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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
獣の章
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番外:オークがグレートを名乗った日

※あっさりピチュンされたグレートオーク視点です。

 少し離れた位置に立つ女が何かを投げる素振りを見せたんだブー。

 その瞬間、眼前に迫ってくる巨大な何かを前に……オレは今までの人生を思い出していたブー。


 捕まえた女の胎から産まれて、3~40回月が上り下りし……そのとき、オレは人間の国の近くで仲間たちと共に生活していたんだブー。

 愛や友情などはいらぬと教えられては来ていたが、そんな毎日は過ごし易く楽しい日々を送っていたんだブー。

 時折、産まれたのがかなり先だった仲間のオークたちは何処かから女を捕まえてきて、仲間たちを増やすために頑張って痛んだブー。

 それが冒険者だったり、村人だったり、商人の娘だったりと様々であったが、オレ……というかオークの本能は騎士を捕まえてやりたいと思っていたんだブー。

 そしてオレも近いうちに腰が痛くなることになるのを期待しつつ、日々を暮らしていたんだブー。

 と言うよりも、何故オレたちは危険な目に合っていないんだと少しばかり気になり、年上のオークに聞いてみたことがあったブー。


「オレたちは【無敵の盾】ウーツ様の領域内で暮らしているから、人間たちも手出しし難いんだブー。たまには強い者に頭を下げるのも必要だブー」

「ウーツ様は無敵だブー!」

「あの人が居ればオレたちは仲間を増やし放題で、その上、取り返そうと来る者は全然居ないんだブー!」

「「ブッヒャッヒャッヒャッヒャ!!」」


 そんな年上のオークたちの笑い声が印象的だったブー。

 けれど、そんな日々はあっさりと崩れ去ってしまったブー。

 それは昼になり始めたある日のことだったブー。

 成長したオレは仲間たちと共に女を捕まえに人里近くまで向かっていたブー。

 今日の狙いは、仲間を増やすための女を捕まえることと、食料となる肉を確保することだったブー。正直仲間の肉は飽きてきたブー。たまに出る人間の肉も筋張ってたりスカスカだったりで美味しくないブー。

 だから今日は少し豪勢にバッファローホースとか、ポークホースとかを捕まえたいと思うブー。

 そう思いながら、オレは仲間たちについて行きながら、歩いていたが……突然、背後から激しい音が響き渡ったんだブー!


「ブ、ブー!? な、何が起きたんだブー!?」

「み――見るブー! 山が、山が削れているブー!!」

「む、【無敵の盾】のウーツ様は大丈夫かブー!?」

「見に行くブー! 見に行くブー!!」

「ブー!? 女や肉はどうするブー!?」

「そっちのほうが大事だと思うけど、今はあっちを見に行くブー!」


 全員が未練そうに近づいて来ていた人里からウーツ様の領域である山へと向かって移動したんだブー。

 しばらくして山に到着すると……そこは完全に穴が空いており、ウーツ様は居るかと聞かれればもう居そうに無かったんだブー。

 い、いったい何が起きたんだブー? 驚きながらも、近づくと穴が出来た場所が赤くシュワシュワと臭い煙を立てていたブー。

 それを気にせずに仲間のオークが数名近づいて行くと――。


「ブッ、ブヒィィィィィィッ!?」

「あ、足が熱いブー!?」

「は――剥がれないブー! 誰か助けてブ――ぐぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」


 何が原因か判らないけれど、どうやら地面が熱くなっていたらしく、足を踏み入れたオークは地面に張り付いたらしく動けずにいたブー。酷いヤツなんてそのまま倒れて、身体を焼いてしまっても居たんだブー。若干美味しそうなにおいがしたブー。

 あっさりと死んだ仲間のオークに涎を垂らしつつ、その場所は危険だと判断したオレたちは別の道を探すために移動を開始したブー。

 反対側に周って入ることを考えたオーク。

 死んだ仲間を踏み台にして進もうとしたら、距離が足りない上に最終的には自分も踏み台にされたオーク。

 そんな中で、オレは隠し通路とか無いかと思いながら歩いていたブー。


「おお、あったブー!」


 予想通り、隠れて出入りすることが出来るような小さな穴があり、オレはつっかえながらも穴の中を通り始めたブー。

 しかし、奥へと進んで行くに連れて周りの熱気が強くなり始め、オレ自身がオークの丸焼きになるのではと思い始めたとき……広い場所へと転げ落ちたブー。

 しかもそこはまだ熱が残っていたんだブー!


「あ、熱いっ! 熱い、熱いブー!! 死んでしまうブー!!」


 ゴロゴロと転げながら、オレは皮膚が焼けて行く感覚を覚えつつ死を覚悟してしまったブー!

 けれど、魔神様はオレを見捨てては居なかったブー!

 熱が抜けて冷えた地面にオレの体は転がり、止まったんだブー!


「ブヒぃッ!? い、生きてるブー。オレは生きてるブー!!」


 生への実感を噛み締めながら、生きてることを喜び……オレは目の前にある物に気がついたんだブー。

 それは血のように赤く、まるでオレに握り締めて欲しいと言うかのごとく地面に付きたてられていたんだブー!

 これはきっと、ウーツ様の形見に違いないブー!


「これでオレは最強の存在になってみせるブー! そう、今こそオレはオークではなく、グレートオークとして立ち上がるんだブー!!」


 そう叫びながら、オレは力いっぱいに突き立てられた剣を引き抜いたブー!

 元々の剣の名前は分からないけど、これは今日からグレートオークソードだブー!

 この剣で、オレは魔物業界にのし上がって行くんだブー!!


「見ていてくださいブー!!」


 そして、それから3年ほど経って、色んな功績が認められ……オレは森の国にある街を攻め込むと言う任務を与えられたんだブー。

 そこには大量の騎士がいっぱいいるブー! 何時でも何処でも、ぶちのめして戦力を砕いた女騎士から「くっ、殺せっ!」という言葉が聞き放題だブー!

 その表情が、色々と壊れて行くのが本当に楽しかったんだブー……!

 それを思い出しながら、オレの身体へと投げられた物は突き刺さり……そのまま奥へと突き進んで行き――目の前が真っ暗になってしまったんだブー……。

 自分の身体に、何が起きてしまったのかはまったく分からないブー。

 知ってる人が居たら、誰か教えて欲しいブー。

とりあえず、アダマンタートルやオリハルコンタートルの甲羅は簡単には割れません。偶然壊れただけです。

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