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Mousse Chocolat Framboise  作者: カフェと吟遊詩人
16/25

フィルメ

<今日、関西に行ってたんだって?お土産楽しみ。。。火曜日に食事2人で行かない>


勇輝は携帯を布団に投げた。正直なところ遥香の事は今はどうでも良かった。

勿論、普段はなんだかんだでちゃんと彼氏を作って幸せになって欲しいと思っている。


しかし、今は沙羅の事しか考えられない、いや自分の事ばかり考えている。孤独を恐れて、ただ怖がっていた。


しばらくしてまたバイブが呼んでいる。

沙羅からのメールか気になるが携帯を取りに行く気力が出ない。

ただ、ソファーに身を任せて真っ黒な画面のテレビを眺めている。部屋の中は静寂に包まれている。


頭の中は同じ事ばかりグルグル回っている。



突然の物音に勇輝は全身で反応した。飛び上がりそうなほどに。玄関のドアがノックされた。





誠は石川町に泊まる予定だった。しかし、夕方過ぎからホテルに入った2人はさすがに休憩でホテルを後にしようとしていた。


実のところ遥香は泊まりたくは無かった。明日は夜に約束が有る。新しい服と下着に変えたい。


お風呂から出るとすぐに髪を乾かし始め、帰る雰囲気を作り出した。


誠もホテルに来て納得したのか、その雰囲気に流される事にとくに反抗はしなかった。


<沙羅と勇輝が関西に行ってたのは知ってる?電話で喋ったら沙羅がなんか暗いんだけど、何が有ったんだろうね。勇輝からなんか聞いてる?>


絵里からメールが来ていた。遥香は首を傾げ


<とくに聞いてない。2人、喧嘩したのかな?勇輝にメールで聞いてみる>



絵里は舌打ちした「そういうことをしろって言ってる訳じゃ無いんだけど。やっぱり遥香に聞いたのは間違いだった。頼る奴がいなくて遥香に聞いた私が馬鹿だったわ」


「誠、もうソロソロ出れる?」


「トイレ行ってからでいい?」

テレビを見ていた誠はトイレに向かった。

遥香は携帯を取り出しメールをしようとしたが、少し打って止まった。悩んだ末、メールを消去して携帯を鞄にしまった。


「誠、帰ろう」


「晩御飯はどうする?」


「私、パンケーキでまだお腹いっぱいだよ。真っ直ぐ帰る」


「えっ、そうなの。まあ、疲れたし仕様がないか」


2人はホテルを後にして、石川町の駅から電車に乗った。「沙羅が元気無いんだ。何が有ったんだろう。勇輝は大丈夫なのかな」並んで座った2人はとくに会話もなく、心地よい揺れに眠りに誘われていた。



そんな中で遥香は勇輝の事を考えていた。「沙羅が元気が無いのは隆史さんの事かなぁ。それについて聞くと言う事で勇輝にメールしてみようかなぁ。勇輝に会いに行ったらダメかなぁ。あっ!行くなら着替えて行かなきゃ」


