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Mousse Chocolat Framboise  作者: カフェと吟遊詩人
4/25

メランジュ

朝、3人は急いでいた。


歯磨き、トイレ場所の取り合いだ。


買ったパンはそのままで取り敢えず眉毛と口紅だけを何とかしてアパートを出た。


「沙羅、目覚ましとめたよな」


「うん、でも寝ちゃった」


「ちょっと〜、なんで沙羅の近くに目覚まし置いたのよ。こうなるの解ってるでしょ」


「俺が悪いの?」


「いや、沙羅が悪い」

沙羅も絵里が一緒で無ければかしっかり者なのだ。絵里がいるだけで気を抜いてダメ人間になってしまう。


「隆史さんも、大変よね」

絵里はいつも通り諦め顔で勇輝に同意を求める。

「隆史さん、前に家に来たんだよ」


「えっ!嘘ぉ」

電車に飛び乗りラッシュに潰されながら、

「勇輝、ちょっとそれ話すの」


沙羅が無駄だと知りながら勇輝を止めようとする。


「あまりに皆んながウチに泊まりに来るから、沙羅の事が心配になったのか2人でドライブの途中で寄ったと、アパートの前から電話がかかってきて、、、そのままファミレスに拉致られて尋問されました」


「ちょっと沙羅、心配されてるよぉ〜」

絵里は完全に楽しんでいる。

電車は新橋に着いた。3人は会話を止め、とにかく会社に向かい走った。


「おはようございます」

ギリギリ間に合った3人。そそくさと仕事を始める。


遥香が笑顔で手を振っている。その遥香の服装を絵里と沙羅はチェックしている。


「・・・・・」


勇輝はパソコンを開きメールのチェックを始めると社内メールが遥香から来ていた。受信時間は15分前、朝一で送って来たメールらしい。


[おはよう。昨日は皆んなちゃんと寝た?お寿司美味しかったね。次は2人ご飯リベンジしようね]

このお誘いをどう感じでどう理解したのか、勇輝は取り敢えず返信をした。


[おはよう。解った、ご飯行こう]

何も感じでいないのか?それとも作戦なのか?

勇輝は仕事に取り掛かった。


お昼休憩。別部署の誠が顔を見せた。


「沙羅。昨日はちゃんと寝たか?」


「ちゃんと寝過ぎて2人に怒られちゃったよ」

「?」


「お昼どうするの?あれ?遥香は?」誠がキョロキョロしている。

絵里が近づきながら


「さっきまで居たのなぁ。今日は外ご飯なのかな」

勇輝がその光景を見ながら机を簡単に片付けている。勇輝には絵里と沙羅が心なしか楽しそうに見える。


「勇輝、社食行くでしょ。誠も一緒に行こう」

絵里が2人を誘う。沙羅はご飯が楽しみで仕方が無い


「今日の定食は何かなぁ」


関係ない話だが、こんな事が有った。お昼ご飯が楽しみで仕方が無い沙羅はお昼まで我慢出来ずに社員食堂に内線をかけて


「今日の定食は何ですか?」


と聞いていたのだ。この話には絵里も勇輝も遥香も目が点になった。沙羅は本当に何をするか解らない。


誠は社食を断り携帯をいじりながら自分の部署の方に戻っていった。


「あの2人、何か有ったポイよね」

海老フライを突きながら楽しそうだ


「完全に怪しいね」


「どこが⁇誠が遥香を訪ねて来たから?」


「勇輝、ちゃんと見てないね。遥香、上の服はちゃんと着替えてるけどスカートは昨日と同じだったでしょ」


「えっ⁈そうなの、そこまで見てないよ」


「女ってのはそこまで見てるものなのよ」


「なのに、スカートは変えて無いのは少しは気付かれたいって想いも有るのよ」


「そうなんだぁ、勉強になるわぁ」


実際、勇輝は女の子との接し方や誘い方をこの2人の教わる。この2人が居なければ勇輝が女の子と喋れる様になるには後数年かかっただろう。

「勇輝、誠に探り入れといてね」


「え、うまく聞けるかなぁ」


「ちょっと、興味無いの?」


「めっちゃ有る。がんばる」


ふと、沙羅が呟いた


「でも、遥香は何で上の着替えは持ってたんだろうね」


「そうだね、何でだろ。あの時間から買ったのかな?2人で遥香の家に行ったらスカートも履き替えるだろうしね。会社に着替えを置いてるのかな?」


2人は釈然としないながらも大した問題で無いと違う話題に移っていった。


勿論、本来は勇輝との為に用意していた服だったのは皆さんはお判りだろう。


机に戻ると早速誠にメールをした。遥香はまだ戻って来ていない。


[誠、昨日は無事に帰ったの?こっちは絵里が珍しく吐いたよ。遥香はちゃんと帰れたのかなぁ]


あまりにも、聞き方が下手だ。ちゃんとやれ勇輝。


目を上げると遥香が席に戻って来た。こっちを見て少し微笑んだ。視線を下に戻すと直ぐにメールを着信した。


[絵里が吐いたの珍しいなぁ]


遥香の事には全く触れない返信が来た。期待外れである。さあ、どうやって聞けば良いのか。勇輝は視線を泳がせると、その先で沙羅が拳を握り締めてガッツポーズをして応援している。

苦笑いをしながら


[帰りに久々にハードロックカフェのハンバーガー食べて帰ろうよ、誠の奢りで]


そう今、勇輝はお金が無いのである。直ぐに返信が来る。


[割り勘でクアアイナは?]


