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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
人の章
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審判の炎

 ティーガだった物は何が起こったのかさっぱりしていたわ。

 自らの熱線を受けたのが理解出来なかったから? いいえ、違うの。

 殆ど無くなりかけていたティーガとしての意識が自らの熱線を受けて、蘇ってきたんだけれど……熱線を反射させたであろう光を放つ人物を見て困惑していたのよ。

 だってそうでしょ? 一度は死んだけれど、魔王から貰った力で蘇って……その力でその人物を死に至らしめたというのに、何食わぬ顔をしてその場に立っているのだから……。


『BA、バかNA!? KIIISAAAAAAマぁあぁぁぁハ、SHIンだはZUウゥゥゥゥっ!!?』

『殆ど意識が無かったのに、アタシを見て正気に戻ったってところ? だったら、教えてやるよ。確かにオレは死んだ』

『SHIんだ。死んDA、だTTAラそのマ――マ、死NEEEE!!』

『だから、一度死んだんだから、アタシは死ねない。そして、オレが死なせない』


 ティーガだった物はそう金属が擦りあうような声で叫び、自らに開いた穴を修復させると、先程の熱線を今度は5つ口を作り出して、それら全てを彼女に向けて撃ち出したわ。

 普通の人だったら、塵も残らないほどの威力だったんだけれど、彼女が腕を振るうと先程と同じような黒い円が彼女と熱線の間に作り出されたの。その中へと熱線が入っていくと……先程と同じように熱線は黒い円から飛び出してティーガの身体に穴を開けていったの。

 その行動に信じられないと、ティーガはうろたえながら叫んできたわ。


『何故DA!? NAゼだぁァぁっ!!? こレHA、魔法ではNAI! なNOニ、何故――ハンシャ、できRUUUU!!?』

『ああ、これって魔法じゃなかったんですね。残念だけど、オレが使ってるのは反射じゃない。そして、教える義理はアタシにはありません』

『NUヲヲヲヲヲぉぉぉぉっ!! はかい、ハカイ、破壊、HAKAIIIIIII、はKAイィィィィィィィィィッ』

『……どうやら聞こえていないみたいだな。もう意識も無いみたいでしたし……こちらも時間が無いので、すぐに勝負を付けさせて貰います……その前に』


 自身の再生と同時にティーガとしての意識が消えて行くのを彼女は一瞬だけ、哀れむように見たけれど……すぐにワンダーランドを取り出すと、魔力を込めたわ。

 込められた魔力によって一気にワンダーランドの球に光が灯り、ワンダーランド自体も輝きを放ち出し……妙な振動を出し始めたの。

 それを見ながら、少しだけ彼女はやばいかなーって思ったけれど、即座に魔法を放つことにしたわ。


『審判の炎よ。正しき者に聖なる炎の癒しを、悪しき者に聖なる炎の裁きを!!』


 声高らかに叫び、彼女はワンダーランドの引金を引いたわ。その瞬間、ワンダーランドで描かれた魔法は王都上空へと放たれ……、王都上空に巨大な火球が姿を現したわ。

 突如として上空に浮かび上がった火球に驚きつつも、人やモンスターの殆どが上空を見上げたの。瞬間、彼らの身体が燃え上がったわ。

 周囲から驚きと恐怖の悲鳴が聞こえたけれど、すぐにその悲鳴が止んだの。死んじゃったのかって? 違うわ、この炎が自分たちに害をなさない炎だって気づいたからよ。

 だって、燃え上がった人たちは炎によって焼かれていくに連れて、傷付いた身体が治り始めていったんですもの。しかも、ただ治るだけじゃなくて、普通なら不可能と言われる部分欠損なども炎に焼かれるに連れて再生していったわ。そしてモンスターたちは逆に燃えたまま、次々と灰になっていったわ。

 無くなったはずの手足が再生して、何の冗談かと思っている者や。夢でも見ているのかと頬を抓ってる者が目立っているのが見え、彼女は手に持ったワンダーランドに視線を向けたの。


『ああ……やっぱり、耐え切れなかったか……』


 悲しむようにそう呟いて、光を放っていた球が幾つも砕けて、所々にヒビが入ってしまっているワンダーランドを見ていたの。こうなってしまっては修復はもう無理だろうとしか思えなかったわ。

 そして、まるでその武器に問い掛けるように、彼女は言ったわ。


『アタシは生まれ変わった。だから、あなたも新しく生まれ変わって、もう一度オレを支えてくれないか?』


 武器に問い掛ける可哀想な人っぽいけど、まるで彼女の言葉が聞こえたかのようにワンダーランドは割れ残った球を明滅させたの。そして、彼女はそれを返事と理解したわ。

 ワンダーランドを片手に構えて、≪異界≫からワンダーランドを作り出した金属と、アダマンタートルとオリハルコンタートルの甲羅を混ぜ合わせた金属を取り出して、自身から溢れ出る魔力をワンダーランドへと送り始めたわ。

 え、ティーガからの攻撃は無かったのかって? ああ、ティーガはいまだ燃え続けていたの。ボウボウよボーボー。


『この前は、アタシの込めた魔力が少なかったから手伝ってくれたけど、この間の分も魔力を混ぜるから頑張れよ』


 そう言うと、彼女は更に魔力を送り……同時に、透明な金属と朱色の合金をワンダーランドに混ぜ合わせて行ったわ。

 ぐにゃぐにゃぐねぐねとワンダーランドが変化を始めて、さらに彼女の魔力を与えられて金色に輝き始めたの。

 そして魔力を与えられ続けて、輝いた状態で自らを捏ね繰り回し、色んな武器の形を取り始めたわ。多分、彼女が使い勝手が良い武器を選択しているんでしょうね。……本当、この金属って何だったのかしらね。

 色んな武器の形を取っていたワンダーランドだったけれど、光が収まって行くと……最終的に形を決めたのか、先程のクロスボウの形をしている物よりも少し大きくなった形の武器になったの。ただし、持ち手部分が2つになっていたけどね。


『なるほど、こうなったか……またよろしくね』


 親しげにワンダーランドに語りかけると、返事をするかのように球から無数の光が輝いたの。

 そして、これで終われば良かったんだけど……金属が擦り合わさったような、生命を憎むような怨念染みた叫び声が下から聞こえて、そこを見たらティーガだった物が無数の瞳で彼女を睨みつけているのが見えたの。

 それを見ながら、彼女は生まれ変わったワンダーランドを構えたわ。


『前はボロ負けだったけど、今度はそうは行きません。それに、時間が無いからとっとと倒させてもらうぜ』

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