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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
人の章
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番外:ライトの冒険~BKBK~

 サリーの言葉に始めは驚いたライトとヒカリだったが、淡々と告げるサリーに対して……戦わないと依頼を受けないという明確な意思を感じたので、半ば仕方が無く頷いた。

 ちなみに忘却草がある場所に生息するモンスターは普通よりも遥かに強いため、中級の冒険者でないと無理なのだけれど……生憎と現在冒険者ギルドに居る冒険者で中級はサリーとフォードの2人だけであった。正直フォードに頼めば良いのではと思うのだが……彼か彼で別の用事が入っていて無理だったのだ。

 初級の冒険者でごった返すギルドホールには向かわず、一行は裏口から外に出ると冒険者ギルドのための修練場へと向かうために移動し始めた。

 そんな中、ヒカリはライトに近づいて耳打ちをするように話をしていた。


「ねえ、ライト。どうして勝負を受けるなんて言ったの? ボクたちだけで取りに行ったほうが良いと思うんだけど……」

「それはそうなんだけど……、でもぼくたちは、ゆうしゃとして命令された王様の用事を済まさないといけないだろ? 取りに行きたいのは山々だけど……ここは冒険者に任せたほうが良いと思うんだ」

「それはそうなんだろうけど……でも、シターが……ううん、なんでもない。ライトも辛いんだからね……」

(……王様の用事とかどうこうよりも、仲間の心配をしたほうが良いんじゃないですか……? ああ、本当に腹が立ちますね。このゆうしゃは……!)


 こっそりと話しているライトとヒカリだったが、獣人……それも耳が良く聞こえるワン族であるハスキーとその血を半分持っているサリーには丸聞こえであり、ライトの言葉にサリーは怒りを募らせていた。

 そんなことも露知らず、ライトたちは修練場の隅に辿り着き……彼らに気づいた、駆け出しの冒険者たちが訓練の手を止めて、緊張を走らせた。

 とりあえず、自分たちは気にしなくても良いと言うように、ハスキーが手を挙げると彼らは少し遠慮しながらも頷いてから、訓練を再開していった。


「それで、どんな勝負をするんだい? あと、勝ったら依頼を受けてくれると考えても良いんだね?」

「ええ、それで構わない。それで、勝負方法は……訓練用の木製の武器を選んでの戦い。ちなみに殴る蹴るはありで、殺しは駄目」

「……本気かい? ギルドマスター、この女性はそう言ってるみたいですけど、大丈夫なんですか?」

「サリー……、本当に良いのかい? 幾らなんでもそれは少し……」

「叔父さん、ワタシは別に大丈夫と言ってる……。ほら、早く武器を選んで、名ばかりのゆうしゃ様」

「む~~っ!! ライトォ! こんな生意気なことを言ってる女なんてぶっ飛ばしちゃえ!!」


 激昂するヒカリに苦笑しつつ、サリーが意志を曲げる気はないと判断したライトは木剣を手に取り、すぐに片をつけようと考えていた。

 対するサリーのほうは、ロープをひと巻き取ると……武器は何も選んでいなかった。

 ハスキーが審判をするために移動する中、ライトがサリーに向けて手を差し出した。


「サリーさん。正々堂々良い勝負をしましょう」

「……ええ、良い勝負をしましょう。セイセイドウドウと……ね」


 そう言って、2人は握手を交わしたが……そのときのサリーの表情にヒカリは言い知れぬ不安を感じた。

 そして、それをライトに告げようと距離を取り始めた瞬間、ヒカリの予想は的中していたと気づいたのだ。

 ハスキーの試合開始の声が掛けられるよりも先に、ライトは背中に強烈な衝撃を受けて吹き飛ばされた。

 けれど、すぐに身体を起こして、何が起きたのかを確認しようとした瞬間、眼前にサリーが立っていて……顔を殴りつけられた。


「ライトッ!!」

「――っ!? いきなり攻撃するなんて、卑怯だっ!!」

「卑怯? モンスターと戦う場合も正々堂々なんて言葉が通用するとでも思ってる? もしそうなら、あなたは本当にゆうしゃ様ね。疑うことを知らない大馬鹿者なゆうしゃ様」


 嗜虐的な笑みを浮かべながら、サリーは殴りつけられて倒れたライトへと馬乗りすると力いっぱい殴りつけ始めた。

 ライトは木剣を投げ捨てて、防御しようとしたが……それは既に遅く、サリーのフルボッコタイムと成り果てていた。

 ヒカリはすぐにでもその凶行を止めに行こうとしたのだが、サリーの異常過ぎる気配に恐怖し、足がすくんで動けなかった……。

 そして、サリーの拳に血が滲み始めたところで、サリーの腕をハスキーが掴んで凶行を止めさせた。

 ハスキーは何も言わずに首を振り、それを見てからサリーはライトを見ると……血まみれで顔を腫らしながら、気絶していた。


「……こんな弱いのに、ゆうしゃなんて名乗らないでください…………。あの人に……師匠に失礼です……」

「ライトっ!! あんた……よくも、よくもライトをっ!! 許さないっ、許さないからッ!!」

「そう。別に許してくれなんて言うつもりはないから……。それと、依頼は受けるわ。それじゃあ、叔父さん。行ってくる……」

「サリー……、気をつけて……無事に帰ってきてくださいね」


 心配そうな表情でサリーを見つめるハスキーへと手で素っ気無い挨拶を送り、サリーはこの場を去って行った。

 多分、一度冒険者ギルドの部屋で準備を整えてから出かけるのだろう……。

 そして、ハスキーは今にも泣きそうになっているヒカリを連れて、ライトを抱えると治療院へと連れて行くのだった。

BKBKぼこぼこ

そして、サリーさんの方向性が何ということでしょう状態に……。

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