数少ない選択肢
「……要するに、このカウントが『0』になる前にアリスから抜けて別のゆうしゃに入るなり、何なりの行動を取れ……そう考えればいいんだな?」
「はい、物分りが良くて助かります。さすがはゆうしゃ様」
「何か凄く馬鹿にされているように感じるのは気のせいにしておくけど……、別のゆうしゃに入る以外だと何かあったりするのか? と言うか、一番最良の方法しか言ってないよな?」
「はい、ありますよ。ですがそのほうが楽ですし、一々初めに戻らなくても良いので、助かります」
やっぱりあったのかよ、他の方法……。と言うか、戻るってどういう意味なんだ?
……語ってくれるかは分からないけど、聞いてみるか。
とか思っていると、神が先に答え始めてくれた。
「ゲームでもあるじゃないですか。『はじめから』『つづきから』『おわる』って、それの『はじめから』を選んで、ゆうしゃ様のこれまでの記憶も無くして、一番初めからやり直すと言うのが3つある方法の1つです」
「記憶が無くなるけど、全てが元通りになって……同じことを繰り返すと言う意味で良いんだな?」
「はい。同じことを繰り返すかも知れませんし、もしかしたら別のルートになって……ライトハーレムの一員になってたりするという未来もあったりするかも知れませんよ」
「ねぇよ! そんな地獄のイケメンハーレムの一員になる未来なんて!!」
正直考えただけでも、寒気がするぞ……。だけど……とりあえず、これはゴミ箱に入れておくとして。
選ぶことが出来るのは、3つ……で1つが『コンバート』って言ったら良いのか? それで、1つは『はじめから』で……思い出がなくなってしまうと。じゃあ、最後の1つは何だ?
そう思いながら、神を見ると目を反らした。……でも、まあ、最後の1つは考えたら分かるよな……多分、『つづきから』とか『コンティニュー』とかそんな感じで考えたら良いんだ。
「……生きてたなら、無事に『つづきから』って言う感じに、その日の朝に戻るようにしようと思ったんですが……心臓が潰されていたら……無理なんですよね」
「どうしてだよ? その日の朝に戻るなら良いんじゃないのか?」
「んー……まあ、ゆうしゃ様には特別ですよ。実は『つづきから』って言うのは、その日の始めに戻りますけど……失った物は戻らないんですよね。要するに、王都で昼に死んだその娘が『つづきから』をするとー、朝ベッドで死んでいたっていう風になるだけなんですよ」
「……それって、『つづきから』って言わないんじゃないのか?」
「何を言うんですか? 全て綺麗さっぱりになって目覚めるなんて都合の良い話なんてあるわけ無いじゃないですか」
あっけらかんと神は言うが……まあ、そりゃそうだよな。都合の良い話なんてあったら逆に怪しく思ってしまう。
もしくは、神様凄い!! って崇拝するとかだろうし……。
そう思いながら、オレは神が言う『はじめから』を選ぶしかないのかと考える。
だけど……正直、これまでアリスと築いた関係を全部忘れてもう一度初めから……なんて選びたくないな。
「まあ、ゆうしゃ様が狩っていたモンスターの素材があったら、それを使って損傷した箇所を治したり、欠損部位を補填したりがこの瞬間でなら出来るのですが……ゆうしゃ様は片っ端から消し炭とか粉みじんにしてたりしていたので、それは無理ですしね」
「……え、そんなことが出来たのか?! いや、まあ確かに残さないまでに叩き潰して……残ってるのといったら鉱石とか金属ぐらいだけどさ……」
「はい、管理していた別のゆうしゃ様でしたら、この空間にはモンスターの死骸がいっぱいあったりしましたよ。それと、金属とか鉱石は……ちょっと、義手とか義足ぐらいしか無理ですよ」
モンスターの死骸がいっぱいって……何だか嫌な光景だな。それに、義手とか義足か……だったら無理だよな。
それに、この神の言い方だと……ここにあるのだったら使ってもいいけど、それ以外は無理だということでいい……よな?
そう思いながら、神を見てると、あのときは大変だったと言う風に言ってる……って大量にモンスターの死骸があったゆうしゃは心臓だけしか残ってなかったのかよっ!? しかも、そんな状態だったけど、心臓が残っていたから回復出来たって……神すげぇって言えば良いんだろうか……。
まあ、でもそれだけのモンスターを狩ったゆうしゃが凄いって言うことなのか? 何しろ、この空間をモンスターの死骸で埋め尽くしたらしいし。それに比べて、オレの場合はこの空間には……アリスの死体とオレと神。
何ていうか、本当に空間が広いって思いたくなるし、使えるものと言ったら……モンスターが居ないんだから、オレとか? ……ん?
「まあ、そんなわけでこの娘で『つづきから』なんて無理なんですよ。だから、諦めて『はじめから』か、ゆうしゃライトの中に入って美少女ハーレムパラダイスをエンジョイしてくださ――」
「なあ、神様。この空間にある物を使ったなら、アリスを生き返らせることが出来るってことで良いんだよな?」
「……何でもと言うわけではありませんよ。モンスターの場合は大量に使用して元通りにできたと言うわけです。所謂、肉体を補うために必要なモノの純度って言うところですね」
「だったらさ、『オレの身体』を使ったら、アリスは『つづきから』始めることが出来るってことで良いんだよな?」
そう言った瞬間、オレは確かに目の前の神がしまったと言う表情をしたのを見た。