表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
人の章
110/496

絶望を打ち破る者

第3回オーバーラップ文庫WEB小説大賞に参加してみました。

 一方、普通の世界の獣人の国の王都ではね、ティーガにとって……と言うよりも魔族にとっての脅威になるであろう少女……勿論彼女のことね、彼女を殺したことで、ティーガは王城に向けて動き出していたの。

 ちなみにこのときにはもうティーガとしての意識が薄れ始めていってるのか、よく分からない声のような音のようなものを出しながら、周囲に散らばった獣人の死体や瓦礫を呑み込みながら進んでいたわ。その度に、元々膨れ上がっていたスライムのような肉体が拡大し始めて、彼女を刺し貫いたときと比べると2倍の大きさになっていたの。

 しかも、冒険者たちを襲おうとしていた大型の虎モンスターが数匹、ティーガと分からずに近づくと触手が刺し貫いて捕食して行って……更に大きさを増していったわ。


「な、なんだぁ!? あの巨大スライムみたいなモンスターはっ!!?」

「こっちに来るぞっ!! って、何かでかくなって来ていないか?!」

「あ、あいつ……仲間のモンスターを喰ってるのか……っ!?」


 モンスターと戦いつつ、やっとの思いで王城に辿り着いた冒険者たちだったけれど、自分たちの背後から近づいてくるモンスターに驚きの声を上げる。

 けれど驚いてばかりいるだけでは、冒険者が勤まるわけがない。

 だからでしょうね、その中のリーダーとなっている獣人が仲間たちを叱咤していたわ。……ちなみに、彼女に突っ掛かっていた獣人ね。


「お前ら! 驚いてる暇があるなら、早く王城の無事を確保しろ!! じゃねぇと、あの小便臭いゆうしゃサマに鼻で笑われるぞ!!」

「そ、そうだな! あのガキも頑張ってるんだ。年上の俺たちが頑張らないでどうしろってんだ!!」

「その意気だ! それに、あのでかいのはウスノロらしいから、その前に目の前のモンスターを倒してやろうぜ!」


 口々に周りを奮い立たせて、冒険者たちは雄叫びを上げ……王城で猛威を振るうモンスターたちへと立ち向かっていったの。

 様々な魔法が放たれ、戦斧が振り下ろされ、ナイフが煌き、矢が風切り音を立て、剣が弧を描いたの。

 その度に、モンスターは凍ったり燃えたり、叩き潰されたり、翻弄されたり、目を潰されたり、胴を斬られたりしていったわ。

 そして王城のほうでも援軍が駆けつけたことを知り、民を護っていたらしい獣人の国の国王が防御を捨てて、大槍を振るって攻撃に打って出たの。


「冒険者よ、援軍感謝する!」

「礼は後で報酬とともにたっぷりくれ! それよりも、今は……」

「ふっ、そうだな。皆の者! 今はこの王城の無事を確保するぞ!!」


 国王の声に、兵士たちが士気を高め……冒険者たちとともにモンスターを相手にしていたわ。

 けれど、そんな彼らへとゆっくり近づいて来ていたティーガだった物は大きく口を開けたの。それに運良く気づいた冒険者のひとりが、いったいどうしたのかと見ていると、口の中心で何かが溜まっていくのが見えたの。

 その溜まっていく何かに本能が警告を発し、喉が張り裂けんばかりの大声で叫んだわ。


「に――逃げろおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!」

『GRRRRRRROOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOONNN!!!』


 頭が割れそうになるような悲鳴がティーガだった物から発せられ、耳を押さえていた彼ら……というか、王城に向けて溜まった何かが熱線となって一直線に放出されたの。

 敵味方関係無しの攻撃は、王城を断ち切り……兵士や冒険者の身体を断ち切り燃やし、モンスターも殺していったわ。

 何とか生き残った人たちは居たけれど、衝撃で打ちのめされたり……直撃はしていなくても掠って身体の一部を失くしてしまっていたりしていたわ。


「くそ……何なんだよ、いったいあれは……っ!」

「っ……おい、しっかりしろよ。おいっ!」

「うっ……い、生きてる者は急いで回復して、怪我人を助け起こすんだ!」


 フラフラと立ち上がる冒険者や兵士、国王だったけれど……ティーガだった物を見た瞬間愕然としたわ。

 だって、こんなにも被害を与えた一撃が……もう再び放てるようになっていたのだから。

 信じられないと神に助けを求める者や、逃げ出そうとする者、最後まで戦って死のうとする者と様々な様子を見せていたわ。

 けれど、そんな彼らへと再び熱線が放たれたの。瞬間、彼らは死を覚悟したわ。

 ちなみに彼女が助けた子供たちは、彼女らを護っている冒険者に力強く抱き締められながら……呆然と目の前を見ていたの。多分、死ぬとか完全に理解出来ていないのかも知れないわね。

 だからでしょうね、その子供だけが目の前で起きた出来事を見逃さなかったのは。


『GRRRRROOOOO――GRO? GRRRRRRGGGGGGGGGGGOOOOOOOOOO!!?』


 突如、王城とティーガだった物の間に黒い円が姿を現し、放たれた熱線を呑み込んだの。そして反射でもしたかのように、熱線は黒い円から放たれ……ティーガだった物を穿ったわ。

 現実ではありえない出来事を子供は呆然と見ていて、……黒い円の中から、光り輝く何かが出てくるのが見えたの。

 その光り輝く者を見た子供は、きれい。と一言呟いたの。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