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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
獣の章
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服の製作・1

「そういえば、これって何ですか~? 大剣みたいに見えますけど~……?」

「ああ、これ? オークが持っていた大剣モドキです。ちなみにアダマンタートルの甲羅の欠片みたいですよ」

「ほ、本当ですか~?! 初めて見ましたよ、わたし~!!」

「あたしも正直驚いているし、持っていても使い道が無いとしか思えないんだけど……アリスは持てるんだな。……使うのか?」

「使いませんよ? ただ……ちょっと色々とやってみたいだけですが……驚かないでくださいね」


 初めて見る物にアルトは目を輝かせ、ティアはそれを平然と持ち上げていた彼女にどう表現すればいいのかという視線を向けておった。そしてすぐに、彼女の言った言葉に首を傾げておった。

 ちなみに使うのかと聞かれれば、使わないだろう。正直言ってこれはあまりにも粗末過ぎるし……彼女にはワンダーランドという力強い相棒が居ったからのう。

 とりあえず、彼女は静かに魔力を練り上げ……出来るかどうか分からないけれど、この姿になってから初めて《創製》を行ってみることにしたのじゃ。


 練り上げた魔力を徐々にアダマングレートソードに送り始めた所で、漸く彼女はこれにはかなりの魔力を必要とすることに気がついたのじゃが、もう与え始めたので途中で止めると言うわけにもいかなかった。

 そして、普通ならばほんの切っ先だけが軟らかくなっただけで終わってしまう魔力じゃったが、何故だか感覚的にここにこう魔力を通したら、良い具合に軟らかくなっていくということが何故だか解り……それに従って魔力を与えて行くと、アダマングレートソード(笑)が段々と軟らかくなり始めたのじゃった。

 軟らかくなり始める中で、更に魔力を与えて行き……ドロドロとアダマングレートソード(笑)は溶け始めていったのじゃ。それを見ていた3人の反応は様々だった。


「わー、すごいすごーいっ! 金属が溶けていってるよー!?」

「これは……、《軟化》……なのか? いや、何処か違う。どういうことだ?」

「それ以前に、アダマンタートルの甲羅を《軟化》させるほうが変だよ~!?」

「こっちに魔力を与えたら……良い感じかも……次はこっちで……」


 そう呟きながら彼女は作業に集中しており、溶け始めた大剣だった物は何時の間にかワンダーランドが受け皿のような形を取っており、その中へと満たされて行きおった。何も言わなくても、主の考えたことを手伝うとは賢いのう。

 しばらくして、大剣をすべて液体のように溶かし終え……受け皿に満たされているのを確認すると、彼女は息を吐いて後ろに置かれていた椅子に座り込んだんじゃ。

 顔が汗でぐっしょりと濡れて、前髪が張り付いているのを鬱陶しそうに掻き揚げて彼女は改めて実感したんじゃ。


「あー……今まで楽だったはずのは、バカみたいにあったからだったんですね……」

「どろどろだー? 凄いねー、ティアー。フィン驚きだよー」

「あ、ああ……あたしも驚いているけど、アリス。これは《軟化》が失敗したんじゃないのか?」

「あ~、そういえばこれって、《軟化》が失敗したときに見る現象でしたね~! ……あれ? じゃあ~、アリスは失敗したのですか~?」


 ティアが彼女にそう問い掛けると、アルトも思い出したように手をポンとさせおった。そして、首を傾げてから……残念そうに彼女を見たんじゃ。

 そして、当たり前に彼女は力いっぱいに否定をしおった。


「違いますっ! まだ始めたばかりなんです! けど……少し休ませてください…………」

「ア、アリスッ!? ……ね、寝てる」

「疲れてたんだねー」

「……そういえば、話を聞いてたかぎり……ティアたちを助けて~、オークたちを撃退して~……で、今は異常な魔力でアダマンタートルの甲羅を溶かした……疲れるのは当たり前だよね~。ああ、あと空腹もだね~」


 すらすらとアルトが言って行く言葉に、ティアが原因の一端があるからか責任を感じておるような顔をし始め……申し訳なさそうにアルトのほうを向いたんじゃ。

 ついでにフィーンも両手を組んでおねだりポーズをしておった。


「そ、そうだな……アルト、すまないがアリスをベッドに寝かせたいんだが良いだろうか?」

「いいかなー?」

「別に良いよ~……でも、あまり片付けていないから眠るだけだよ~」

「それで構わない。あと……、出来れば運ぶのを手伝って欲しい」

「オッケ~」


 ティアの頼みにアルトは頷いて、二人がかりで彼女を部屋の奥に置かれたベッドへと運んで行ったんじゃ。

 そして、彼女を寝かし終えるとティアは彼女用に何か食べるものを持ってくると言って部屋から出て行き……それを見届けてから、アルトも大きな欠伸をしおった。


「そういえば、わたしも寝てなかったんだっけ~……。ん~……アリスの隣で寝ようかな~」

「いいなー。フィンもいっしょにねるー♪」


 フラフラとベッドに近づいてくアルトに、フィーンも翅を羽ばたかせてついて行き……3人で夢の世界へと旅立っていきおったんじゃ。

 ……うん、閂はまっている状態じゃから、ティアは戻ってきたときは鍵を忘れて家に入れないの図をするんじゃろうな……。

 そして、そんなことはお構い無しに、3人は気持ち良さそうに眠るのじゃった……。

 アダマンタートルの甲羅が落ちて偶然割れた形が大剣だったから、アダマングレートソードと言ってるけれど、もう(笑)をつけるしかないじゃないですか。ですか。

 そして、クッコロさんが残念すぎる子に……。

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