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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
獣の章
161/496

超番外:うさうさ

 ※この話は本編とは一切関係ありません。ひとつのネタとして見てください。

 カーテンの隙間から洩れる太陽の光に急かされるようにして、アタシの頭が置き始めて行く……もう少し眠りたいけど……起きなくちゃいけないよね。

 そう思いながら、ベッドから起き上がり……両手を上に伸ばして、アタシはう~んと言いながら身体を伸ばす。

 アタシが起きたことに気がついているのか、篭の中に入ったペットの兎であるワンダーがチラリとアタシを見たが……どうでも良いと言うようにもう一度眠りについた。


「うぅ……動物は良いよね、ワンダー……。ワンダーはまだまだ眠れるんだから本当羨ましいよ……」

『ぶう、ぶう……』

「……まあ、いっか。顔を洗ってこようっとっ♪ 戻ってきたらワンダーもご飯にしようねー」


 そう言って、アタシは部屋から出て行き、洗面所へと向かい……顔を洗ってから、もう一度部屋に戻り、パジャマから制服に着替えてから、篭を開けた。

 すると、ワンダーは器用に開けた篭から跳び出すとアタシの足元で待機してきた。

 本当、この子って普通の兎よりも頭が良いって思うのは飼い主バカなのかなぁ……?

 そんな風に考えながら、アタシとワンダーは階段を下りてリビングに入ると、サリーお姉ちゃんがテーブルにお皿を並べて……ボルフ父さんが朝刊を読んでいた。


「おはよう、アリス。ワンダー。ほら、早く席に着いてご飯にしましょう。学校に遅刻しますよ。父さんも新聞を畳んで畳んで、あとワンダーの餌をお願いします」

「ん……。っと、ワンダーのご飯は……これだな。ほら、ワンダー、来ーい」


 父さんの声にワンダーが近づき、自分用の皿に置かれた野菜スティックをカリカリと美味しそうに食べ、アタシたちはそれをほんのりとした視線で見つめていたけれど、時間が時間なので急いで食べることにしました。

 こんがりキツネ色に焼かれたトーストと塩味の効いた半熟の目玉焼き、そして小さく盛られたサラダ。

 それらを美味しく食べて、アタシは食後の珈琲を口にして……時計を見ました。


「うわっ!? も、もうこんな時間だっ! それじゃあ、行って来るねー!」

「はい、気をつけてね。父さんも仕事に遅れますよ。ワタシも準備をしてきますから」

「分かった。……というか、何だこれは……」


 カバンを掴んで、アタシは急いで家から飛び出し……学校へと走り出した。

 っと、今更だけど自己紹介。アタシの名前はアリス。何処にでも居る14歳の普通の中学2年!

 最近まで思春期だったからか、家族との付き合いかたが分からなくなっていたけど、ある雨の日にワンダーを拾って……飼って貰うために話をすることで家族と少しだけ付き合いかたを思い出して、それからワンダーのお陰なのか、サリーお姉ちゃんとボルフ父さんともすっかり元通り……いえ、それ以上に仲良くなれた気がします!

 それに、学校でも本を読んでばかりいたアタシだったけど、ワンダーのお陰で生き物が好きになって、飼育部に入って色んな動物と戯れて、そこからお友達や仲の良い先輩が増えてきました♪


