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Mousse Chocolat Framboise  作者: カフェと吟遊詩人
9/25

ガルニチュール フランボワーズ

「沙羅と隆史さん別れたの」

誠が勇輝のもとに駆け寄って来た。


「どうした朝から」

勇輝は眠そうに答える。


「勇輝は知ってるだろ。俺が昔、沙羅の事を好きだった事」


勇輝は心の中で言った「知ってるよ。誠は誰かを好きとかじゃ無くて、常に相手が欲しくて周りに恋をしてる事。その中に沙羅が対処だった事も知ってるし。隆史さんがいたからスグに諦めたのも知ってるよ」


勇輝は面倒臭そうに答える


「だからどうしたの?」


「ちょっと小さい声で喋れよ。遥香に聞こえるだろ。ちょっと外に行こう」

そう言って勇輝を連れ出す。


「もう遥香と付き合ってるだろ。何言ってるの」


「そうだけどさぁ。なんか、わかるだろ」

正直、わかると言えば解るし。わからないと言えば解らない。


彼女を手に入れた余裕。調子に乗ってもっと良い女が欲しくなる。


彼女が出来た余裕。調子に乗って新しい女が欲しくなる。


男の本能と言えば都合がいいが、理解は出来ない事ではない。だからと言って納得していい事でもない。


これは男に限った事ではないか。同じ事をする女性もたくさんいる。


「わかるとは、、、言えないだろう。俺の立場では」


「だよなぁ」


「それに隆史さんと別れたわけでは無いと思うよ。遠距離なのかな。たぶん」


「そうなんだ。そうか、うん」


「<うん>てなんだよ......」

勇輝は苦笑いしながら誠の頭を軽く叩く。


人は理想の相手を見つけてパートナーにしたとしても、他の新しい人が気になる人種がいる。

これは特別な事ではないと思う。


ただ、そういう機会がある人。


そういう機会に行動する人。


そういう人達がそういう人種になるのだろう。


まあ、勇輝としては誠はそういう機会がある人だとは思わない。沙羅には相手にもされないだろう。たぶん2人きりの食事さえ難しいだろう。


「まあ、聞かなかった事にしとくから、自制しなさい」

こう言いながらも勇輝は、こういう気持ちは1度出てくると厄介なものだと思っていた。


「ああ、遥香可愛いしな。昨夜もご飯作ってくれたし」

誠は独り言の様に言っていた。


席に戻ると遥香がコッチを見ている。「面倒臭いなぁ。直接2人で話してくれないかなぁ」


遥香がよって来た。勇輝は慌てて席を立ち逃げようとするが、勿論捕まる。


「どこ行くの?」


「えっ、トイレ」


「じゃあ途中まで一緒に行く」

勇輝は「小学生の女子の連れションか!」と思いながら逃げれない事を知った。


「誠と何を話してたの?」


「久し振りに2人でご飯食べようって話してた」


「へぇ~、そうなんだ。トイレ、外で待ってるね」

勇輝は「トイレ位ゆっくり行きたいよぉ」と涙目になりそうだ。



金曜日の夜、沙羅は大阪に向かっていた。


新幹線に乗る前は楽しかった。

東京駅には本当に色々と店がある。

勇輝の好きなイグレックプリュスのクロワッサンラスクを新丸ビルでお土産に買って、駅中で他を物色。マルコリーニでchocolat、、、これは自分の為。ブルディガラで晩御飯用のパン。これも自分の為。

東京バナナ、これはお土産用。「張り切って買い過ぎたなぁ」そんな事を思いつつ売り子さんが通った時に


「オーボンヴュータンのクッキー下さい」


迷わず買ってしまった。そんな買い込んだ沙羅だが、心の中に不安と期待が渦巻いていた。マルコリーニのチョコを口にしていたがあまり気乗りがせず、ボーッとしていた。そして、気付かないウチに寝ていた。


新大阪に着いたのは10時前だった。途中で携帯に


〔改札前で待ってる]


隆史さんからメールが来ていた。


沙羅がホームのエスカレーターを下り出口に向かうと、改札の向こうに隆史さんの姿が見えた。胸が少し高鳴った。「どうやらちゃんと隆史さんの事が好きらしい」沙羅は自分の心を確かめながら改札を出で沢山の荷物を床に置き、隆史さんを抱き締めた。隆史さんは驚きながらもそれを受け入れ、そっと沙羅の腕の上から抱き締めた。