[奢りでマクドナルド]


[解ったよ。でも、用事あるから直ぐに帰るよ]


誠は勇輝にお金があまり無いと気付いたらしく、ご飯を食べさせてやるつもりでオッケーを出した。


仕事が終わりそうな時、勇輝の携帯にメールが来た


[勇輝、頑張れそう?付いて行く?]

沙羅からだ。苦笑いしながら


[大丈夫だよ。取り敢えず1人できいてみる」

視線を上げると絵里が遥かに話しかけていた。




悪とは何か?


弱さから生じる


全てのものである


ニーチェ




勇輝は会社を出ると真っ直ぐにマクドナルドに向かった。既に誠はマクドナルドに居た。


「何食べる?」


「ベーコンレタスバーガーセット」


「いつも同じだな。ジンジャエール?」


「うん」

誠は勇輝の分と自分の飲み物を買って来た。


「誠は食べないの?」


「この後、約束が有るんだ」


「どうしたの?デート」


「えっ、何でもいいだろ。。。姉ちゃんと約束が有るんだよ」

勇輝は誠のお姉さんにも会ったことが有る。優しい感じの誠より、少し気が強い感じだ。


「ところでさ、、、」

勇輝はやっと本題に入る。ジンジャエールを口に含み


「昨日、あの後に遥香と何か有った?」

誠は慌てながらも心の中で予想していたのか、それとも聞いて欲しかったのか、勇輝の目を1度見て視線を外しながらこたえた


「なんで、遥香が何か言ってたの?」


「ううん、違うよ。昨日と同じスカート履いてたから」


「よく見てるな」


「まあね、観察力有るから」

勇輝は少し調子に乗っている。


「観察力有ったら、昨日は俺の誘いは断っただろ」


「???なんで???」

勇輝は首を傾げている


「遥香は昨日、お前を狙ってたと思わなかったの」


「思わなかった」


「やっぱりね」


「あの後さ、遥香とBARに行って飲み直したんだ。そしたらせっかく短いスカート履いて脚を出して来たのに、勇輝が気付いてくれないだの。2人きりの時間を何とか作ったのに皆んなが来ただの、そんな事言いながら沢山飲みだしてさ」


「え、あのミニスカートはそういう事なの」

勇輝はミニスカートや女の子の脚は大好きだ。但しこの時は「俺よりあんなに太い脚を出されても気付けないよ」と失礼な事を思っていた。


「それで、酔っ払ったところをホテルに連れ込んだの?」


勇輝は突然直球で聞いた

「えっ、、それは、、、まあ、、、、そうなったんだ。。、向こうも行こうって言ってたし」


「ええええええっ、マジでぇ〜」


「勇輝、お前が悪いんだぞ」


「何でだよ、何が悪いんだ?誠が悪いんだろ。手を出したのは誠なんだから。で、どうするの今後」


「この後、2人で会って話してみる」


「えっ、お姉ちゃんじゃ無いの?」

それぐらい気付くだろ勇輝。。。


「誠はどうしたいの?」


「遥香は勇輝の事を好きそうだし、考えてる。俺は遥香と付き合いたい」


「えっ、遥香は俺を好きなの。そんな事無いんじゃ無い」

おいおい、遥香と付き合いたいって言ってる誠の前で嫌な顔をするんじゃない。


「昨夜のBARでの事はそういう事だろう。でも、言ってみるよ。俺と付き合ってくれって」


「凄いなぁ。強いなぁ2人とも」

これは、本当に自然に出た言葉である。勇輝には2人みたいに素直に周りに想いを伝える事はなかなか出来ない。いや告白など、1度もした事が無いのだ。


誠も遥香も恋をしているのだろう。

しかし実際のところは相手が欲しいだけで、遥香が自分にとって素晴らしいから好きなのでは無く、勇輝が誰よりも好みの顔だから付き合いたいのでは無く、手が届きそうだから好きになってみて恋をしようとしているのである。


失敗を恐れて可能性の高い選択を、しているので有る。


勿論、それはある意味正しい事だ。


全ての人間が最高の相手を手に入れれる訳がない。

そんな事が出来るのは一夫多妻にでもしなければ無理な話だ。皆、自分の心の中で「自分にとってはこの人は最高の人」「自分にとってはこの人はカッコいい」そう言って恋をするのであろう。


しかし、これは勇輝には全く解らない事なので有る。

勇輝は手の届くものはあくまでもそれだけの価値しかないもので、手の届きそうに無いものばかりを求めてしまう。

常に最高のものに憧れてしまう。

小学校の時もクラスで1番可愛い子を好きになり。それ以上の人を見つけなければ想いは変わらない。


勇輝が人の事を好きと言うのは次が簡単には無い告白となり。簡単に想いを伝えられない。

誠や遥香は多分、この恋心がダメなら半年後には違う恋をしているだろう。


「俺は誠の事を応援してるよ。ダメだったら連絡しておいでよ。励ましで一晩カラオケだな」


「勇輝は頼りになるなぁ」

本当にそうだろうか、勇輝は弱いんだと思う。本当に強ければ、ちゃんと遥香と向き合って自分の気持ちも伝えて、遥香は新しい道に進みやすくするだろうに。


「じゃあ、遥香と会ってくるよ」

そう言って誠は立ち上がった。


こういう時の男心は勝手で有る。


遥香に全く興味が無いくせに、自分に想いが有ると知った途端に勝手に自分の物と思い込む。

そして、誠のところに行くと淋しいなと考えてしまったり。誠と遥香が付き合ったら嬉しいなと考えたり。


男は皆がそうなのか?勇輝だけがそうなのか?

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