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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
人の章
129/496

番外:ライトの冒険~同行~

 ホースを走らせながら、目的地に向かって移動を開始していたサリーの元へと、高速で駆けてくる2頭のゼブラホースが近づいてくるのに彼女は気付いた。

 いったい誰かと振り返ると、ゼブラホースにはつい先程自分を睨みつけていた少女ともう一人……人間の国の王都で見た覚えがある女性が乗っていた。

 少女のほうが何かを叫んでるのに気づき、サリーはこのまま無視していこうかと思ったが、ホースに止まるように指示してその場で2人がやってくるのを待っていた。


「はぁ……はぁ……あ、あんた……速過ぎ……」

「……いったい何の用? 大事なゆうしゃ様をボコボコにした腹癒せ?」

「っ!! は、腹立つ~~っ! 違うよ! いや、ライトをボコボコにしたのは腹が立つけど……そうじゃなくてっ!」

「ヒカリちゃん、ちょっと落ち着いて。……やっぱり。サリーさん、わたしのこと覚えてる?」


 顔を赤くして怒るヒカリを落ち着かせながら、ルーナが前に出てサリーを見て……納得したように頷き、そう言ってきた。

 それに対して、サリーも久しぶりに会った人物だからか、ぺこりとお辞儀をして挨拶をする。


「久しぶりです。ルーナさん、大分前の冒険者ギルドでの依頼を受付して以来ですね」

「覚えていてくれたのね。本当、久しぶり……獣人だったのね」

「冒険者の顔と名前を覚えておくのは大事なことですから。それと……ワタシはハーフですからね」

「そうだったの……。色々大変みたいね……っと、さっきはライくんが失礼なことをしたみたいね。ごめんなさい」

「ライくん……ああ、見なくなったと思ったら、あのゆうしゃ様の仲間になってたんですか?」


 久しぶりの知り合いに会ったからか、サリーからはぎすぎすとしたオーラが若干薄れ……少しだけ彼女本来の気配が垣間見えた。

 それをヒカリは若干驚いた表情をしながら見ており、この女性が本当にライトをああまでしたのかとさえ思ってしまっていた。

 けれど、すぐにサリーは自分が笑みを作りそうになっていたことに気づいて、冷淡で鋭い仮面を顔へと貼り付けた。


「……それで、何をしに来たんですか?」

「サリーさん……。そう、そうなのね……ごめんなさい。ちょっとハスキーさんにあなたのこの国でのことを聞いて、いてもたっても居られなくなったの」

「――ッ! ハスキー叔父さん……何を勝手にいろいろ話してるんですか……」


 ルーナの言葉に、サリーは苦虫を噛み潰したかのような表情をして、この場に居ないハスキーを恨めしそうに想う。

 そんな彼女の表情と先程の態度を見ていたヒカリは、ようやく理解した。目の前の女性……サリーは。


(……この人、無理してる……。だから、あんな態度を取り続けてるんだ……)


 まるで限界までピンピンに張られた糸のようで、何時切れてもおかしくないような彼女にヒカリは寒気と同時に不安を感じた。

 そして、それに気づいたのはヒカリだけなのか、それとも他に居るのかは分からないがサリーとルーナの話は続いて行く。


「それでね、わたしたちも一緒に手伝いたいんだけど、良いかしら?」

「……邪魔をしないなら」

「分かったわ。でも、危なくなったら助けに入るわね」

「危なくなんてなるわけない……だから、邪魔をしないで」


 淡々とサリーはそう言うと、ホースに乗り……その場から移動を開始した。

 その後を追うようにして、2人もゼブラホースに乗ると走り出したのだった。


 しばらくホースを走らせると、森の入口へと到着し……サリーたちはホースから降りた。

 ホースに待つように言い聞かせ、鬱蒼と茂る森の中へと入ると……燦々と大地を照らしていた太陽は陰り、森の奥は何も見えなくなっていた。

 森の中に一歩一歩進むごとに、久しぶりに獲物が来たというように周囲の獣型モンスターが声を潜ませて、ギラギラとした瞳で3人を狙っていた。

 その内の1匹が耐え切れずに、前を歩くサリーを狙うべく藪の中から飛び出して、襲い掛かってきた。


「邪魔」


 けれど、淡々と告げられたサリーの言葉と同時に腰から抜かれた短剣が真紅の軌跡を描き、襲い掛かってきたモンスターを通り過ぎて行った。

 通り過ぎたモンスターは初めは何が起きたのかはわかっていなかったようだが、ずるりとずれて行く自分の視線に気づいたと同時に、絶命していた。

 たった一撃でモンスターを倒したサリーにヒカリとルーナは驚きを隠せずにモンスターとサリーを見比べていた。

 同時に、モンスターのほうでは先走った1匹のあとに続くもの、どう攻撃するかを見極めるものに分かれたのか、気配が変化するのが分かった。


「さて、じゃあ……忘却草を探しますか……」


 サリーはそう呟くと襲い掛かってくるモンスターへとすたすたと歩いて行った。

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