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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
人の章
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説明をしよう

 ……あー、その様子だと気になってよく眠れなかったのね?

 わかったわかった。それじゃあ、父さんが起きてくるまで少しだけ話をしてあげるわ。

 そうね……少しだけだから、四天王の2人の話をしようか。

 とは言っても、目立つこと無く倒されちゃった四天王ほどかわいそうなものはないのよね……。


 【無敵の盾】ウーツ、別名不動のウーツと呼ばれる人型のタートルモンスターで彼女が王都に辿り着く、つい数時間前に抉られるように消滅した山を根城にしている魔王直属の四天王ってことみたい。

 山の炭鉱奥にある高硬度の金属で作られた砦を根城として、時折王都に戦力が整いかけるとそれを蹴散らし、基本的には砦に引き篭もっているという引き篭もりらしいわ。

 ちなみに引き篭もりはモヤシって相場が決まってるものよ。

 で、襲われるくらいなら倒しに行くべきだと考えたゆうしゃも居たみたいだけど、逃げ延びた……というか逃がされた冒険者曰く、砦は硬くまったく壊れないうえに、ウーツを守るようにしてアダマンタートルとオリハルコンタートルが大量に立ち塞がっているわ。

 アダマンタートルとオリハルコンタートルは名前の如く、甲羅が物凄く硬い鉱石で出来ているの。だから並大抵の攻撃じゃビクともしないどころか、弾かれる上に武器も壊れるわね。

 え? 彼女はなんでそんなに詳しいのかって? ギルドマスターが別に良いのに説明してくれていたの。ウーツとハガネについてもね。


 そして、そのウーツには親友と呼ぶべき存在が居るの。

 それが、【最強の矛】ハガネと呼ばれる人型のドラゴンモンスター。そう、王都に攻め込んできたモンスターね。

 強さは攻撃力に秀でているらしく、たったひとりで千人もの屈強な兵士を相手取って、全て倒したらしいわ。

 基本的には1人で戦うのを得意としている四天王なんだけど、現在は親友を倒された怒りで王都を更地にしてやると言うくらいにモンスターを引き連れてきていたの。

 しかも、そのモンスターの殆どはドラゴン系のモンスターで並みの冒険者や兵士だったら、炎の息で黒焦げになってしまうわね。

 他にも窓から見えた限りだと、龍って呼ばれる胴体が長いタイプのドラゴンも空を滑空していたわ。角の上に少年か小僧でも乗せたら面白いって思うくらいにね。

 ……ああ、分かる人にはわかるものだから良いのよ首を傾げなくっても。

 そして、そんなドラゴン軍団が王都に現れたんだから、外では悲鳴がし続けていたわ。


「さてと、説明も終わったことだし、そろそろ行くとするか」

「お供するぜ、おやっさん」

「馬鹿野郎、お前は弱いんだから、サリーといっしょに街の人を避難させるようにしろ」

「分かりましたマスター。気をつけて行って来てください」

「……わかった。けどおやっさん、生きて帰って来いよ!」

「ああ、分かってる。ってことでアリス、お前さんはどうする……って聞いても、やめておいたほうが良いよな。城に目を付けられたくないだろうし」

「…………ちなみに、現状で戦って勝てるんですか?」

「ははっ、勝つ負ける以前に……どれだけの人を生かして逃がせるかだな」


 乾いた笑みを浮かべながら、ギルドマスターはそう言って彼女に笑いかけたわ。

 そのとき、彼女はこう思ったの。ああ、死ぬ気だな……って。

 けれど、彼女はどうすることも出来ないからと諦めて、サリーって名前だった女性受付と冒険者に連れられて部屋から出て行ったわ。

 奥の部屋からギルドホールに出ると、戦いに赴く冒険者たちが武器を用意し、脱いでいた防具をつけているのが見えたわ。

 彼らの表情は硬く、何名かは情けない声を上げていたけど年上の冒険者に殴られていたの。

 年上の冒険者もきっとやせ我慢をしていただろうけど、逃げるほうが恥だと思っていたんでしょうね。


 ギルドから外に出ると、街の人たちが我先にと逃げ惑っていたわ。

 必死に逃げる青年が老人を突き飛ばし、子供が母親の手を離してしまい迷子になって泣き叫び、老婆が愛猫を抱き抱えてたの。

 ギルドの冒険者や衛兵が慌てないようにと声をかけているけれど、まったく聞こえる様子が無いわ。みんな自分が助かる事に必死なのよ。

 大丈夫。もしそんなことになったら、あんたは絶対守ってあげるからね。

 そして彼女は現実では起きそうに無い出来事が目の前で行われていることに、恐怖と違って心のどこかで沸々とした感情が沸き立つのを感じていたわ。ちなみに彼の世界でも戦争は起きてたけど、遠くの国の話だから他人事だったわね。

 そんな彼女に冒険者が逃げるように声をかけて、腕を取ったわ。けれど、彼女は一歩も動かなかったの。


「おい! 何してるんだよアリスッ! 早く逃げるぞ!!」

「ねえ、この人たち……みんな死ぬの?」

「――っ! 死なねえように逃がしてるんだろ! だから早く!」

「そう……だよね。うん、そうなんだ……だったら、やるしかないね」

「何言ってるんだ?! 早く逃げろ! アリ――ス?」

「ごめん。ちょっと剣、貰うよ」


 叫ぶ冒険者の近くまで近づき、彼女はそう囁くように言うと……彼の腰に差した剣を――抜いたんだ。

次々回ぐらいでハッチャケます(多分)

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