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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
獣の章
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服の完成?

やばい、着物の名前まったく考えていなかった……。

「これでどうかな~? アリス~、ちょっと着てみてくれない~……?」


 アルトが縫い始めて2日が経過し、彼女はティアの家を宿代わりにさせてもらいながら、何時ものようにティアとフィーンと一緒にアルトの工房に訪れ……会って一言そう言ってきたのじゃ。

 その言葉に、もう出来たと言うことに驚きつつも……少し自信満々といった表情のアルトに連れられて、創られた衣装の前へと彼女たちは立ったのじゃった。

 それを見たティアとフィーンの2人は目を輝かせたまま、衣装と彼女を見比べておった。


「凄いな……これを、アリスが着るんだな」

「すごーい、すっごくきれー!」

「ティアとフィーンもそう思うよね? アリス的にはどう?」

「はい……その、綺麗……ですね」


 どう言えば良いのか悩んだ彼女だったが、無難な感じにそう答えることにしたらしい。

 ある意味……予想してはいたが、その少し斜め上を行ったデザインの衣装を彼女は見ておった。

 ぱっと見からして、服装のデザインは初めてアルトが見せてくれたデザインであるゴス浴衣と同じであった。けれど……色々と変更が加えられた箇所が多々あったのじゃ。

 まず最初に、ゴス浴衣のようなデザインの裾部分が膝辺りでの均一の長さではなく、ウェーブするように片側は腿辺りまで伸び……もう片方は膝上まで長さになっておった。片方は脚を隠してもう片方は魅せるといった感じじゃな。

 そして裾などに付けられる予定じゃったフリルはまったく無くなっており……まあ、燃えるじゃろうしのう。というか、既にゴス浴衣ではなくミニ丈着物に近いの……。

 そして、最後に最大級に変わってしまった場所があったのじゃ。それは……。


「あの……最初のデザインだと、胸元は隠れていませんでしたか?」

「うん~……でも、アリスの胸元隠しすぎるのもどうかなって思ったんだ~……」

「あ、その目……、絶対半分寝惚けていますよね!? と言うか、徹夜のテンションで創り続けてたんですよねっ!?」


 人間、眠いと変な精神状態になるからのう……。

 で、結局……彼女が着るべき服で最大級に変わってしまっていた場所は……胸元じゃったんじゃ。

 こう……着物を胸元でキュッとするのではなく、肩辺りでゆったりと着るように創られ……胸元、所謂上乳が見えるようなデザインをしておったのじゃ。

 正直言って、彼女は顔を真っ赤にしておった。そして、それを見ていたティアがクルリと振り返り……アルトに近づきおった。これは……彼女が恥かしがっているだろうと怒ってくれようとしているのか。そう期待しつつ、彼女はティアを見ておった。


「アルト……良い仕事をしたな!」

「うん、わたしも久しぶりに良い仕事をしたよ~……」

「どっちも駄目な人だったのを忘れていました!」


 ティアはアルトに親指を立てて賞賛の言葉を贈り、それを見て彼女は頭を抱えたのじゃった。

 そんな彼女に、何で頭を抱えているのか分かっていないが、フィーンが小さい手で肩をポンと叩いて……げんきだせよーと在り来たりな言葉を口にしておった。

 とりあえず、フィーンの言葉で少しだけ気を取り直して、掛けられた着物をちゃんと見直すことにしたのじゃ。

 すると、アビリティの《鑑定》が発動したのか、着物からウインドウが表示されおった。


 ――――――――


 名称:(名称未設定)


 製作者:アルト


 説明:

  此処ではない世界の知識を元に創られたアダマンタートルの甲羅を布にして創られたKIMONOドレス。

  持つ者が着用すれば、魅惑の一品となる。だが持たざる者が着用すれば、不憫さを誘う逸品となってしまう。


  ※なにかがたりない。


 特性:

  ワンダーランドの僕

  成長する防具

  相手に魅了効果


 ――――――――


 ……何というか、色々と酷い説明文が彼女の目には見えておった。

 そして、書かれていなければならないはずの名称が書かれておらず。(名称未設定)となっておったのじゃ。

 いったいどういうことだと首を傾げていると、ティアがアルトに質問をしておった。


「そういえば、アルト。この服はどういう名前なんだ? きっと大層素晴らしい名前なんだろう?」

「あ~……うん、考えて無かったね。そういえば~……。ん~……いい名前かぁ~……」

「あかいなまえだよねー♪」

「ん~……あか、あか……あか~……ん? んん? あれ、何だかビビッと来た~……!!」


 腕を組んでうんうんと唸っておったアルトじゃったが、突然そう叫びおった。電波でも拾ったのかのう?

 そして、驚く3人を他所にアルトは思いついた名前を発表する気満々じゃった。


「仮縫いだったし考えて無かったけど、ビビッと来たよ~! まるで、この服が名前を自己主張してるかのようにビビッとね~……!」

「そ、そうか……、大丈夫だよな。アルト?」

「大丈夫だよ~……! で、この服の名前は~……『明赤夢(めいせきむ)』またの名をルシッドに決定~……!」

「明赤夢か……珍しい名前だが、不思議と違和感が無いな。その衣装を見ていると」

「わー、ルシッドかー♪ かっこいいなまえだー!」


 アルトの言葉に、ティアは頷き……フィーンはその周囲をパタパタと飛び回っておった。

 そして、彼女もジッと明赤夢と名づけられたイロモノ系の着物を見ると、ウインドウの名称にもしっかりと『名称:明赤夢』と書かれておったのじゃ。

 とりあえず、彼女はそういう名前になったのかと思っていると……、にっこりと笑みを浮かべたアルトとティアがこちらを見ていることに気がついたのじゃ。

 その笑みにそこはかとない、嫌な予感を感じておると……その予感は当たっておった。


「さ、名前が決まったことだしアリス。早くこれに着替えるんだ」

「早く着替えて、色々と調整しようよ~……。大丈夫、痛くしないからさ~……ふふふ」

「え? あ……あの、何だかおふたりとも様子がおかしくないですか……? 何ていうか、目がハートになってるような……」

「大丈夫、気のせいだよ。本当、アリスがこれを着るのが待ち遠しいよ……いや、もう着せてしまおう」

「それはいい考えだね~……。あの素晴らしい弾力をもう一度味わいたかったんだ~……ふふふ」

「あ、あの……ふ、ふたりとも……? ひゃ、ひゃあああぁぁぁぁ~~~~っ!!?」


 あー……これは、どう考えても着ておらんのに、特性である魅了効果が発動しておるんじゃろうな……。

 もしかすると、着てもらうために頑張ってアピールしてると言うことかのう……。

 まあ、しばらくはお主は見ちゃだめコーナーじゃから、ちょっくら食事を取るとするかのう。とは言っても、簡単な物しかわしは作れぬぞ。

 じゃから、あまり期待するでないぞ。

とりあえず、即興で『明晰夢』という名前を思いつき、晰の文字を同じせきである赤に変えてみました。

そして、アリスの装備が段々と自己主張激しい装備になって行くかも……。

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