクッとして可愛らしい悲鳴が口から洩れたのじゃ。

 いったいどうしたのかと思っていると、恥かしそうに頬を染めながら……彼女を見てきおったのじゃ。


「あ、あの……アリス~……。いくら女同士だからって……その、太股をいきなり触るのはどうかと思うんだけど~……」

「えっ!? ア……アタシ、触ってなんかいないですよ……?」

「え? じゃあ、今も太股を擦るサラサラとした感触は~……?」


 恐る恐る2人が下を見ると……明赤夢の振袖部分がアルトの太股に擦り寄っておったのじゃった。

 静寂が室内を包み込み……、視線が自分に向けられていることに気がついたらしい明赤夢が、自分で動いてなんかいませんというかのように……そそくさと振袖らしく重力に身を任せておった。

 彼女とアルトはお互い何も言えず、目を合わせて苦笑したのじゃ……。


「え~……っと。何ですかこれ~?」

「アタシのほうが聞きたいですよ、これはっ!!」

「普通に縫ってただけですよ、わたしは~!」

「そ、そうです……よね。じゃあ、いったい何がどうなって……」


 そう呟きながら、明赤夢をジッと見つめてみると……先程と同じようにウインドウが表示されたのじゃが……少し変わっておった。

 それに気づいた彼女は食い入るようにそれを見つめたのじゃ。


 ――――――――


 名称:明赤夢ルシッド


 製作者:アルト


 説明:

  此処ではない世界の知識を元に創られたアダマンタートルの甲羅を布にして創られたKIMONOドレス。

  持つ者が着用すれば、魅惑の一品となる。だが持たざる者が着用すれば、不憫さを誘う逸品となってしまう。


  主と認めた者が着用すると、基本的に脱げなくなってしまっている。

  風呂や脱がないといけない状況となった場合は、自らを珠に変化させます。

  というわけで、コンゴトモヨロシク、マイマスター。


  ※なにかがたりない。

  ※たりないぶぶんは、こんじょうでおぎなえ!


 特性:

  ワンダーランドの僕:ボスの命令は絶対です!

  成長する防具:がんばってきれいになります!

  相手に魅了効果:マスターの魅力を広めます!

  死が別つまで:それをぬぐだなんて、もったいないっ!


 ――――――――


 ……え、なにこれ。ほんとうになにこれ?

 そんな表情をしている彼女の様子に気がついたアルトが恐る恐る声をかけてきおった。


「えっと、アリス~……どしたの? 何か凄い顔してるんだけど……服に何か変なことがあった~……?」

「あ……い、いえ……、特にない……ですよ?」

「んー……アリスー?」

「どうしたんですか、フィーン?」


 貴女の創った服が呪われていますなんて言えるわけが無いので、彼女は平気だと言っていたのだが……ティアを見飽きたのかフィーンがこちらに近づいてきた。

 そして、フィーンがグルグルと飛びながら、明赤夢をマジマジと見つめ……何を言うのかを結論付けたらしく、首を傾げながら、彼女を見たのじゃ。


「何だかねー、ルシッドがアリスから離れたくないんだってー。愛されてるねー♪」

「え……? 離れたくないって……で、でも、仮縫いなだけだから何時解れてしまうか分からないんだけど~……?」

「ふんふんー。かりぬいがなんぼのもんじゃー。こんじょうで仕上がってみせるぜー。って言ってるよー」

「と、と言うか……フィーンは何を言ってるのかって分かるのですか?」

「んー……そう言ってるなーって、見てたらわかったんだー♪」


 フィーンはそう自慢げに言うのじゃが……、自分の創った服がこんなことになってしまったということを知ったアルトはガクリと項垂れたのじゃった……。

 元気を出せ……。

喋りませんように。どうか喋りませんように……。


と言うか、どうしてこうなった。

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