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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
獣の章
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新しい器

 ふう、全部焼きあがったわね。でも、一応窯の熱が冷めるまでは居るわね。

 ……え? じゃあ、話をして欲しいって? んー……あまり面白い話じゃないけど、それで良いなら話すわよ?

 そ、それで良いんだ……。まあ、一応しばらくあんたの面倒を見てくれる面倒な人も話しやすいように、触りだけは話そうかな。

 それじゃあ、話すわね――。


 ぼんやりとした意識の中、彼女は真っ暗な空間に浮かんでいたの。

 浮かびながら、彼女の意識は自分はいったいどうしたのかと疑問に思っている部分と、この空間に覚えがある思っている部分に分かれていたわ。

 そして、彼女の覚えは正しかったらしく……陽炎のように揺らめきながら、虚空から一人の女性が姿を現したの。


「ありがとうございます。人の国のゆうしゃアリス……、あなたのお陰で獣人の国は滅びずに済みました……」


 在り来たりのお礼を言いながら、女性は彼女に向けて頭を下げたわ。

 そんな彼女……十中八九、獣人の国の神様だろうと思いながら見ると……その予想通りに女性には獣人特有の獣の耳と尻尾が生えていたの。

 ちなみにモフモフふんわりふっさふさで、耳と尻尾の形から……多分、キツネ型の獣人なんだろうなって彼女は思っていたわ。まあ、そう思っているのは彼の精神のほうで、彼女の精神はキツネとはどんな物かと彼の記憶を見て、愛らしさに胸をときめかせているのか、頬が少し熱い。

 そんな風に思っていると、獣人の神は悲しそうな表情で彼女を見たわ。


「ですが、あなたの人間としての器は砕け散り……、あなた自身の魂も輪廻の輪から外れかけています……」

『そうですか……でも、獣人の国が無事でよかったです……。他のやつには悪いけど、このまま消えるか……』

「いいえ、今あなたが消えたら、魔王を倒すことは本当に不可能になると、助けていただいたわしが断言します。ですから、あなたは生きなければなりません」

『そんな無茶苦茶な……。ですが、身体が無いなら……もとの世界に戻るのは無理ではないでしょうか?』


 何処か他人事のように、彼女は獣人の神様にそう言ったわ。事実、彼女はもう自分の中でやるべきことをやったと言う気分になっていたの。

 まあ、心残りといえば……サリーやフォードにちゃんと別れを言えなかったということぐらいよね。

 そう思っていると、獣人の神様はぶつぶつと何かを話し始めたわ。


「まあ、そうなんですが……でも、今は時間も無いですし、あなたは会うことが出来ないじゃないですか。ですので、助けてもらったわしがその恩に報いろうと思っています。良いですよね、答えは聞いてません」

『えーっとあれは……。多分だけど……人間の神と話しているってやつじゃないのか?』

「兎に角、ここはわしに任せて、あなたは頑張ってください。これが終わったら手伝いに行きますし、他のにも応援を頼みますので……はい、お待たせしました」

『た、大変そうですね……。何をしているのかはあまり聞かないようにするけど……』

「ありがとうございます。さて、現在はあなたの代わりとなる器をどうにかしないといけませんね……」


 そう呟いて、獣人の神は3つの光る球を取り出した。

 いったいなんだろうと思いながら、光る球を見ていると……それらが徐々に形を変えていったの。

 一つめの球は、ぴょこんとした耳と尖った前歯がチャームポイントのウサギ(・・・)のような動物。

 二つめの球は、凛々しく孤高の存在でありながらも、フサフサとした毛皮に包まれたオオカミ(・・・・)のような動物。

 三つめの球は、獣人の神と同じであり、何処となく妖艶な雰囲気を纏っているキツネ(・・・)のような動物。

 そんな3体の動物に姿を変えて、彼女の前に浮かんだの。


『これは? ま、まさか……』

「人間の国のゆうしゃアリス。この度の礼として、あなたにわしが持つ器のひとつを上げましょう。……ちなみに身体のほうは選んでから、しばらく獣人の身体へと作りかえるので時間が掛かると思います。ですので、動物のまま飛び出ることは無いので安心してください」

『そ、そうですか……。よ、よかった……』

「ですので、安心して決めてください」


 そう言って、獣人の神は彼女が選ぶまで目を閉じて待ち始めたわ。

 そして、彼女はじっくりと3匹を見比べて、どれが良いかと考えていたわ。でも、心のどこかで……あぁ、これって昔ゲームでやったオープニングに3匹のどれかを選ぶみたいな感じだよなぁ……って思っていたわ。

 ウサギは可愛くて捨てがたい……けれど、それを言ったら可愛さを捨ててセクシーさを求めてキツネを選ぶのも良いかも知れない。けれど、キツネは体力とか色々大丈夫なのかと思うとオオカミも捨てがたかったりする……が、まあステータスとかは影響を受けるとは言い難いかも知れなかった。

 だから悩む……けれど、どれが良いかとかは難しいので、少しだけ神頼みをしながら……彼女は自分が宿ることになる器を選んだわ。


 ――っと、窯も冷えたし……そろそろ母さんは出かけてくるわね。

 え? 話の続きはまだかって? んー……とりあえず、一度お昼寝してきなさい。そうしたら続きを語ってくれる人が来てくれるからさ。

 アタシ? アタシはまあ……ね。でも、あの面倒な人のほうがわかり易いと思うから。それじゃあ、行って来るわね。


 それじゃあねー。……って、薄情ねあの子……まあ、とりあえず、お願いしに行くとしますか。

 あの子はどんな感じにあの面倒な人と話すか見物ね。……害が無ければ良いんだけどね。

獣人編プロローグって感じです。


 どの器を選んだかは、投票かサイコロ様にお願いしようと思っています。

 良ければ、感想に『ウサギ・オオカミ・キツネ』のどれかと簡単な感想を書いて頂ければと思っております。

 どうぞよろしくお願いします。


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