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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
人の章
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番外:ライトの冒険~AFURO~

 立ち上がり、咆哮と共にパチパチとした何かを身体から発したサリーが何かを呟いた瞬間、彼らの視線から一瞬にして消えた。

 いったい何処に消えたのかと驚きながら周囲を見渡すと、サリーは一瞬でモンスベアーの前へと辿り着き……腕を下から上に振るった瞬間、肉が焼け焦げる臭いと共にモンスベアーの腕が裂けた。

 何が起こったのかと驚きながら、彼らはそれを見ていると痛みからかそれとも別の理由からか、モンスベアーが妙な感じに鳴き声を上げた。


「もう少し――速度――もう一本……ありました」


 サリーが何かを呟いたと思った直後、狂ったようにモンスベアーが両腕を滅茶苦茶に振り回した。狙って行っていないために当たるかはわからないけれど、何処から攻撃してくるかもわからないため、ある意味で危険な攻撃であった。

 現在のサリーに何が起きているのかはわからないが、これは危険であると考えたフォードはサリーに「危ない」と叫ぼうとしたが、今度は何とも無い動作でサリーはモンスベアーの背後へと移るのが見えた。それを見ていたフォード・ハツカ・ライトは自分には絶対に出来ないと心から思った。

 そして、背後では何が起きているのかはわからないが……突然モンスベアーが痛みを訴えるように叫び声を上げ、そして肉が焼け焦げる音と共にモンスベアーの背後に血の煙が上がり始めているのを見て、もしかしたら背後から攻撃してるのかもと思い始めていると、血の煙からパチパチという音が聞こえ始めているのにフォードは気づいた。


「なんだ……あれ?」

「あれとは何だ? フォード殿」

「いえ、何だかあの赤い煙からパチパチって音がするんですが……」

「言われてみると……音がするな。パチパチと……」


 そう言っていた瞬間、彼らの目の前へと血の煙を突き破るようにしてサリーが姿を現した。直後、モンスベアーの右腕が斬りおとされた。

 何が起きたのかと驚きながら、サリーを見た瞬間――再び彼女の姿は掻き消えた。直後、モンスベアーの左腕が斬りおとされ……これはサリーが行っていることだと理解した瞬間、再び彼女は姿を表し……モンスベアーの左足が斬りおとされ、またも消え――モンスベアーの右足が斬りおとされた。

 そして、彼女がもう一度姿を現した瞬間――モンスベアーの首が斬りおとされた。その瞬間、激しい音が周囲に響き渡った。いったい何が起きたのかは彼らはわからなかったが、唯一ライトだけは何が起きたのかは……ゆうしゃとしての補正なのか見ることが出来た。

 モンスベアーを囲むように溜まっていた血煙が一瞬膨れ上がったと思った瞬間、中が眩く光ったのだ。


(あれは……神の光? それとも、気のせいなのか……?)


 そう思いながら、ライトは燃え上がって行く五体がばらばらになったモンスベアーが燃え始めるのを見ているとサリーが呟くのをこの耳で聞いた。


「これは……<サンダーボルト>でしょうか?」

「サンダー……ボルト?」


 一人で呟いたであろう言葉を、ライトは反芻するように呟いていると……突然、サリーが糸が切れた人形のようにばたりと倒れた。いったい何が起こったのかと彼らは驚いた様子で見ていたが、逸早くハッとしたフォードがサリーへと近づいて行った。

 それを見ていた彼らは、何だか少しだけ嫌な予感を感じたが止めないことにした。


「サ、サリーさん! 大丈夫ですかっ――かかかかかかかかっっ!!? かかかかかかっ!!?」

「フォ、フォード殿っ!? い、いったい何が起きてるのだっ!!」


 サリーを抱き上げた瞬間、フォードの身体がガクガク震え始め……それを見ていたハツカは驚きながら、その光景を見ていた。ちなみにこの場にアリスが居たら、きっと漫画とかアニメでよくある感電して骸骨見せるような状況だろうなと考えていたことだろう。事実その通りではあるが……。

 それからしばらくして、プスプスと煙を上げながら……アフロヘアーになったフォードと、体内に溜まっていた電気が抜け切ったらしきサリーがぐったりとしていた。

 そして、2人がぐったりしている代わりに、目を覚ます者が居た。


「んっ……んんっ……」

「ヒカリ? 目が覚めたのかい?」

「ライ、ト……? あれ……? まだ、夢見てる?」

「ううん、夢じゃないよ。夢じゃないから、間に合って良かったって思うよ」

「……あ、そうだ。ボク、あのモンスターに投げ飛ばされて――って、あれ? モンスターは? それに、ボクの怪我は?!」


 寝惚けていたヒカリだったが、ようやく頭がはっきりしてきたらしく、自分の傷を見るとそこには傷ひとつ無く、更に恐ろしいモンスターは火に包まれていた。

 それを見て、サリーはホッと安堵し……そして、自分たちにとって大事なことを思い出し、顔を曇らせた。


「そうだ、ライト……ごめん、忘却草……全部枯れていたんだ」

「みたいだね……でも、それはぼくにとっての逃げだったのかも知れないよ」

「え? それって……」

「まだ答えは完璧に見つかってないけど、シターのためにぼくが出来ることをやってみるよ。だから、ヒカリ……見ててくれるかな?」

「う、うんっ! 頑張って、シターを目覚めさせようねライト!」


 頼りにされているのが嬉しくて、ヒカリは満面の笑みを浮かべて頷き……彼女の笑顔に応えるべく、ライトは考え始めていた。

 そんな中……ルーナが凄く申し訳無さそうに手を挙げてきた。


「あ、あのー……ライくん、ヒカリちゃん。良い雰囲気で申し訳ないんだけどね……その……忘却草、何だかあの光の影響か、所々に生えているんだけど……花付きで」

「「え……?」」


 そう言われて、忘却草が枯れていた場所を見ると……小さな白い花をつけた草が所々に生えていたのだった。

多分、次回か次々回で番外は終わる予定です。

あと、初めて200ポイント到達しました。ありがとうございます。

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