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Mousse Chocolat Framboise  作者: カフェと吟遊詩人
20/25

デバラセ プロンジュ

勇輝は、はじめは恥ずかしさのあまり2人が入ったホテルの前をウロウロとしていたが、そっちの方が恥ずかしい事に気付き、今は壁にもたれ掛かりホテルの入り口が見える位置に立っていた。


しかし、恥ずかしいというだけで無く1人でこの後にどうして良いのかが解らない。


2人が出て来たタイミングで突撃して証拠を掴んだとしても、今後の課長との関係が怖い。

絵里ならその辺の事まで考えているだろうから早く絵里と相談したい。


<あと、どれ位でこっちに来れる?>


どうしても落ち着かずメールを送ってしまう。


<もうすぐ出るよ。あと、助っ人を送り込んだから上手くやってね>


助っ人?「まさか誠では無いよな」揉める原因でしかない。


<えっ?誰?>


<勇輝がいる場所と大体の事は伝えたから。詳しい話はお互いにして。要は課長が出てきたら2人で突撃して、偶然に会った振りをすればオッケー!私や沙羅じゃ、ワザとらしいでしょ>


こちらの質問は無視。「なるぼど、第三者か」て、誰だよ。


勇輝は人見知りなので、あまり友人がいない。絵里は会社で普段から色々な部署に顔を出していて、交友関係が広い。勿論、勇輝が知っている人では有るだろうが。


勇輝のバイブが鳴っている。

見知らぬ番号からだ。


「はい」


「あの、絵里さんから頼まれたんですが、、、石井です。石井一美です」


勇輝は額を押さえた。やはり絵里は1枚も2枚も上手だ。石井一美さんは総務部の1つ歳下の女性だ。


以前に勇輝に紹介したいと言われていたが、人見知りで緊張するので適当に断っていた。


「はい、、、石井さんですか。絵里から聞かされて無かったもので、、、どうされました」


どうされましたか?は可哀想だ。勇輝の思いつきに巻き込まれた形なんだから。


「あの、絵里さんに勇輝さんが困っていて助けて欲しいらしいからと頼まれまして。まさかホテル街だとは思わなくて」


「詳しい話は聞いて無いんですか?」


「何も聞いて無いです」


勇輝は完全に絵里にハメられた事を悟り。今いる場所を出来る限り細かく伝えた。ここで石井さんに冷たく当たっても仕方が無い。


「お待たせしました」


石井さんは線が細く顔も比較的整っているという印象だったが、とくに接点が無いので気にもとめていなかった。

会社と違いオシャレをしているのか、可愛く感じる。いや、実際に石井さんは可愛い。

会社での男性人気は高い方だ。

おとなしく清楚なイメージが男性陣の中には有るようだ。


まあ、実際には清楚で無いとは言わないが、絵里と飲みに行ったら普通に大騒ぎして、酔っ払う事も有れば二日酔いで朝から静かに頭痛に耐えている時も有る。

普通の大人しい女の子だ。


「えーと、じゃあ詳しい事情と今から何をするかを伝えるね」


絵里が何も説明していないことを最初は恨んでいたが、考えてみたら口下手コミュ症の勇輝には説明に時間が取られるのは助かった。


全部説明が終わった時の石井さんの顔は驚き以外の何物でも無かった。


それはそうだ、いきなり別部署とはいえ会社の課長と同僚女性の関係を聞かされ、更にその不倫現場に突撃する事を聞かされたのだ。


それも、突撃するのが自分なんて、、、、誰もが体験する事では無い。


そう言えば


「石井さん!大丈夫なの?俺なんかとホテル街で課長と遥香に会って」


石井さんは一瞬驚いた様な顔をしたが、少し微笑んで


「大丈夫ですよ」


と、だけ応えた。少し顔が意地悪そうに見えたのは気のせいか。




絵里と沙羅は恵比寿から電車に乗り新宿に向かっていた。


「勇輝は上手くやるかなぁ、ちょっと心配になってきた」


絵里は本当は帰ろうかとも考えていたが、勇輝の事が心配になってきたのだ。


「石井さんを巻き込んだのは心配じゃ無いの?」


「あの子はしっかりしてるし、ハプニングに強いから何とかするよ。。。。むしろ、、、あのクソ鈍感男の勇輝が気付くかどうか」


「石井さんは勇輝のこと好きなの!」


「えっ⁈知らなかったの」

絵里は逆に驚いている。


「知らなかったよぉ」


そう言って沙羅は続けて話す


「勇輝は鈍感なんじゃ無くて、ネガティブの塊だから悪い方にばかり考えて、好かれてる筈が無いって考えちゃうんだよ」