「やあ、アリス。今日も元気だね」

「元気があるって良いよね~……」

「あ、おはようございます。ティア会長、アルト副会長!」


 曲がり角を曲がったときに、アタシに話しかけてきた2人。それは生徒会長のティア先輩と、副生徒会長のアルト先輩。

 この2人とは飼育部に連れて来たワンダーが何時の間にか居なくなっていて、困り果てたアタシに話しかけてきた縁で仲良くなりました。

 2人とも眉目秀麗なので、ファンクラブもあったりするみたいですけど……今のところ、アタシに被害が及んでいる様子はありません。

 そんな2人と楽しく会話をして、ゆっくりと歩きそうになりましたが……大事なことを思い出したので、急ぐことにしました。


「会長、副会長、おふたりも急いだほうが良いと思うんですが……」

「ん? どうしてだい? 今の時間でも十分に間に合うと思うが」

「わたしも走るのは疲れるから力温存しておきたいんだよね~……」

「でも、今日は急いだほうが良いと思うんですよ。今日は……ハスキー先生が生活指導を行っているって噂ですよ」


 瞬間、2人の表情が凍るのが見えました。

 それもそのはずです。ハスキー先生は優しい性格ですが、悪いことや遅刻をした生徒には容赦が無い先生なんです。

 だから、その日は急いで登校して、門を潜って行くのが常識となっていたのです。

 だからでしょう。急ごうとティア先輩が言うと、アタシたちは頷いて学校へと急ぎました。


 ――そして、学校は地獄となっていました。


「う、うわぁぁぁ! や、やめろぉぉぉぉっ!? ――うっ!?」

「きゃぁぁぁぁっ!! 来ないで、来ないでぇぇぇぇ!! ――うぅっ!」

「お……おい、大丈夫かっ!? って、やめろ、オレにはそんな気はな――うぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」


 逃げ惑う生徒たち、そしてそれを追いかける人型の兎っぽい生物。

 その兎っぽい生物が持つ杵のような物で攻撃された瞬間、生徒たちは兎……いえ、バニーとなっていました。

 男女問わず全員バニースーツ……。それを地獄と言わずして何と言いましょうか……。


「こ、これは……いったい……」

「ティア~、早く生徒たちに避難指示を出さないと~……!」

「そっ、そうだな! お前たち、早く逃げるぞ!! アリス、キミも早く何処かに隠れるんだ!!」


 そう言って、ティア会長とアルト副会長は急いで駆け出して行きました。

 アタシは現状が理解出来ずに呆然としており、校庭のほうではイケメンで人気の3年のライト先輩が彼の幼馴染のヒカリさんとシターさん、実習生として来ていたルーナさんのバニースーツに囲まれて幸せそうでしたが、あれはもう手遅れですね。

 そう思っていると、兎人の1人がアタシに気づいて……全速力で駆けて来るのが見えました。

 いきなりな上に、人間サイズの兎(体型も人型)が迫ってきたら腰を抜かすに決まっています!


「ひゃ、ひゃぁぁぁぁぁぁっ!?」

「危ないっ! アリスッ!」

『ブウ!? プゥゥゥ~~!』

「え……? ワ、ワンダー……?」


 突然声がして、恐る恐る目を開けると小さな兎がバリアーのような見えない壁を張って兎人からアタシを護っていました。

 というか、この兎はどう見ても、アタシの家のワンダーでした。

 え? なに、どういうこと??

 驚くアタシを他所に、ワンダーは器用に2本足で立つと悔しそうな顔を浮かべながら兎人たちを見ていました。


「くそっ、ついに奴らの侵攻が始まってしまったか……!」

「ワ、ワンダー……? どういうこと? というか、え、喋ってるし、立ってる?」

「話は後だ、アリス。きみは何処か安全なところに避難するんだ! ここは、ぼくに任せて! ぼくにはその義務があるから!!」

「逃げろって、ワンダーはどうするの!? 一緒に逃げようよっ」

「訳は言えないっ、言ったらきみをぼくたちの戦いに巻き込んでしまう! だから――うわっ!?」

「ワンダーッ!?」


 つらそうな顔をしていたワンダーへと突然、何かが飛んできてワンダーを吹き飛ばしました。

 突然のことで驚いたけれど、アタシは吹き飛ばされたワンダーへと駆け寄ります。すると突然、甲高い笑い声が周囲に響き渡りました。

 いったい何が起きたのかと慌てながら周囲を見ると、屋上に人影が居るのに気づきました……いえ、人の頭に長いウサ耳が生えています。

 犬耳の上にウサ耳が装着されていますが、気にしないでおきましょう。それが自然の摂理なのですから。


「お~~ほっほっほっほ~~っ、まさか攻め込んだ世界で王族の生き残りを見つけるとは、わたくしってば幸運だったりしませんことぉっ!!」

「だっ、だれっ!?」

「誰と聞かれれば、答えるのが優しさですわぁ! わたくしは、魔兎帝国侵略部隊隊長のベリアですわぁ! そして、その名を胸に抱きながら、死ぬが良いですわぁ! 聖兎王国王子ワンダー!!」

