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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
獣の章
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兎の主食は金属です

「ア、アリス……そんな小さい兎に戦わせるなんて、酷いと思うんだが……」

「アリスがきちくー! おにー、あくまー」

「ちょっ!? 何か凄く酷いこと言ってなぃ!? この子は今はこんな姿だけど本当は――え?」


 色々と酷いことを言われて、物凄い視線を送られながら、彼女は現状を打破すべくこの兎の正体をティアたちに告げようとしたのじゃが……突如、兎が光り輝いて武器庫を大きく照らしたのじゃ。

 室内を覆うほどの光に、彼女もティアたちも目を手で被い……何が起きたのかと騒ぐ男の声が聞こえたりしていたのじゃが……すぐに光は止み、武器庫の中にあったはずの武器はすべて無くなっていたんじゃよ……。

 そして……彼女の手には先程まで居た兎は居らず、代わりに巨大な扇が握られていた……というよりも、抱き抱えられていたのじゃった。

 光り輝く朱色の金属で作られた骨組み、端の一端である要には透明な玉がはめ込まれており、扇面には透明な薄い金属が張られた巨大な金属の扇。

 それをジッと見ると先程と同じようなウインドウが彼女の目に見えてきたのじゃ。


 ――――――――――――


 名称:不思議乃国 大扇乃型

 説明:ワンダーランドが現在のアリスが使用する武器に適すると判断して自らを変化させた姿。使いかたは通常のワンダーランドと同じだが、戦って理解するのが一番。名前が感じになっているのはちょっとした愛嬌。


 ――――――――――――


 そこまで行くと、彼女ももう認めるしかなかったのじゃ……どうやら今の自分には道具などの鑑定を行うスキルが身についてしまっているのだと……。

 そしてその一方で、室内の武器が無くなったことに驚きの声を上げる者、何時の間に彼女の手に扇が握られていたのかと戸惑う者、他にも様々な反応を見せる者たちがいたが……一様に彼らは思ったのじゃ。

 いったい何があったんだ!? とな。

 ちなみに彼女のほうは何が起きたのかは大体は理解しておった……。武器庫の無くなった武器……それは今、扇と姿を変えているワンダーランドが摂取していたのだ。

 何故なら、彼女の鑑定のスキルの恩恵か、頭の中で異界の中にある物が見ることが出来、異界の中にあったはずの金属の殆どが姿を消しており、ワンダーランドからは物凄くエネルギーを感じていた……だったら話は簡単じゃった。

 この眠り続けていた3年間の間に、ワンダーランドは自らを修復及び自己進化を行うために、異界にあった金属を栄養にして力を付けていったんじゃ。


「アリス、キミは何が起きたのかはわからないか?! と言うよりもその武器はいったい……それに、あの動物は?」

「わー、この子、変身できるんだねー、すごーいすごーい」

「フィーン、キミはいったい何を言ってるんだ?」

「ティアこそ何を言ってるのー? この武器はあの動物だよー?」


 キョトンとしながら、ティアとフィーンは互いを見ており……それを見ていた彼女はどう言うべきか悩んでいた所で、あまりにも遅かったのか部屋の入口からエルフが顔を出し、早く手伝ってくれと声を荒げて言ったんじゃ。

 その怒声で漸く彼女も今は戦いの最中であることを思い出し、ワンダーランドを抱えて部屋から飛び出した。

 飛び出した彼女を見送っていたが、ハッとしてフィーンとティアも急いで駆け出そうとし……一緒に部屋に居たエルフによって出るのを止められたんじゃ。


「姫様たちは戦場に行かないようにと言われていたではありませんか!」

「うっ……だ、だがアリスが心配で……」

「だったら、信じて待っていて上げてください。ですので今はカーシ様のご命令通り部屋のほうにお戻りを」


 是が非でも行こうとするティアにそう言うと、少し躊躇した彼女ではあったが……すぐに折れてしもうた。


「……わかった。行くぞ、フィーン」

「うんー……、アリスー、頑張ってー」


 悔しそうに上へと上って行くティアに着いていきながら、フィーンはしょんぼりしつつ……下へと駆けて行く彼女に応援を送るのじゃった。

 そして、彼女はその声をしっかりと聞いており、微笑んだ。


「頑張ってて、応援されたなら……頑張らないとね。またよろしくね、ワンダーランド」


 手に抱えたワンダーランドにそう言うと、それに答えるようにしてワンダーランドも要にはめ込まれた玉を光らせ、気合を入れるように見えた。

 そして、下に近づいて行くと豚臭い悪臭と、剣戟の音、豚の雄叫び、エルフの悲鳴、ゴキャリという音、血の臭いが漂い始めてきていたんじゃ。……っと、これはモザイク必須じゃな。

 と言うか、中層から下層に向かう中間だと言うのにこんな臭いがするのは色んな意味で下は酷いことになっていることだろう。

 しかし、これ以上の被害は喰い止めなければいけない。そう考えながら、彼女は中央を覗き……落ちればすぐに辿り着くことが出来ると考えた。降りられない距離ではないのだが、出来れば危ないことは避けたいとも彼女は思っていたんじゃ。

 すると、彼女の腕の中にあったワンダーランドがバラッと羽を広げるようにして、扇を広げたんじゃ。それを見て、彼女はワンダーランドの考えを察して、ワンダーランドを掴むと中央の大穴へと飛び出していったのじゃった。

 ちなみにこれを見ていたエルフたちは驚きの声を上げながら落ちていった彼女を見ていたのじゃった。……まあ、そうじゃろうな。普通あれだけの高さから落ちていったら、足の骨が折れるか砕ける可能性が高いのじゃし……。

 そして、その予想通り……しばらくして、カーシの街の入口から激しい音が響き渡ったのじゃった。

出荷準備出荷準備。

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