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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
人の章
139/496

番外:ライトの冒険~仲間たち~

前半、ライト組

後半、サリー&フォードとなっています。

 ドブが連れ去られていくのを呆然と見送ったライトたちだったが、静かになった室内でヒカリの明るい声が響き渡った。


「あ~っ! すっきりしたっ! ありがとね、ライトッ!」

「成長したわね、ライくん。お姉ちゃん、嬉しいわ♪」

「あの、あの……シターを信じてくれて、その……ありがとうございました。ライト様……っ」


 ヒカリの声を皮切りに、ルーナもシターもライトに礼を言って……その言葉に彼は照れくさそうに頬を赤くしたが、すぐに姿勢を正し……3人に頭を下げた。

 いきなりのことで彼女たちは驚いたが、ライトは頭を上げようとはしなかった。


「みんな……ごめんっ!」

「え? ラ、ライト?」

「ライくん……どうしたの?」

「ライト様?」


 そして、心配そうにする彼女たちに、ライトが頭を下げた理由を口にした。


「あのとき、まったくキミのことを信じなくて……ごめん、ヒカリ。そして、何か言いたそうだったのに聞こうとしなくて……ごめん、ルーナ。最後に、嫌なことは忘れたら良いって簡単に考えて……ごめん、シター」

「ライト……」

「ライくん……」

「ライト様……」

「許してくれなんて……言える立場じゃないから、ぼくは言わない。だから、こんなぼくについていけないって思っていたら、ぼくを見捨てても構わない……だけど今の今まで仲間だって言っておきながら、キミたちを心の底から信じていなかったことを許してくれ……本当に、ごめん!」


 そう言ったライトは、3人から叩かれても構わないと思っていた……けれど、彼に届いたのは――。


「何言ってるんだよ、ライト。ボクたちはライトの仲間なんだから、見捨てるわけがないじゃないっ!」

「そうよ、ライくん。もしもまたこんなことが起きたら、今度は私も叱りつけることを考えるわ♪」

「ラ、ライト様。人間は幾つも困難に立ち向かうんですから、ライト様が困ったときは今度はシターたちが助けますっ」

「みんな……あ、ありがとう……」


 ライトは顔を上げて、3人の顔を見て……もう一度頭を下げた。

 そんな彼を、ルーナが優しく抱き締めて胸元に顔を埋めさせ……それを見たヒカリが怒り、シターは恥かしそうに顔を赤らめていたのだった。


 ●


 そして、一方……隣の部屋ではサリーとフォードがベッドに寝かされていた。

 身体は死んだように眠っているのだが、魂というか……精神というか心といったものは起きているようで、真っ白い不思議な空間に2人は立っていた。

 上を見ても下を見ても左を見ても右を見ても、真っ白い……本当に不思議な空間だった。そんな空間に、フォードとサリーは立っていた。

 全てが真っ白い空間のために、自分たちは今寝ているのか、それとも起きているのか、はたまた逆さに立っているのか本当にわからなかった。


「サ、サリーさん……これって?」

「ワ……ワタシにも良くわかりません。ですが、これは多分……」


 誰がこれを行ったのかをサリーが口にしようとした瞬間、2人の目の前にちょこんと現れた物が居た。

 それを見たサリーは瞳を輝かせ、フォードは目を白黒させた。そして、2人は同時にそれの名前を口にした。


「こんにちわ~、2人とも~♪」

「天使師匠ッ!!」「ア、アリスゥッ!?」


 そう言った瞬間、サリーはチビアリスへと飛び掛り……フォードはサリーが口にした突拍子も無い呼び名に驚いた顔をしていた。

 そして、しばらく呆然とチビアリスを愛でまくるサリーを見ていたフォードだったが、ハッと正気を取り戻した。


「ちょ、ちょっと待ってくれよっ! サリーさん、この小さいアリスを知ってるのか!?」

「小さいアリスじゃなくて、天使のように可愛い師匠。すなわち天使師匠ですっ! わかりましたかフォードくん!!」

「お、落ち着いてくださいサリーさん! 何か色々と興奮し過ぎているからか、女性にあるまじき顔をしかけていますよっ!! それに、小さいアリスも苦しがっているように見えますしっ!」

「はっ!! す、すみません天使師匠!」


 フォードの説得(?)により、漸く正気に戻ったサリーは小さいアリスから距離を取ると――土下座をして謝った。DOGEZAである。大人が人形サイズの知り合いに土下座である。

