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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
人の章
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使える武器を調達しよう

本日2本目。

 さ、それじゃあ今日はもう寝ようか。あはは、冗談冗談。また怒らないでよね……って、痛い痛い、髪を引っ張らないでってば!

 ……ふう、たしか、ハガネが槍を構えたところだったね。

 絶体絶命の大ピンチに見えるわよね? え、彼女はハガネに倒されちゃうのかって? あはは、あんたは彼女がハガネに倒されるって思ってるの?

 ……うん、彼女が負けるはずがないわよね。それじゃあ続きを話そうか。


 彼女に向かって、ハガネの高速の突きは放たれたわ。けれど、彼女はその場から動こうとしなかったの。

 動かない彼女を見ていた周りの冒険者や衛兵たちは恐怖に震えて、動けないと思い迫り来るであろう死に視線を反らしたわ。

 そして、ハガネの槍は彼女の胸に突き刺さろうとした瞬間、突然地上から土が盛り上がって彼女に迫る槍を弾いたの。

 槍を弾いた土壁にハガネは一瞬驚いた顔をしていたけど、すぐに笑みを浮かべたわ。


「貴様、無詠唱魔法の使い手でもあるか! 面白い、面白いぞぉぉ!!」

「な、なにあの土壁……、地面から土が盛り上がるのも遅いし、攻撃を受けたら簡単に崩れるから普通戦う前に唱えておくものなのに……」

「無詠唱だとしても、早すぎます! それに、強度も普通の物と比べて遥かに硬すぎますからどれだけの魔力を練り上げていたのか分かりません……!」

「あ、ああ、あの突きを防いでる時点でそれは分かるけど……、なんだよあれは」

「す……すごい」


 ハガネの愉悦に満ちた笑い声と共に、槍が土に突き刺さる音が彼女の前から聞こえて。その後ろでは4人組のイケメンハーレムが様々な感想を述べていたわ。うん、煩い。

 ハガネが土壁を壊そうとしている間に、彼女は周囲を見渡したわ。どうしてそんなことをしているのかって? それはね、あるモンスターを探そうとしていたからよ。

 様々な戦闘が行われているのを見ながら、彼女は目的のモンスターを見つけたわ。それと同時に制限時間が来たのか土壁に亀裂が入ってボロボロと崩れていったわ。


「さあ、今度は何を見せてくれるというのだ? それとも、もう品切れだというのか?」

「それじゃあ、見せてあげよう……かな!」

「むっ! き、貴様、逃げるというのかッ!?」


 試すような視線で彼女を見ていたハガネに対して、彼女は手拭い越しに不敵に笑うと……いきなり別の方向に駆け出したの。

 いきなりの行動に驚いたハガネだったけど、逃げ出したことに怒りを覚え、怒鳴りながら追いかけてきたわ。でも、彼女が逃げて行く方向に何が居るか即座に気づいたハガネは彼女を鼻で笑ったの。


「ふん、馬鹿なヤツだ! そこに居るのは亡き我が友ウーツから預かりし、アダマンタートルとオリハルコンタートル! 自ら逃げ道を塞ぐとはなっ!!」

「……生きてると、鉱石だったとしても効かないのか……だったら」

「立ち止まったか。ふん、つまらん。もう観念したのか! 貴様は歯応えのあるヤツだと思っていたのだが……ん?」

「いっ、っせーーのーっで!!」


 立ち止まった彼女は、ハガネに背を向けて2匹のタートルを見据えていたわ。

 一方でハガネは友の敵討ちのために人間の街を襲ったがそこで偶然出会えた強敵に歓喜したが、呆気無い幕切れに残念な想いを抱きつつ、槍を振り被ったけど……突然、彼女は叫び地面に手を叩きつけたの。

 地面を叩きつける寸前、彼女の体を循環していた魔力に『水』の属性を与え、2匹のタートルの中心に狙いを定めて魔力を地面に吐き出したわ。直後、地面から氷で出来た槍が無数に突き出されたの。

 攻撃を仕掛けた2匹のタートルは誰もが知る高硬度の鉱石の甲羅を持ったモンスターであるため、そんな魔法ではダメージは通るわけが無いとそれを見ていたハガネや周囲の人間は無駄なことだと思っていたわ。

 片方(ハガネ)は呆れ、もう片方(周囲の人間)は哀れみながら、氷の槍がタートルの腹で弾かれ砕かれて絶望するであろう彼女を見ていたわ。

 けれど、氷の槍はタートルの腹で砕けることはなく、それどころか豆腐に包丁を入れるかのようにスッと腹に入って行って2匹のタートルの甲羅を貫通させて串刺しにしたの。


「ば、馬鹿な……ッ!?」

「マジかよ……。あんなの絶対無理だぞ!?」

「にっ、人間業じゃねぇ!」

「こんなの絶対おかしいよ!?」


 口々に聞こえる声を無視して、彼女は息絶えた2匹のタートルにゆっくりと近づくと甲羅となっている世界最高の硬度を持つと言われている2種類の鉱石に手を当てた。ちなみに目の前で起きた光景が信じられないのか周囲はまったく動こうとしていなかったわ。

 そして、彼女が行った行動で周囲は完全に言葉を失ったの。あのハガネでさえもね。

 え、彼女はどんなことをしたかって? それはね、2種類の鉱石をまるで粘土を扱うみたいに千切りとるとその2種類を手の中で混ぜるように捏ねてから、剣ほどの長さに伸ばして再び固めたの。

 彼女の行った行動は、土属性の初級魔法である≪軟化≫と≪硬化≫だって周りも解ってるんだけど、それを行った鉱石が問題だったの。

 あとから聞いた話だと、この2つの魔法は覚えようと思えば誰だって覚えることが出来るけれど、鉱石を変化させるには硬度によって、使った者の『魔力』と『力』と『賢さ』が関わってくるらしいの。

 普通は石ころ、少し上手くて銅とか鉄、ベテランで鋼、そして一握りでミスリル。……だからこの2種類をいとも容易く変化させた彼女は異常すぎたの。

 まあ、それは兎も角として、これでようやく彼女にまともな武器が手に入ったわ。


「さあ、続きをしようか。最強の矛さん」

オリハルコンとアダマンタイトの複合素材って素敵ですよね。

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