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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
人の章
125/496

番外:ライトの冒険~狂犬~

 近頃、獣人の国の冒険者ギルドで噂になりつつある、一組の冒険者たちが居た。

 その冒険者たちは、若手ながらも……獣人の国の未曾有の危機に立ち向かい、命がけで国を救ったのだ。

 そんな大業を成し遂げたら普通は大量の褒章を貰って、冒険者なんて危険な職業から遠ざかり自由気ままに過ごすことを選ぶだろう。

 けれど、その冒険者たちは褒章は受け取らず、更に自分たちは弱いと言って自らを鍛えるのを止めようとはしなかった。

 そんな彼らは日々の依頼を受けながらも、熟練の冒険者や獣人の国のギルドマスターであるハスキーに教えを乞うて、自らを鍛えて行った。

 そして、鍛えられていくに連れて実力は上がっていき、噂となっている冒険者の片割れであるフォードは中堅の冒険者の中でも一目置かれるようになっていた。

 その一方で、ハスキーの姪であるサリーは……まるで自らを追い詰めるかのごとく、危険な依頼を受け続け、周囲の冒険者たちからは死に急いでるようにしか見えなくなっていた。

 その結果、サリーは周囲から【狂犬】という二つ名で呼ばれるようになってしまっていたのだった。


「あ、……っ」

「………………」


 ある朝、寝泊りをしている冒険者ギルド2階の部屋から、サリーが出ると同じようにフォードも外に出てきたのだが……彼はサリーにどう接するべきかと理解出来ていないらしく、目を反らすことしか出来なかった。

 そんなフォードを一度だけ見てから……すぐに無視をして、サリーはフラフラと歩きながら、1階ギルドホールの窓口に向かうと……周囲から様々な視線で見られた。

 【狂犬】と知っている者からの恐怖の視線、折角の美人なのにまったく手入れをしなくなっている彼女を不憫に思う視線、彼女の母を知っている者たちからの熱烈な視線。

 そんな視線を無視しながら、関わりたくないと道を開けて行く中で、サリーは窓口へと立った。


「何か新しい依頼、無い……?」

「えっ、あ……その、す、少しお待ちください……!」


 素っ気無い態度で受付嬢のニャー族の女性に声をかけると、受付嬢はすぐに慌てながら依頼表に目を通し始めようとした。

 けれど、それよりも前にギルドホールの奥からサリーへと声がかけられた。


「サリー、少々宜しいですか?」

「……何ですか、叔父さん? ワタシは依頼を受けたいんですよ?」

「そうですか。でしたら、こちらに来てください。あなた向けの依頼が入っています」

「…………どんな依頼ですか?」

「ここでは色々と騒がしくなるので、こちらでお話をします。来てください」


 言うだけ言うと、ハスキーは奥へと戻っていき……少し考え、サリーもギルドマスターの部屋へと向かって歩き出した。

 奥へと消えて行ったサリーを見て、一同はホッと息を吐いてから……去って行ったサリーのほうを可哀想な目で見つめていた。

 ギルドマスターの部屋へと入ると、ハスキーがギルドマスターとしての椅子に座っており、来客用のソファーには人間の男と女が座っていた。

 チラリと見た顔に見覚えは無いと考えたサリーだったが、人間の国の王都のゆうしゃによく似ているような気がしつつも、依頼の話を聞くのが先だろうと考え、サリーはハスキーを見た。


「来ましたか、依頼を受けると考えて良いと言うことで良いでしょうか?」

「……依頼内容にもよる。それで、どんな依頼なの?」

「それはぼくが説明するよ。初めまして、ぼくの名前はライト。人間の国の王都の――」

「知ってる、名ばかりの弱いゆうしゃ。それで、依頼は何?」

「あ、あんた、その態度はなんなんだよっ!? ライトは弱くないし、名ばかりなんかじゃないっ!!」


 素っ気無さ過ぎるサリーの態度に、ライトの隣に居た女――ヒカリが苛立ちながら、怒声を上げてサリーを睨みつけた。

 と言うよりも、尊敬や信頼している相手がこんな風に言われたら怒るのは当たり前だろう。

 だけど、その怒りを込めた視線をサリーは何処吹く風のように無視し、ヒカリを見ていた。すると、ヒカリはその視線に耐えれなかったのか、何も言えなくなり……静かにソファーに座って俯いた。


「連れが申し訳ありませんでした。それで、依頼ですが……忘れたいことを忘れることが出来るという、忘却草を手に入れて欲しいんです」

「……どうしてそんな物が欲しいのか、理由を聞いても良い?」

「はい……実は、ぼくの仲間の一人がここに向かう途中に、心に傷を負ってしまって……医者にもこのままだと色々と危ないと言われて、それを治すには傷を負ってしまった原因の記憶を消し去るのが一番だと言われたんです」

「……そうなんだ。ゆうしゃ様って言われておきながら、一人の女の子も救えないなんて……情けない」

「――っ!! だ、だからっ、あんたは何様なのよ! ボクらと同じ普通の人間だろっ!!」


 冷たい瞳でライトを見下すサリーへと、無理矢理鎮火していた怒りの炎を再燃させてヒカリがサリーへと詰め寄ってきた。

 正直、この何も見ていない瞳はヒカリには恐怖しか湧き上がって来ないけれど、大好きなライトをこうまでバカにされ続けて怒らないわけには行かなかったのだ。

 そして、ライトのほうは申し訳無さそうと言った表情をしているのだけれど……サリーにはそれがどう見ても仮面のように見えてならなかった。

 だからだろう、そんなライトを見ていてサリーが心の底から苛立ちが消えることが無かった……。

 きっと、いまのまま依頼を受けたとしても、サリーは満足することは無いだろう。そう考えてなのか、彼女はひとつの条件を出した。


「良いわ、叔父さん、その依頼……ワタシが受ける。でもひとつ条件がある」

「分かりましたサリー……ですが、その条件とは?」

「条件は簡単……、名ばかりのゆうしゃの実力を見たいから、ワタシとちょっと戦って欲しい」


 そう言われた、サリーの言葉に……ライトとヒカリは驚いた顔をしていた。

やばい、近頃暑くて日中体力使い切って、かなり眠いです……。

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