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あるゆうしゃの物語  作者: 清水裕
人の章
102/496

冒険者たちの戦い

 胸を貫かれた師匠の体の拘束は解かれ……力無く師匠は地面へと落ちていきます。

 ワタシは悲鳴を上げながら、その光景を見ていました。師匠、師匠師匠師匠っ!!

 そんなワタシをフォード君が肩を揺すって正気に戻そうとしています。けれどワタシは正気になんて戻れそうにありません!

 目の前が真っ赤になって、すぐにでも【叡智】のクロウに飛び掛ろうとするワタシでしたが……突然の頬の痛みを感じ、正気に戻りました。

 痛む頬を押さえながら、正面を見ると……ハスキー叔父さんが立っていました。


「おじ、さん……」

「落ち着きなさい、サリー。怒りに身を任せた戦いだと、勝てる相手にも勝てませんよ」

「ほう、我輩を倒すと言うのか、お前は!! 面白い、実に面白いである!!」

「ええ、倒してみせますよ。私……いえ、私たちを舐めないほうが良いですよ」


 ハスキー叔父さんがそう言って、【叡智】のクロウへとニコリと笑います。ですが、その笑いは親愛などの感情は含まれておらず、自分たちを見下しているであろう人物に対する挑戦を込めた笑みだとワタシは感じました。

 そしてハスキー叔父さんの言葉に賛同するように、他の冒険者の方たちも武器を構えて戦う意志を示します。

 それを見ていた【叡智】のクロウは軽い溜息を吐いて、水の幕をただの水に戻すとワタシたちを見ました。


「ならば、我輩の仕掛けたトラップマジック、どう通り抜けるつもりであるか!!」

「今のままなら難しいでしょうね。……サリー」

「は、はい。何ですか叔父さん?!」


 いきなり話しかけられてワタシはビクリと震えますが、いきなり声をかけていったいどうしたんでしょうか叔父さんは?

 そう思っていると、ハスキー叔父さんはワタシに問い掛けてきました。


「トラップマジックを仕掛けている場所が壊されたとき、仕掛けられたトラップマジックはどうなりますか?」

「えっ!? えぇっと……確か……所々が崩れて、混ざり合ったりして最終的には機能しなくなるみたいです……って、まさか!?」

「そのまさかですよ。聞いていましたね、皆さん!」

「むむっ!! 何をする気である!?」

「何をするかって? こうするんだよぉっ、<グランドブレイク>!!」


 ハスキー叔父さんの掛け声と同時に大きなハンマーを振り上げた冒険者がそう叫ぶと、力いっぱい地面へと振り下ろしました。

 その直後、地面が揺れたと思ったら神殿の石畳がハンマーを打ち付けた場所から一直線に砕けて行きました。

 そして、石畳が砕けて行くと同時に、設置されていたトラップマジックは発動せずに停止した物や混ざり合って変な効果になった物、誰も居ない場所でトラップが作動する物といった感じになって行きます。

 いきなり過ぎて驚いていたワタシですが、すぐにハッとして驚きを隠さずにハスキー叔父さんを見ます。

 ちなみにフォード君は冒険者が放った攻撃……スキルに驚いているようです。


「お、叔父さん! 誤作動で全員巻き込まれたりしたらどうするつもりだったんですかっ!?」

「その心配もありましたが、このほうが手っ取り早いと思ったんですよね」

「……そ、そうでした。お母さんも、切羽詰るととんでもない行動に出る人だったんですから、理知的なハスキー叔父さんは大丈夫だ何て思うべきじゃなかったんです……」


 在りし日のお母さんの姿を思い出しながら、ワタシは頭を抱えます。そして、一方で【叡智】のクロウは驚きを隠せないのか声を荒げていました。


「な、なんと!! その手があったのであるか!! しまったのである!! トラップマジックに気づかれまいと思って石畳だけに設置していたのが失敗の元だったのである!!」

「石畳だけですか……。でしたら、地面を泥沼にしたらどうなるでしょうね。皆さん、お願いします!!」

「と、止めてくださいっ! 誰か――いえこの際、フォード君! フォード君がハスキー叔父さんを止めてくださいっ!!」

「えぇっ!? む、無理! 無理ですよッ!! 何か、今この人目が据わってますし!!」


 悲鳴を上げるフォード君に頑張るように声をかけますが、それは既に遅く……魔法使いの冒険者の詠唱が終わり、ひとりの力は弱くても、複数の力でなら何とかなる的な感じに石畳の下がぬかるんで行くのが分かりました。

 ぬかるみが徐々に広がって行き、歯車がまるで軋むかのようにギシギシと石畳が軋み出し……ゴゴンッという音を立てた瞬間、ボシュッという間抜けな音を立てて……トラップマジックがひとつ、またひとつと不発して行きます。

 それから少しして、見るも無残な神殿の入口を前ににこやかな笑みを放つハスキー叔父さんが居ました。


「さあ、ここからが本当の戦いですよ。【叡智】のクロウさん」

「……い、一時撤退なのである!! ……うむ、新しい魔法を思いついたのである!!」


 冷や汗をかいているような表情の【叡智】のクロウがそう叫んで、神殿の中へと入り込んでいき……扉が閉まりました。

ごいけんごかんそうおまちしております。

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