膠着状態と再生される光景
チマチマ毎日書いて100回めー。
その場のノリとテンションで書くと恐ろしい反面、楽しくなりますよね。
――トラップマジック。
それは……ある細工をした魔法を地面や壁、通常のトラップに仕込まれた魔法。
基本的には、生物がその魔法が仕掛けられた場所に立つと仕掛けが作動し、仕込まれた魔法が発動するというものでした。
そしてその場所に立つ以外に、ある特定の感情や特定の動作をした際にも発動するトラップもあると言う話しもあります。
「つまり、先程のチュー族のかたは魔法が仕掛けられた場所に立ったから魔法が発動し……、エルフのかたは……『術者への敵意』または『術者への攻撃を仕掛けたとき』に発動するように仕掛けられたトラップマジックが発動した……でしょうか?」
「その通りである!! 娘、トラップマジックに詳しいのだな!!」
「父が若いころに得意としていた戦法みたいなので、母さんから思い出話として聞いただけですよ」
「そうか! 獣人のにも稀有な才能を持つ者がいたのであるか!!」
いえ、獣人ではなく人です。そう言っても意味が無いと考えて、ワタシは何も言いません。
兎に角、今はむやみやたらに動いて自らを危険に晒すわけには行かないと考えて、どう動くべきかと頭の中で考えます。
他の方々もどうするべきかと悩んでいるようで、手を拱いてる状態となりかけました。
そして、【叡智】のクロウはそんなワタシたちを知ってか知らずか、その場から一歩も動かずワタシたちを観察しているようでした。
一方、冒険者の方たちの中には救援が来てくれないかと思い始める者も現れました。ですが、【叡智】のクロウが言った言葉はその思いをあっさりと踏み潰しました。
「ああ、それと救援が来ることは無いと思うのである!!」
「ど、どういうことだっ!?」
「こういうことである!! これを見るのである!!」
全員が注視する中、【叡智】のクロウは空中に薄い水の幕が張られていきました。
初めて見る魔法ですが、多分……『水』の属性の魔法でしょうか?
そう思っていると、水の幕に燃え盛る何処かの街を転写し出しました……いえ、何処かではありません。あれは……。
「ま、まさか王都っ!?」
「そっ、そんなっ!? どういうことだよっ!?」
「教えてやるのである!! 我輩は神殿で行っていることが佳境に入ったら、ティーガが王都を攻めるという段取りになっていたのである!! 王都の兵士が馬鹿をしたから少し早まったけれど、問題は無かったのである!!」
「ティーガ……まさか、【破壊】のティーガですかっ!?」
「その通りである!! 我輩とティーガ、2人の元四天王がこの作戦の要であったのである!! ちなみにもう覆すことが出来ないから教えてやるが、我輩が神殿で神を封じると同時にティーガが国を破壊すると言う段取りだったのである!!」
そ、そんな……じゃあ、今頃王都は四天王のティーガがモンスターたちと一緒に暴れているってことですよね?
もしかしなくても、残った冒険者が対処しに行って……師匠も行ってるんじゃ……。
悪い予感が心の中に渦巻いて、不安が募る中で【叡智】のクロウは尚も話し続けます。
「ちなみにティーガが王都に攻め込んだのは、お前たちが馬車で出発して殆どすぐである!! 腕が立つ冒険者を根こそぎこちらに引きつけての行動であったから、すぐに王都は落ちたのであるが生き残りを救出するために現れた冒険者の中にひとりだけ興味深い娘が居たのである!!」
「――っ!? まさ、か…………」
「これがそのときの、光景である!! 見よ!!」
【叡智】のクロウがそう言うと、水の幕が光り輝き……燃え盛る王都とは違う光景に変わりました。
多分、ワタシたちが移動していたであろう時間帯の光景でしょう。そこには獣人の冒険者ギルドで見たことがある冒険者の方々がモンスターと戦う姿が見えました。
けれど、迫り来るモンスターの大群に多勢に無勢なのか、強さが違うのか劣勢を強いられています。そんな中、一筋の閃光が奔り、モンスターたちを一掃するのが見えました。
その再生された光景を見ていた冒険者のひとりからは、天の光と呟く声が聞こえます。更にモンスターたちの集まる真ん中で突然の大爆発が起きたと思ったら、今度は突風がモンスターを通り過ぎて行き……吹き飛ばすのではなく両断して行きます。それを見ていた魔法を使える冒険者たちが手に汗を握るのが見えました。
この馬鹿げた魔法の使いかた……やっぱり、やっぱりそれは……師匠。師匠だ……。
これからどうなるのかという不安を感じながら、ワタシは食い入るように映し出される光景を見ていました。
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