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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
人の章
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イケメン死すべし

 散々襲い掛かってくるモンスターを蹴散らし、ようやく西門に辿り着くと酷い有様だったの。

 多くの冒険者が傷ついて倒れたり、苦悶の表情を浮かべて死んでいたり、数人掛かりでモンスターを倒そうと武器を振るっていたりしていたわ。

 彼女が変装をしている間に西門に辿り着いたのかギルドマスターの姿も見え、彼は巨大な戦斧を振るってオオトカゲの姿をしたモンスターを相手していたわ。でも、一対一なら有利だと思うけど、他のモンスターも相手にしてるからか戦いに素人な彼女が見たとしても圧倒的に不利に見えたわ。

 そして、モンスターと冒険者、衛兵たちが戦う中心で激しい戦闘が繰り広げられていたの。

 人型のドラゴンの姿をしたモンスター……それが【最強の矛】ハガネなのだろうと彼女は思ったわ。そして、それと相対するのは4人組のパーティー。

 小刀を持った盗賊みたいな服装をした少女がハガネを翻弄させ、そこへ後方にいる魔法使いの美女が火の玉をハガネに放って皮膚を焦がして行く、そして僧侶であろう巨乳幼女が掛けた補助魔法を受けて強化された青年が勇猛果敢にハガネに剣を振り下ろしていた。

 ちなみに魔法使いの火の玉は彼女が使ったものよりも遥かに弱いうえに、詠唱も行っていたんだ。まあ……そっちのほうが普通なんだろうけどね。

 そして多分だけど、これがあの4人の必勝法なのだろう。そう彼女は考えながら、あの4人組って確か城で擦れ違った4人組だなと思っていたわ。

 そして4人は勝ったと勝利を確信したみたいだけど、現実は違っていたの。


「ふんっ、王都のゆうしゃの実力はこの程度か!」

「そ、そんな! ぼくのウィニングソードが効かない!? だったら、もういち――うわっ!?」

「ライト様!」「ライくん!」「ライト!」

「弱い、弱すぎる! どいつだ! どいつが、ウーツを殺したぁぁぁぁ!!」


 イケメンはライトという名前らしいけど、それはどうでも良いから彼女は聞き流したけど、どう見てもハーレムパーティーだということに彼女の彼だった本能が激しく舌打ちをしたくなったわ。イケメン死すべしってね!

 ハーレムって何かって? ……うん、あんたは絶対自分だけを愛してくれる人を好きになりなさいよ。アタシ? アタシは母さんだから好きの意味が違うよ。

 で、イケメンがハガネの一撃を受けて地面に叩き付けられたのを見て、ガッツポーズを取っていたわ。よくやったハガネと思いながらね。

 地面に叩き付けられて、すぐに起き上がれそうに無いイケメンを怒りに任せて殺そうと、ハガネは武器である自身の体ほどのサイズの槍を振り上げたわ。

 イケメンの仲間たちも、イケメンが死ぬのを見たくないのかロリ僧侶と魔法使いは目を覆って、盗賊少女は倒れたイケメンを助けようと駆け寄ろうとしていたけど……無残にも槍は振り下ろされたの。

 そのまま……邪魔が入らなかったら、イケメンは死んでたんだけどね。まあ、助かったんだけどね。


 激しい突風が巻き起こった瞬間、周囲に甲高い金属音が鳴り響いた。

 金属音の発生源は【最強の矛】ハガネとイケメンの間だった。本当ならばイケメンの体を貫くはずだった槍は、何処にでも売っている剣と鍔迫り合いをしていたわ。

 そして、その剣を握る者は……謎な格好をしていたの。ベッドの上に掛けるシーツを頭から被って、隙間から見える顔は口元を手拭いで隠しているのだから。

 突如として現れたその人物に皆、視線が釘付けとなるがギルドマスターだけ何かに気づいたような顔をして、すぐに微妙そうな表情をして、モンスターの隙を窺うことに集中し始めているのが見えたの。


「う……だ、誰だ。お前は……」

「煩い。黙ってろ、というかイケメンは死んで来い」

「な、は――ごはっ!?」

「ラ、ライトォ!? あ、あんた何す――」

「邪魔だから、下がってろ。今から起こることに巻き込まれても知らないからな」

「……ほう、手加減した一撃だったが、それを受け止めるか……面白い!」


 イケメンを蹴り上げ、後ろに飛ばすと盗賊少女が彼女に向かって怒鳴りつけるが、彼女は知ったことではない。むしろ、イケメンを蹴って清々しい気分だったりしたわ。

 それに対して、槍を受け止められたハガネは興味深そうに彼女を見て、口角を吊り上げて笑ったの。

 その直後、ハガネは槍を素早く引いてから突き出してきたわ。一瞬の攻撃に対して咄嗟に剣を構えた彼女の本能に拍手を上げたいと思いつつ、突き出した槍を剣の腹で受け止めたわ。それに対して反撃を行おうとしたのだけど、ハガネの槍はすぐに自らの手元に引き戻され、再び突き出され、何とか受け止めて防ぐ。

 だけど何回も強靭な攻撃に耐えられるほど、大量生産で作られた剣はよく作られていなくって……パキンと音を立てて、剣は折れてしまったの。


「この技を受け止めるか! しかし、貴様の剣は折れた! さあ、今度は無手だ。どうする!?」

「くっ、キミ――に、逃げるんだ!」


 ハガネが槍を引いて、必殺の一撃を放とうとする中、盗賊少女に後ろに連れて行かれたイケメンの声が聞こえたわ。

 ん? 無防備になってしまったけど、彼女は大丈夫なのかって? まあ、それは続きを聞いてからのお楽しみってことで……っと、聞くのに夢中で、食べるのが止まってるよ。

 ほら、早く食べてお昼は外に散歩にでも行こうか。え? 話の続きを聞きたいって?

 んー、駄目だよ、楽しみはあとに取っておかないと。次は寝る前に話してあげるよ。さ、食べた食べた!

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