「なんか、沙羅は勇輝に優しいし理解してあげてるよね。私はスパルタ方式だけど。沙羅が勇輝と付き合えたら良いのにね」


「私は、、、勇輝の事は大好きなんだけど。 男としてってならないんだよね」


「まあ、私もそうだけどね」

絵里が沙羅に同意した時、新宿駅に到着した。





勇輝は石井さんと変わらずホテル街で2人立っていた。知り合いに会ったら恥ずかしいとは思わないが「石井さんの知り合いに会ったら申し訳ない」と、考えていた。


「まだ、出て来ないね。石井さん、別に帰ってもいいからね」


石井さんは不思議そうな顔をしながら


「大丈夫ですよ。勇輝さんは私と一緒にホテル街に居ると恥ずかしいですか?」


「そんな事ないよ。ぜんぜん、光栄です」

勇輝は予想外の問いかけに焦り意味の解らない返事をする。


「あっ⁈あれ課長じゃ無いですか?」


「本当だ!」


2人は慌てて、何故か小走りで不自然にホテルの出入り口に向かう。


そこに遥香も少し遅れて出てきた。


「お待たせ。ハンカチを落としちゃって、、、、。勇輝⁈と、、、」


「遥香?えっ⁈課長ぉ〜⁈」

かなりワザとらしい演技だが、まあ頑張った方だ。


「勇輝、、、なんでこんな所にやっぱり罠だったの、、、、石井さん?」

課長は嵌められたと思った瞬間に隣にいるのが会社で人気のある石井さんである事に驚いた。


「石井さんが、、、なぜ勇輝と?」

遥香は嫉妬心を隠せない顔だ。自分も男といるのだが。


「石井さんと勇輝は、、、そういう関係なのか?」


矢継ぎ早に質問されて、勇輝は本題に入れずにいる。


「勇輝、石井さんと付き合ってるの?」

課長と遥香の2人は自分達の置かれている現状を忘れてしまっている。


そして勇輝も慌ててしまっているのも有るが、2人の勢いに押されてしまっている。


「課長と遥香さん、今このホテルから出て来ましたよね。2人はそういう関係なんですね」


見るに見かねてか、女としての好奇心からか、石井さんは切り出した。


課長と遥香はやっと自分達の置かれている現状を思い出した。


「いや、そういう訳では、、、」

課長は慌てて言い訳を探している。


遥香は、、、嫉妬心も有り何も思い浮かばない。


「でも、ホテルから出て来ましたよね」


やっと喋り出した勇輝。石井さんにだけ喋らせるわけにはいかないと考えたらしい。


「そうだが、えっとだなぁ」


流石に芸能人みたいにラブホテルで相談に乗っていたとは言えないらしく、課長は何も言えなくなった。


「2人は何?2人もこんな所で何してたの?ホテル街でいるって事は、そういう関係なの⁈」


遥香は変わらず少し怒り気味の口調だ。


「いや、そういう訳では。。。」


自分に押しが入ると勇輝は答えられない。ヘタレ、、、。


「新大久保で韓国料理を食べてました。お腹いっぱいなので少し歩く事になって、新宿に向かってました」


石井さんはサラッと言ってのけて遥香を少し強く見ている。「この子はデキる子なんだろうな。きっと仕事もデキる女の子なんだろう」勇輝は全く関係ない事を考えていた。


「そんな事、、信用出来ないじゃない。。。だって、、、」


遥香は押され気味だ。

課長は遥香がキレ気味なのに驚いている。

勇輝もどうして良いかオロオロしながら「石井さんは堂々としてるなぁ」と感じていた。


「まあ、信じて貰えなくても結構ですよ。私達のホテルから出て来た所をお2人が見たわけでも無いですし」


少し意地悪な事を遥香に向かって言う石井さん。

課長は額に手を当てて「もうどうしようもない」と思考を停止している。


「でも、、」

遥香の怒りは収まらない。まだ何か言いたげだ。


そこで、石井さんがトドメを刺す。


「私はホテルに行ってたと思われてても平気ですけどね」


「ええ!」


勇輝が思っている方向と反対から声がする。

課長が思いの外に驚いている。


「石井くんは、、、それは、、いいのかい?」


さっきまで[石井さん]と呼んでいた課長が何故か[くん]付けで呼ぶほど驚いている。


石井さんは少し黙っていたが、


「もう、良いですか?お2人の邪魔をこれ以上するのも申し訳無いので」


「⁈」


課長と遥香は何も言えずにいる。


「そうだね。行こうか石井さん」


何も言えず黙っていた勇輝のやっとの言葉。


「では、失礼します」


石井さんは一礼してその場からゆっくり歩き出した。





「はあ〜、緊張したけど何か楽しかったですね」


