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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
人の章
136/496

番外:ライトの冒険~電光石火~

※サリー視点で話が進んでいます。

 熱い、身体が熱い……。

 解き放て、解き放てと身体が、心が訴えかけているみたいに、ワタシの中で何かが荒れ狂っている。

 もしかして、これが天使師匠が言っていた扉を開けた結果なのでしょうか?

 そう思いながら、ワタシは無意識に荒れ狂っている何かに蓋をしようとし――。


『蓋をせずに、その力を解き放ってください。そのための扉はもうサリー様の中にあるのですから~』


 のほほんとした天使師匠の声が聞こえたと思った瞬間、その言葉に逆らうこと無く……ワタシは荒れ狂う力を解き放ちました。

 直後、口から咆哮が洩れ……身体中を駆け巡るように溢れ出た力が周囲に響き渡りました。

 神の光。師匠があのとき、使っていた能力……この力が身体からバチバチと音を爆ぜながら、紫色の光を放ってワタシの身体を包みます。

 そして、神の光がワタシを包んだ瞬間、この力……雷がどんなものであるかワタシは理解しました。


「ありがとうございます、天使師匠……。一瞬で片をつけます」


 ワタシは静かにそう呟くと一気に駆け出しました。

 そのとき、周りを見ると……ゆっくりとした動作でフォード君やハツカさん、ルーナさんたちが驚いた顔をしているのが見えました。

 いえ、ゆっくりではないのかも知れません……多分、ワタシが早くなっているのでしょう。

 そう思っていると、ほんの一瞬でモンスベアーの前へと辿り着き――、素早く片手に握っていた短剣を上へと振り上げました。けれど、身体がまだこの速度に慣れていないのか、思っていた場所と違う場所を短剣は切り裂いていきました。

 雷を纏った短剣がモンスベアーの腕を裂いて行くと、肉が焼け焦げる臭いが周囲に漂っていきます。そして、痛みと放電による痺れにモンスベアーの口からは声が洩れて行きました。


『GAGAGAAGAGAGGAGAGAGAGAGAGAGA!!?』

「もう少し、速度に慣れないといけませんね……それと、もう一本は……ありました」


 目覚めた能力を自分の物にすべく、ワタシは頭を必死に動かし……何時の間にか無くなっていたもう一本の短剣を探します。すると、もう一本の短剣は何故かモンスベアーの背中に突き刺さっていました。

 どうしてそんな所に刺さっているのか疑問に思いますが、怒りに身を任せながらモンスベアーは両腕をブンブンと振り回し……手当たり次第に周囲を襲っていきます。

 その合間をすり抜け、モンスベアーの背後に回ると……背中に突き刺さった短剣を掴み、もう一本の短剣を背中に突き刺しました!


『GGGGGGGGGGRRRRRRRRRRRRRRRAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA???!!!』


 何時の間にか背後に回られていたことに驚いたのか、モンスベアーの耳障りな悲鳴が聞こえる中……ワタシは突き刺した短剣を、上と下に振り上げて下ろした。

 ジュワッと血が沸騰するような音が聞こえながら、ワタシはそのまま短剣を使ってモンスベアーを切り裂いていった。

 右手に握った短剣を上に上げると、左手に握った短剣を下に下ろし……。右に動かすと、もう片方を左に動かし……。

 上下右左下上左右上下右左下上左右上下右左下上左右上下右左下上左右上下右左下上左右、腕が痛み始める中で素早く短剣を振るったためか……周囲に血煙が漂い始めているのにようやく気づきました。

 そして、血煙がワタシの放電する電気に反応しているのかパチパチと音を立て始めています。


『そろそろ時間ですので、早く片を付けてくださいサリー様~』


 天使師匠の声が何処かから聞こえ、ワタシは最後の一撃を放つために短剣を構えました。

 対するモンスベアーは背中をズタズタに切り裂かれ、虚ろな目で荒い息をぜえぜえと吐いており、死にそうになっているけれど体内の瘴気が傷を癒そうとしているのか死ぬに死ねないように見えます。

 そんなモンスベアーにワタシは慈悲は無く、一切の容赦が無いような勢いで突っ込んで行きました。

 師匠が作った短剣の性能を信じ、師匠のお陰で目覚めた能力を最大限に使いながら、ワタシは自分が今出せる最高速度でモンスベアーを通り抜けると同時に右腕を斬りおとし、再び駆け抜けて左腕を、また駆け抜けて左足を、右足を、その感覚が徐々に短くなり、最後に首を切り落とした瞬間――ヴァチッ!! と血煙に雷が奔り、モンスベアーの肉体が火に包まれていきました。


「これは……<サンダーボルト>でしょうか?」


 燃えて行くモンスベアーを見ていると、光が徐々に収まって行くのに気づき……それと同時に、ワタシの意識は止みに飲まれて行きました。

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