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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
人の章
131/496

番外:ライトの冒険~災害~

 一番初めにその存在に気づいたのは、3人の中でもっとも耳の良いサリーだった。

 荒い息が聞こえ、ズシンズシンという地を踏み締める音が聞こえ……周囲を見回すとギラギラと光る赤い双眸が自分たちを見ているのに気が付いた。

 サリーは気が付いていたが、ヒカリとルーナの2人は気づいていないのか……まだ忘却草が無いかと真剣に探しているのか、その存在に気づいていないようだった。

 サリーは暗がりに見える双眸と地面を這うように動く2人を見比べながら、どうするべきかと考えた。考えていたのだが……見比べていた瞬間、双眸と目が合ってしまった。

 瞬間、全身の毛が逆立つような感覚に襲われ――自分たちを狙っているモンスターの力量を自覚してしまった。だから、2人に早く下がってもらうべく、震える声でサリーは2人に呼びかけた。


「ふ、ふたりとも……はやく、こっちに戻って……」

「え? な、何言ってるんだよ! ボクたちは忘却草を探さないと――」

「早くっ!!」

「――っ!? わ、分かったよ……って、え? 何この地響き?」

「ヒ、ヒカリちゃん……あれ……」


 事情がわかっていなかったヒカリは怒ったが、近づいてくる音にようやく気づき……首を傾げたが、それよりも先にルーナが後ろからの存在に気づき、震えた声で後ろを指差した。

 周囲に生える木々の半分ほどの大きさから覗く双眸は徐々に近づき……、ズシンズシンと地響きを立てながら、姿を現した……。

 毛むくじゃらの胴体に、岩をも砕けるであろう太い足、人なんて簡単に切り裂くであろう鋭い爪を持つ太い腕、そして長い鼻と両頬から突き出している鋭く反り立った数本の角。

 その姿は熊のようであり、象のようでもあった……。


「モ、モンス……ベアー……」


 姿を現したモンスターの正体にようやく気づいたサリーは、震えるようにその名前を口にした。

 モンスベアー、それは獣人の国では一種の災害として認定されているモンスターの一種であった。

 普段は森の奥深くに住んでいるのだが、たまに餌を求めて森から出ると周辺の村々を襲い、そこに住む村人を残らず食べて行くことで有名なモンスターであった。

 そして、その足は本気を出せば大地を揺るがし、その爪は重厚な鉄の盾を簡単に切り裂き、その角は何名もの兵を貫いても止まることを知らなかった。

 だから……もしもモンスベアーと出くわしたら、諦めて死を受け入れろと言われるほどの物だった。

 そんなモンスターにほぼ間近で睨まれたヒカリとルーナは目の前のそれから一歩も動くことが出来なくなっていた。

 そして、2人へとモンスベアーは腕を振り被り……その爪で命を刈り取ろうとしていた。


「ッ!! ば、馬鹿! 何ボーっとしているんですかっ!!?」

「! ご、ごめんなさいっ!! ヒカリちゃん、しっかり! 気をしっかり持って!!」


 何とか自分を取り戻したサリーの叫び声で、ルーナはハッとしすぐに放心しているヒカリを揺すりながら後ろに向かって移動を開始した。

 けれどモンスベアーにとって、ただの食料が喚いているだけの行動であり、すぐに動かなくなるのだから問題は無かった。

 だからモンスベアーは振り被った腕をそのまま振り下ろした。その瞬間、ヒカリとルーナの運命は決まったかに見えた。

 だが、その間にサリーが入らなければ……の話である。


「ッ!!? ?!!? くぅっ……! は、早く下がれって、言ってるのが……聞こえないんですかっ!」

「え、あ……あ、あれ……? え、なにこれ、え? えぇ??」

「ヒ、ヒカリちゃん。ようやく正気に戻ったわね。ほら、早く下がりましょう!!」

「ル……ルーナ姉? って、ひゃっ!?」


 放心していたヒカリが元に戻ったのか一気に五月蝿くなったが、サリーにはそれに文句を言う余裕なんてまったく無かった。ただただ、現在自分がどう動くべきかを考えているからだ。

 短剣を×の字に構えて、振り下ろされたモンスベアーの腕を受け止めたが……その重量に押し潰されそうになっていた。

 本当なら、後ろにでも回って首にナイフを突き立てることが出来ればよかったのだが、そうした場合……ヒカリとルーナは無残にモンスベアーの餌食となっていたかも知れない。というか、なっていただろう。


(最初で最後の絶好のチャンスを自ら潰して……どうする? どうします? 師匠なら、この場合……うん、力ですべて解決しそうですよね……。でも、ワタシには師匠ほどの力は無いですし……いったいどうす――え、いま軽く……――ッ!!?)

『GGGGGRRRRRRRRRRROOOOOOOOOOOOOOOOO!!』

「か、――――はぁ……!?」


 腕に掛かる重圧が少し軽くなったと思った瞬間、上を向くと――振り下ろされていた腕は両手ではなく片手となっており、それに気づいた直後、風を切る音がサリーの耳に届いた。

 瞬間、横からまるで丸太で殴りつけられたような衝撃が走り、防御することも回避することも出来ず……サリーの身体は森の木へと吹き飛ばされた。

 意識が刈り取られそうになるが、横っ腹から来る焼けるような痛みが気絶をさせなかった。

 いったい何が起きたのかと、激痛の走る身体を何とか動かしてみると……モンスベアーが近づいてくるのが見えた。

 近づいてくるモンスベアーを見て、自分はモンスベアーの一撃を貰ったのかとサリーは理解したのだった……。

マンモス+クマ(ベアー)=モンスベ……あ、ならないや(笑

まあ、モンスターベアーってことで……。

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