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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
獣の章
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樹中街

 アリスを囲んでいたエルフたちが離れて行くと同時に、ティアがフィーンたちを連れて近づき……申し訳なさそうに頭を下げると、周囲が漸く自分たちが失礼なことをしていたと言うことに気づいたらしく、何とも言えない空気に包まれてしまったのじゃ。

 所謂、どういえば良いのか判らない状況じゃな。


「すまなかったな、アリス。兵たちが失礼な真似を……」

「いえ、お気になさらずに……というよりも、ティアがどうして街から離れたあんな場所に2人で居たのかが気になるんだけど……?」

「うっ……そ、それはだな……その……だな……」


 質問の答えを物凄く言い辛そうにしながら、ティアは指と指をモジモジしつつ……彼女と目を合わせようとしなかったんじゃが……そんなのお構いなしって言うのが隣には居ったんじゃよ。

 その御構い無しは翅を羽ばたかせながら、彼女の周りをクルクルと飛んでおった。


「ティアはねー、この街に攻め込んできたオークが逃げたのを見て、「しょうきだー!」って言ってどぴゅーんって追いかけて行ったんだー。それにフィンもついて行ったんだけどー……あそこでフィンが捕まっちゃったんだよー……」

「フィ、フィーン! こらっ、何を勝手に言ってるんだ!! ……う、そ、その……だな……」

「……ああ、要するに向こう見ずに突っ走った結果、ついて来てくれたお友達が捕まって、自分もピンチになってしまったところをアタシが助けたってことか」

「…………はい。本当にありがとうございました……。以後、無闇矢鱈に突撃しません……」


 彼女が言った言葉に、ティア自身も周囲に申し訳ないと思っていたらしく……がっくりと項垂れて、周囲に謝ったのじゃ。

 それを驚いた表情で彼女たちを遠巻きに見ていたエルフがしていたけれど、どうして驚いているのかは後で聞くことにしようと考え、街に入ることを彼女は考え始めたんじゃ。


「えっと、落ち込んでいるところ悪いけど……そろそろ街の中に入りませんか? と言うよりも、樹にしか見えないけど……」

「そっ、そうだなっ! さあ、中に入ろうじゃないかアリス! お前たちも早く見張りに戻れ!!」

「「は――はっ!!」」

「わーい、まちよー。フィンは戻ってきたぞー!」


 自分の落ち度を隠すかのように、ティアはそう叫び彼女の手を引いて樹の根元の穴へと彼女を案内して行ったのじゃ。

 そして、フィーンはフィーンで翅をパタパタさせて、両手を広げながらくるくる回っておった。

 そんな2人に連れられて、穴の中を潜り……少しだけ歩くと、樹の独特の香りが鼻を擽り、明かりが見えてきたのを感じながら進んで行くとそこには街があったのじゃ。

 見えるじゃろ? 樹の中の螺旋状に作られた足場に広がる街並みを……。それを見て、漸く彼女も理解したのじゃ。この大きな樹の中をくり貫いた物が街になっているのだと……な。


「アリス、カーシの街にようこそ。そして改めて言わせてくれ、あたしはこの街の長の娘ティア。この度は危ないところを助けてくれてありがとう。本当に助かった」

「フィンはねー、妖精のフィンだよー。危ないところを助けてくれてほんとーにありがとー♪」

「そ、そうだったんですか……。だったら、危ないマネはあまりしないほうが良いんじゃ……いや、無理か。でも姫って呼ばれていなかったか? 長の娘とかだったら、お嬢様とか言われると思うんだけど?」


 またも猪突猛進で飛び掛ってしまうであろう未来を予測しながら、彼女は苦笑しつつ……疑問に思ったことを問い掛けてみたのじゃ。

 するとどうやら、集落と言うか街となっている樹は何本かあり、交流自体はあるがそれぞれが独立をしておりその樹ごとにエルフたちを統べる長が居り、そこで暮らすエルフたちは長を敬い、その子らを姫や若と呼んで慕っているとのことじゃ。……というか、娘が姫なら、息子は王子じゃと思うのじゃが……まあ、良いか。

 それを聞いて、彼女は納得しつつティアたちの後について歩いていたが、何処に行くのかまったく聞いていなかったのを思い出したんじゃよ。ウッカリさんじゃのぅ。


「ところで、何処に行こうとしてるんですか? 目的地とかあったりするようにも見えないけど?」

「ああ、とりあえず……助けてもらった礼を兼ねて、アリスの服を何とかしようと思ってな。……その、裸に近すぎる格好は色々とマズいと思うからな……」

「んー、フィンは別にいいと思うけどなー? だって、フィンと同じ感じだしー♪」

「フィーンの場合は小さいのと身体が光ってるから大丈夫だろうけど、アリスはあたしたちと同じ大きさだから……な」

「そっかー、だったらはやく行こー!」


 納得したのかフィーンがティアを飛び越えて、率先して上へと昇り始めていったのじゃ。そのあとに続くように、彼女たちは上へと歩くのじゃった。

 そして、目指すべきは服屋じゃな! 彼女はどんな服を着るのか楽しみじゃのう。

 お主はどうじゃ……って、良く判らんか。まあ、まだ子供じゃからなあ……。もう5年ぐらいしたら身嗜みも気にする年頃になるじゃろうな。そのときはどんな服を着るのか楽しみじゃわい。

 まあ、兎に角……今は彼女の新しい服がどうなるかじゃな!

 樹の上に、デカイ実があってそれを家にと言う案もあったりしたのですが、それは空を飛ぶモンスターにどうぞ襲ってください的になりそうな気がしたのでボツにしました。


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