石井さんはまだ興奮が収まらない様で顔が紅潮している気がする。

むしろ今の方が思い出して緊張しているのだろう。


「僕はまだ緊張してるよ」


勇輝は明日、課長に何を言われるか心配していた。まあ、その為に絵里でなく石井さんなのだが、いざとなったら「偶然通りがかっただけです」で通すしかない。


「自分は良いけど、石井さんは大丈夫なの?」


色々な意味で勇輝は気になる。


「会社で課長に圧力とかかけられたら申し訳ないよ」


続けてこんな事を言ってしまう勇輝。先程の石井さんの言葉は気にならないのか。


「私は平気ですよ。実はですね、ちゃんと撮れているか解らないですが、2人に向かって行った時からしばらく携帯の動画を撮ってました。最低でも音は入ってると思うんですよね」


そう言った石井さんは少し不満気な顔だ。


それはそうだ、勇気を出して女の子が思い切ってあそこ迄言ったのにスルーは無いだろう勇輝くん。


「あっ⁈絵里からメールが来てる、、、新宿に着いてるって。電話してみる」


石井さんの感情に気付いているのか、それとも気付いて無いのか、どちらにせよイケてないよ勇輝。


「あっ絵里。うん、、、そう、、、上手く行ったと思う。。。石井さんがね、、、そう。。。解った」


電話をしている横で石井さんは残念そうな顔をしているのに全く気付かない。


「絵里達と伊勢丹で合流する事になったよ」


さっきまでより一つテンションが上がった話し方の勇輝が少し気に入らない石井さんで有るが、勇輝は全く気付かない。


「私、、もう用事が終わったんですよね。帰っても大丈夫ですか?」

少し拗ねた様な石井さん。



「えっ⁈絵里がお礼に晩御飯に絶対石井さんを連れて来いって」


おい、少しは気付いてあげなさい。


「絵里さんが言うなら。。。」


嬉しそうな残念そうな複雑な顔をしている。「石井さん帰りたいのかなあ」と、全く見当違いな事を考えている勇輝。





「勇輝にバレちゃいましたね」


遥香が、全く違う事を思いながら課長に話している。


「勇輝には明日、誰にも言わない様に釘を刺しておく。問題は石井さんの方だな」


課長の心の中は石井さんが勇輝に気がありそうな事を問題に思っている。


「石井さんには明日朝一で私から話しておきます。女子の噂話は怖いですからね」


こちらも本当は勇輝が石井さんとデートをしていた事が気に入らない。


2人とも見当違いな事を考えているが、自分達の置かれている状況を解っているのだろうか?





「勇輝、お疲れぇ。一美ぃ有難うね」

絵里が向こうからやって来た。


「ちょっと絵里。こういう事は早目に言ってくれる。ビックリしちゃったよ」


そう言いながらも勇輝は2人に会えて楽しそうだ。何だか疎外感を石井さんは感じていた。


「勇輝、石井さんとお茶でもした?」


沙羅がニコニコしている。


「そんな時間無かったよ。ねえ、石井さん」


石井さんは黙って頷く。

どうやら沙羅を警戒している様だ。


「私達、お腹いっぱいで甘い物も食べて来たんだ。だから、石井さんと2人で何か食べて来なよ」


沙羅が石井さんから何か感じ取ったのか、石井さんにとってはとても嬉しい事を提案する。


「そうだね、ちゃんとお礼しなきゃね。晩御飯も食べさせてあげるんだよ。一美、お礼して貰いなよ」


絵里も後押しする。


「はい。わかりました」


石井さんは少し明るくなっている。


「絵里は石井さんの事、一美って呼んでるんだね。私と勇輝もそう呼んでいい?」


勇輝は驚いた顔で沙羅を見ている。


色々と感じ取ったのか、沙羅に笑顔で


「はい。是非そう呼んで下さい。仲良くして下さい」


と、頭を下げている。


勇輝は意味が解らない。

2人は帰ろうとしている。それは少し困る。いや結構困るし、沙羅との時間は短い。想い出は沢山作りたい。


「お茶は皆んなでするからね!報告も聞きたいでしょ!はいっ、どこに行く」


強引に話を進める勇輝。こんな時は逆らうと拗ねてしまう。

女性3人は目を合わせて、女性だけが解る視線で会話をしている。軽く3人とも微笑み


「勇輝に奢ってもらうか」


絵里は笑いながら勇輝の手を引く


「で、どこでお茶するの」


沙羅も歩き出した。もう、2人とも姉の様だ。


その後ろを石井さん、、、いや一美は歩き出した「いいなぁ、仲良しで」そんな事を思いながら歩いていた。

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