1人妄想の世界に入りながら浅い眠りについた。


東京駅を過ぎ誠と遥香は目を覚ました。それぞれの家に帰る為に別れを告げで帰路についた。




遥香は家に帰るとサッとシャワーを済ませ服を選ぶ。化粧はあまり濃くならない様に注意して、普段は使わない甘い香りの香水を吹き付け鏡の前に立つ。


「よし、可愛い」

冷静な勇輝なら「そんな事は無い」と言ってくれそうだが、今の勇輝にそこまで出来るか。


家を出て電車に乗る。

しばらく考えて勇輝にメールをする。


<今日、関西に行ってたんだって?お土産楽しみ。。。火曜日に食事2人で行かない>


返事はとくに無い。





改札を出てコンビニに寄って勇輝の家に向かう。

歩きながら勇輝に電話をかける「家に居るかなぁ?」しばらく待ってみるが勇輝は出ない。



建物の前で遥香はしばらく考えていた「もう一度電話してから行くべきか。このまま突撃するべきか」


遥香は今日は勝負を決める予定だ。「勇輝は機嫌が悪いのか?弱っているのか?チャンスなのかピンチなのか?」ブツブツ呟きながら、このまま部屋に突撃する事を決意した。




ドアの前に立ち深呼吸をする。

「コンコン」

思ったより強く叩いてしまった。



中からとくに返事は無い。。。

もう一度ドアをノックする。

「コンコン」

今度はさっきより少し優しく。


「勇輝、遥香だよ。出て来てくれるまでここに居るからね」


中から物音がしてドアがユックリと開く。

当たり前だが勇輝だ。しかし、いつもの勇輝とは少し違う。表情が無いく、目が赤い。眼差しは冷たい様な、力なく焦点が合ってない様な気もする。


「ゴメン、ちょっと疲れてるんだ。今日は帰って貰えるかな」


そんな事は来る前から遥香も解っている。ここからいかに終電が無くなる様にして行くかが腕の見せ所だ。


「うん、疲れてる所にゴメンね。絵里からメールが有って、、、勇輝が心配になって家まで来ちやった。少しで良いから話をしない?少しは楽になれるかも知れないし」


遥香は勇輝の表情を見て、機嫌が悪い訳ではない事は理解した。後は落ち込んでるのか哀しんでいるのか。


「今、家散らかってるから」


勇輝は1人になりたい。誰かと居るなら絵里に助けて貰いたい。


「じゃあ、外で何か飲みながらで。私が奢るから」


勇輝は少し面倒臭くなった。いや、少しイラっとしたのか。自分でもどちらか解らない。


「じゃあ、行こう」


遥香はなかば強引に勇輝の手を引いて外に連れ出そうとする。


「解ったよ。じゃあ、少し片付けるから待ってて。家で良い?何か飲み物買ってきて」

勇輝は断る事が疲れてきていた。


「飲み物持って来てるよ。勇輝はコーラ?炭酸水?両方買って来たよ」




暗い住宅街の細い道を絵里は車で走っていた。「遥香に余計な事言った気がするなぁ」絵里は、いや絵里も沙羅も勇輝も知っている。遥香が恋をちゃんとしたい人で無く、人に恋されている事に喜びを感じて、色々な人に近付いては恋多き女を演じている事を。


勿論、身体を張ってまで頑張っている遥香に文句を言う気は無いが、勇輝にだけは許せない。


いつもの勇輝なら、かわし続けると信じているが今日の勇輝は不安だ。

出会った頃の勇輝を思い出しながら絵里は胸に不安が溢れる。


車を停めて外に出る。インターホンを押すとスグに返事がする。


「はい、どなたですか?」


「おばさん、絵里です。沙羅、居ますか」


「絵里ちゃん。沙羅は部屋に居るよ。今、開けるから待ってて」

玄関が開き、挨拶を軽く交わして沙羅の部屋に向かう。


「沙羅、勇輝はどんな感じだった。3人でいる時に話すって言ってたじゃん。何で今日言っちゃったの!、、、、、泣いてるの」


沙羅はベットにうつ伏せに寝ていると思ったが、こちらを見た時には目に頬に涙が流れていた。


「、、、隆史さんとね。別れたのね」


沙羅は声にならない声で絵里に訴えかける。


「ゴ、、ゴ、、、メンね。ゴメンね。。。や、、約束してた、、、よね。耐え、、れなか、、、た」

沙羅は続けて話しているが、どうやら会話は難しそうだ。


「解った。解ったから。怒ってゴメン」

絵里はいきなりまくし立てた事を少し後悔しながら「今日は勇輝のフォローまで出来そうも無いよ。ゴメン勇輝」と心で許しを求めていた。


「ほら、今日は私が泊まってあげるから。愚痴りたいだけ愚痴りな」

絵里は沙羅の回復を急いだ。





遥香は勇輝の部屋に入ってから、いつもと少し違う勇輝に戸惑っていた。「何か、根本から違う気がする」


しかし、ここでジッとしていても何も始まらない。


「大丈夫?元気無いよ。何か有るなら話してみたら」


勇輝は視線を遥香のやや後方に焦点を合わせている。


「別に話す様な事は無いよ」


全く話す気が無いようだ。


遥香は勇輝の隣に移動した。腕と腕が振れ合う距離。遥香の甘い香水の匂いが優しく香る。


甘い匂いが勇輝の頭の中を優しく刺激する。


そっと勇輝の腕に遥香の腕を絡ませる。胸を腕に押し当てて頭を勇輝の肩に乗せる。


「少しでも良いから話してみて。勇輝の力に少しでもなりたい」


勇輝の視線はさっきと同じ場所を見ている。


勇輝の髪の毛に優しく触れる。その手をそっと頬まで移し手を止める。涙で少し濡れた跡を感じる。


勇輝の前に移動して勇輝の頭を抱き締める。勇輝の顔は完全に遥香の胸に埋もれていった。


「何も話せ無いなら、朝まで私が側に居てあげる。精一杯、元気付けてあげる」


遥香の頭はユックリと下に下がって行き勇輝の顔の前に達した。そっと目を閉じて勇輝の唇に自分の唇を近づける。


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