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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
獣の章
148/496

14歳人間→17歳獣人

「「……………………」」


 着替え終えた彼女と、その服を着るように言ったアルトだったが……部屋の中に何とも言えない沈黙が生まれていた。

 片方(アルト)はどう言えば良いのか判らないが、目の前の事実に顔を赤らめており……。

 もう片方(彼女)はその反応にどう言えば良いのかという躊躇いと、同時に現在の自分の姿というのがまったく判らないという不安が心を満たしていたのじゃ。しかも、何か胸元がかなり締め付けられるようで少し苦しかったりしていたんじゃよ……チッ。

 何? 舌打ちが聞こえたじゃと? 気のせいじゃよ、気のせい。

 そして、気まずい雰囲気が室内を満たす中……突然入口の扉が景気良く叩かれ始めたのじゃ。


『おーい、フィンだぞー。ティアがごはん持ってきたよー! とっととあけろー』

『こら、フィーン。その言い方は失礼だと言ってるだろ?! すまない、アル、アリス。扉を開けてくれないか?』

「あ~……うん。良いかな、アリス?」

「えっと……どうぞ。諦めましたから……笑われる覚悟は出来ています」

「笑いはしないと思うよ……でも~……まあ、見てもらったほうが早いよね~……」


 物凄く言いよどみながら、アルトはそう言って入口の閂を抜いて扉を開けたんじゃ。

 そして、開けた扉から滑り込むようにして、フィーンが入り込んできた。

 それから少しして、パンのような物と良い匂いのする何かを盆に載せたティアが姿を現したんじゃが……彼女に気づいて、動きを止めたのじゃ。

 けれど、自身を何とか落ち着かせ……盆を作業台に漸く置くと、手を口元へと置いたんじゃ。


「ア、アリス……すご」

「うわー、あふれるえろすー?!」

「えっ!? それってどういう意味っ!!」


 クルクルと自分の周囲を飛び回るフィーンと、直球過ぎる感想にツッコミを入れていると……アルトが何かを詠唱するのが見えたんじゃ。

 短い詠唱を終えると、彼女の前へと何処からともなく水のカーテンが出てきたのじゃが……ジッと見ていると透き通っていた水のカーテンは徐々に向こう側を映さなくなり……その代わりに鏡のように彼女の立っている方向を映し出したんじゃ。≪水鏡≫という魔法らしいが、こういう自分の姿を見るときには便利らしいので、服屋は重宝している魔法だそうじゃが……習得はかなり難しいらしいんじゃ。彼女? 彼女は……戦闘系しか使えないみたいなんじゃよね。

 そして、自分の姿を映し出された途端、彼女は固まったんじゃ。


「……え、なにこれ?! かなりエロいんですけどっ!? もしかしてこれが今のアタシ!?」

「「「うん」」」


 思わずそうツッコミを入れてしまったが、当たり前じゃろうな……。ちなみに3人からの頷きも当たり前じゃ。

 だってのう、彼女は漸く今の姿を確認することが出来たんじゃが……それはもう、誰だこの妖艶美少女といった感じじゃったんじゃ。

 基本的な外見は、人間だった頃の彼女の姿が歳相応に成長した姿にキツネ耳と尻尾が付いているのじゃが……一部分だけ違っておったのじゃ。と言うか、胸元がきつかったのも頷けたと言うか、気づかない振りをしていたのを理解させられたのじゃ。

 どうなっておったかじゃと? まあ、一言で言うとじゃな……人間で14歳だったときの彼女の体型がお人形のような体型じゃったとすると……コン族で17歳の今の彼女の体型は……ボンキュボンじゃったんじゃ。と言うか、指差しておるならわかっておるんじゃろ? それはもう見事に、豊満じゃった。

 大げさに言うと、妖精が女神に進化したといった感じじゃな。これは、サリー並みのサイズじゃな……。

 で、今着ておるのはチャイナドレス何じゃが……深いスリットからスラリと覗く太股、キュッと引き締まった腰周り、そして……今にも生地を突き破らんばかりにギュウギュウと押されている胸元。

 それを見て、漸く彼女は彼女たちが言いよどんでいた理由がわかったのじゃった。

 自分でさえも、この外見に驚きと共に純粋に美人だと心から思ってしまったのじゃから、彼女たちも素直に美人とか言うに言えんかったんじゃろうな……。


「そいえば、ティアがご飯持ってきたって言うと、何か話があるからついでに持ってきたってことだよね~?」

「む、あ……ああ、実はだな。あたしがオークに捕まっていた所をアリスが助けてくれたということを父に告げると、礼を言いたいと言ってきたんだ」

「そっか~。まあ、可愛い娘が色々とひっどいことになる前に助かったら、父としては当然お礼を言いたくなるよね~」

「おいしい料理もいっぱーい! 期待しててー」


 彼女の周りをクルクルと回りながらフィーンが言い、彼女は進んで行く現状に正直引いたんじゃよ。

 そして、恐る恐る彼女たちへと問い掛けたんじゃ……。


「あ、あの……もしかして、もしかしなくても……この格好で会いに行けと言うんじゃないですよね……?」

「……だ、大丈夫だ。父は大らかな性格だから、色々とわかってくれる……」

「す、少しだけなら手直しするよ~? 胸元とスリット部分だけだけど~」

「さー行こう、すぐ行こうー♪」


 ティアは目を逸らし、アルトは気休めを言い、フィーンは気にせず彼女の背中をグイグイ押すという反応を見せ……会わないという選択肢は無いと言うことを彼女は理解するのじゃった。

 それから、彼女は少しだけ着ているチャイナドレスを脱いで、アルトに手早く調整してもらい……ティアとフィーンに連れられて、カーシの街の長の家へと向かうのじゃった。

ちょっと頭混乱してるかも、というか……毎日が暑すぎて茹ってます。


Q.このきょにゅうはにんげんにもどるとどうなりますか?

A.かみのみぞしる。

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