 それを、フォードは何ともいえない表情で見つめ、小さいアリスは軽く息を整え……優しい瞳でサリーを見てきた。

 その表情は、まさしく天使のようであり……人形好きや、少女好きはきっとこれだけで腹が満たされるだろう。サリー? 彼女はアリコンです。


「気にしないでください~、サリー様。アタシは気にしていませんので~……それと、モンスベアー退治お疲れ様でした~。無事に倒せたようで何よりです~」

「あ、ありがとうございます天使師匠! それもこれも、天使師匠が力を貸してくれたからです!」

「力を――って、あの光か! あれって、この小さいアリ――て、天使アリスが出していた物だったのか?!」


 小さいアリスと言おうとした瞬間、サリーから突き刺さるような殺気を感じ、咄嗟にフォードは天使アリスと呼ぶことにしたが、それでも良かったらしく……首筋まで来ていた殺気は遠ざかっていった。

 そんなホッと息を吐くフォードへと、小さいアリ――天使アリスは頷いた。


「はい~。アタシの本体(オリジナル)が残していてくれた魔力を使いました。ですが~、あと少し遅かったら危なかったですよ~」

「良くわからないけど……、天使アリスはアリスじゃないんだな?」

「はい~。詳しくは、目覚めてからサリー様に聞いてください~。アタシの時間ももう余り無いので~……」

「え……」


 にこやかに天使アリスはそう言ったが、それを聞いたサリーはこの世の終わりみたいな顔をしていた。

 事実、この空間から元の世界に戻れば……そこにはきっとアリスが居ない世界しか残っていないのだ……。

 そのことを理解しているからか、フォードは何も言えず……天使アリスは、少しだけ困った顔をしていた。


「ごめんなさい。サリー様、でもアタシにも時間が無いので……先にフォード様に言うことを言っておきますね~」

「え、お……俺? な、何だよ……?」

「フォード様は、<スラッシュ>を極め続けてください~。そうすれば、何時かは全てを断てますので~」

「は……はあ……。良くわからないけど、頑張ります……?」

「そして……サリー様は~、覚えた『雷』の属性を上手く使いこなしてくださいね~」


 そう天使アリスが言うのだが……サリーは目に涙を浮かべて、今にも泣きそうになっていた。

 そんな彼女の視線の先では、天使アリスの身体が足元から徐々に消え始めていた。

 彼女が言う時間が無い。とは、この空間に居られる時間であると同時に、魔力の欠片がアリスの姿を取ることが出来る時間の限界でもあった。

 そして、これが最後であると解っているからか、天使アリスは2人に向けて頭を下げた。


「サリー様、フォード様。ほんの短い間でしたが、お話出来て嬉しかったです~」

「ああ、……俺も、嬉しかった。と思う……」

「天……師匠……」

「そんな顔をしないでください、サリー様。あなたはちょっと興奮しすぎて、怖いって言うのがらしいって思うんですから~。それに、そういう態度は~アタシの本体(オリジナル)にしてください~」

「そんな……何気に酷いことを言ってますよ師しょ――え?」


 泣いていたサリーだったが、何か聞き捨てなら無い言葉が聞こえた気がして、ピクリと止まった。

 そして、同じく疑問に思ったのかフォードも2人のほうを向いた。


「あ、あの……天使師匠? 何だかその言いかただと……まるで、師匠が生きてるように聞こえるのですが?」

「え、言ってませんでしたか~? オリジナルで、アタシの本体であるアリスは生きていますよ~?」

「「…………え?」」

「場所はどこかはわかりませんが~。アリスの魔力であるアタシには生きてるって感知していますよ~」

「えぇ?! ちょ、ちょっと待ってください天使師匠! 師匠が、師匠が本当に生きてるんですかっ!?」

「ちょっ! 落ち着いてくださいサリーさん! でも、本当にアリスが生きて……?!」


 今にも天使アリスに掴みかかろうとするサリーを落ち着かせながらも、フォードも興奮を隠し切れそうに無かった。

 生きている。アリスは生きている。その事実が、2人の心に突き刺さっていた後悔という棘を抜いて行くように感じられた。

 そして、その詳細を知っているであろう目の前の天使アリスをじっと見つめると……。


「色々と話をしたいのですが、もう限界みたいです~っ! ごめんなさい、サリー様フォード様……でも、アリスとはきっとまた会えますよ~。だから、信じて自分たちを鍛えてください~」

「まっ、待ってくださ――」

「うわっ! 眩しっ!!」


 手を伸ばしたサリーと、フォードの目の前が光り輝き、2人が顔を覆った瞬間――周囲は暗くなり、跳ね起きるようにして2人はベッドから起き上がった。

 驚きながら、自分たちはベッドで寝ていたのだと理解し……そして、頷きあった。


「フォードくん……、師匠は――」

「サリーさん……、アリスのヤツは――」


「「――生きてる」」


 そう言って、2人はもう一度頷き……何時か再び会えることを心から願うのだった。

とりあえず、これで番外編終了です。

次回というか、明日から本編を再開しようと思っています。

楽しんでもらえたら、嬉しいです。

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