「うっ……ベ、ベリア……まさか、そんな大物がこの世界を侵略しに来ただなんて……」

「ワンダーッ! しっかりっ、大丈夫なのっ!?」

「うん、大丈夫……だけど、まだ動けそうにもないよ。アリス……きみは逃げるんだ……」


 ワンダーはアタシに優しくそう語り掛けて、逃げるように促します。けれど、アタシは首を力いっぱい横に振ります。


「嫌だよっ、ワンダーを置いて逃げるなんて、アタシには出来ない!」

「ワガママを言うんじゃないっ、死ぬかも知れないんだよっ!?」

「やだっ、ワンダーを死なせない! アタシも死なないっ! だって、アタシはワンダーの家族なんだからっ!!」

「ごちゃごちゃ言ってるんじゃないですわっ! 二人纏めて死になさぁい!」


 そう言って、ベリアはアタシたちに向けて黒色の閃光を放ってきました。

 アタシは目を瞑って、力強くワンダーを抱き締めます。

 瞬間、眩い光がアタシたちを包み込みました。


「え……? なに、これ?」

「これは…………まさかっ!? やっぱり、光ってる……」

「ワンダー? これって……? というか、今何処から取り出したの?」


 胸毛に手を突っ込みごそごそとしたワンダーはそこから光り輝く杵型のキーホルダーのような物を取り出しました。

 そして、ワンダーはアタシの疑問に答えること無く、それを差し出してきました。


「アリスッ、逃げろと言っていたぼくが言うのもなんだけど……ぼくと一緒に戦って!」

「戦う……。うん、分かった! アタシ、ワンダーと一緒に戦うっ! どうすれば良いのっ?」

「今から、ぼくの言うとおりのことを言うんだ! 聖杵ランド、ぼくに力を!」

「せ、聖杵ランド、アタシに力を!」

「「ペッタンペッタンモチペッタン、ウサギピョンピョン、マジカルラビットチェーンジ!」」


 うぅ、何ででしょうか……掛け声を口にすると何故だか涙が止まりません。

 唱え終えた直後、アタシの身体に光が纏わり……着ていた学生服を分解し、ヒラヒラとゴスロリっぽい衣装へと変わり、お尻にはウサギのまん丸尻尾飾りが付けられ、帽子が乗せられた頭にはウサ耳がのっかかっていました。

 そして、最後にアタシが持てるサイズに変化した聖杵ランドを握り締め……アタシは無意識にポーズを取ってしまっていました。


「愛と勇気の魔法少女ラピッドアリス。ここに参上☆ お月様に叩きつけちゃうぞ☆」


 ここに、愛と勇気の魔法少女が誕生し、同時にアタシの長い戦いが始まったのでした。



 ●



「――――はっ!? ゆ、夢……はぁ、夢だった。……よかった」


 頭のキツネ耳を確認し、安堵しながら呟き……アタシは枕にしていたワンダーランドを見た。

 モフモフとして柔らかな感触と温かさに包まれ……物凄く寝心地は良かった。

 良かったけれど……。


「うん、もうワンダーランドを枕にするのはやめておこう……」

「ぶう……ぶう……」


 アタシは気持ち良さそうに眠るワンダーランドを見ながら、そう心に誓うのだった。

 と言うか、なんだったんだろう。あの夢は……。

 というわけで、8月21日(バニイの日)の本編とは関係のないネタでした。

 明日からは本編を再開します。頑張ります。

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