地下鉄に乗って江坂という駅に向かった。隆史さんはそこに住んでいるらしい。明日は梅田か南を観光しようと話していた。

隆史さんも大阪に来てほとんど観光はしていないらしくガイド書を購入するか2人で話しながら家に向かった。


新幹線で何も食べなかった沙羅だが珍しく食欲よりも早く隆史さんの家で2人きりになりたい気分だった。


ファミレスに寄ろうとしてくれた隆史さんの気持ちを断り隆史の住むマンションに入った。

移動の疲れも有ったのだろうか、それとも気持ちが前掛かっていたのだろうか。

2人の入った部屋は12時過ぎには電気が消えていた。




次の日の朝、2人は昨夜の計画と違いUSJにいた。沙羅も隆史さんも久し振りに何も考えずにはしゃいでいた。


「ターミネーターの人面白いね。関西って感じがした」


沙羅は曇りのない笑顔でそう話せていた。久し振りの心からの笑顔だろう。


お昼ご飯を食べる2人は疲れ切っていた。

窓の外の女子高生達は止まる事なく遊び続けていた。「若いなぁ」などど見詰めながら2人自然な会話をしていた。


「次は何にする?」


「ジョーズが人が少なそうだね」




日が暮れる頃には2人はクタクタだった。電車では肩を寄せ合い眠ってしまっていた。

マンションに着くとシャワーも浴びずに寝てしまい夜中に慌ててシャワーを浴びて明日の予定を話した。


「神戸に行きたい。勇輝が神戸を好きなんだよね」


「勇輝君が、、、神戸のどこに行くの?風見鶏の館は?異人館」


「そういえばどこが良いとか言ってたけど覚えてないや」


2人は頑張って朝早く起きて神戸に向かった。意外と近くて寝過ごしそうになったが無事に着いた。


「神戸牛食べたい」

沙羅は朝から元気だ。


「幾らするんだろうな、お昼にでも行こう。取り敢えず朝ごはんだ」


2人は贅沢にメリケン波止場のホテルオークラで朝食を食べた。


「贅沢だね、お昼のお肉は無理っぽいね」


「少し張り切り過ぎた、お昼は明石焼にするかな」

おなかがいっぱいになった2人は北野坂を登り異人館に向かった。「勇輝はこんな坂の上にいつも来てたのかなぁ?」心の中で疑問に思いながら汗をかきながら登っていた。


ちなみに勇輝が好きなのは海沿いの旧居留地だ。異人館は大人になるまで行ったことは無かった。



鱗の館、風見鶏の館。何件か回って脚がクタクタ。


「タクシーで街に下りる?」


「ハーブ園は興味ない?」


「無いなぁ、ハーブ園って美味しい物有るの」


「摩耶山の夜景が綺麗らしい。そこのホテルのレストランが美味しいみたい」


「北野ホテルのレストランに行きたい」


「俺たち、朝ごはん贅沢したのにな」


「明日はお茶漬け?」


「今晩帰らなくて良いの?」


「帰らなきゃヤバイ」


「じゃあ摩耶山なんて無理じゃん」


「北野ホテル!」


「じゃあ予約しますか、それまでは観光ですね」


「疲れたから、ゆっくりお茶しようよ。お茶漬けじゃ無いよ」



2人はゆったりとした時間を過ごした。途中で雑貨屋などによりながら珈琲を飲んだ。そして夜は北野ホテルのレストランで食事。。。



そんなにゆっくりしてて言いわけがない。食事が終わると新神戸からの終電の時間が迫っていた。


タクシーにかけ乗り、新神戸に向かう。


「間に合ったぁ」

チケットを買い、電車まであと5分有ることを確認した。お土産は諦めよう。


「じゃあ、またね。東京には、、、」


「しばらくは帰らない予定。休みの日もこっちに慣れる為に色々するよ」


「・・・」

沙羅は言いたい言葉を我慢した「私に逢いたくないの?」どんな女性でもこんな時は聞きたくなるだろう。何か寂しい想いが胸に溢れていく。


「じゃあ、行くね」


「うん。元気にな」

沙羅は手を振る「また来て」とも言って貰えない。



改札を入り10歩位歩いて再び手を振ろうと振り返ると、そこに隆史さんの姿は既に無かった。

隆史さんの心の中は全くわからないままだった。あの大阪に行くと言った日から。




新幹線に乗り席に座ると。勇輝が好きなバンドに神戸の歌が有ると聞いた事を思い出した。隆史さんの事を考えると泣いてしまいそうだ。


ネットで検索してみる

<The Love 神戸>


”風見鶏の恋人”


沙羅はYouTubeでこの曲を聴いてみた「なんだこの曲は⁉︎私を悲しませる為の歌か!」それは別れの歌であった。心から勇輝を恨みたい。


いつも前向きな沙羅はこの3時間は人生でもBest3に入るくらいネガティヴな時間だった。


家に着く頃には沙羅は心も身体も限界だった。


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