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Mousse Chocolat Framboise  作者: カフェと吟遊詩人
11/25

コンジュレ

誠は必死だった。沙羅にメールをするが未だに返事はない。


あまりしつこくして、嫌われたら元も子もない。でも、じっとしていられない。勇輝にメールだ!


<まだ皆んなで遊んでる?沙羅にメールしたんだけど帰って来ないんだ>


メールを送信し終えると。「沙羅とどこで会うかなぁ。やっぱり美味しいものが必要だな。2人でミシュランフレンチ⁈頑張り過ぎだな。和食の良いところかな。そうだ!美味しいお店を見つけたから1人じゃ辛いからって理由でもう一回メールだ」


うん、しつこい奴だ。でも、こんな時にプライド持って何もしない奴よりはマシかな。


<新橋に美味しい和食のお店を見つけたんだけど1人じゃ行きづらいから付き合って。奢るからさ>



その頃、沙羅は絵里に家まで送ってもらっていた。

「じゃあね絵里。ありがとう」


「じゃあ、会社でね。誠の事、聞かせてね」


「わかったぁ」

2人は眠そうに別れた。



沙羅は取り敢えずシャワーを浴びてテレビを見ながらボーッとしていた。

携帯が鳴っている。メールが来ている。誠からだ。

なんだか疲れていて確認する気がしない。「寝てた事にしよう」沙羅は目覚ましをかけて再びテレビに目を移し、気付けばソファーで寝ていた。



つまり今夜、誠には返事は来ない。誠はヤキモキしていたが相手は既に寝ている。

残念ながらこれが他の知り合ったばかりの男なら返信は有ったかも知れない。


でも、誠には無いのだ。


誠は心が落ち着かず、遥香にメールをした。


<今日は楽しかった?もし良かったら電話していい?>


ゲスい男だ。誠は本来は優しい人間なのだ。恋とは恐ろしい。いや、恋しようとしている人間がズルいだけかも知れない。





樹々にとって最も大切なものは何かと問うたら


それは果実だと誰もが答えるだろう


しかし実際には種なのだ。


ニーチェ





誠は一つの果実を手に入れて、新しい果実が欲しくなった。幸せの種を手に入れる前に。


時間を少し前に戻します。


遥香は日暮里で皆んなと別れた後、スーパーで食材を買っていた。そして、その足で向かった先は、、、勇輝の部屋である。




勇輝は古い部屋に住んでいる。インターホンすら無い。ドアをノックする。


中から物音はしない。返事も無い。


もう一度ノックしてみるが、やはり返事は無い。「寝てるのかな?」遥香はそう思い、携帯に電話してみた。部屋の中で電話が反応している。勇輝が出た。


「はい。」

眠そうな、体調が悪そうな声がする。


「遥香だけど、、、今、部屋の前にいるんだけど、、、雑炊食べるかなっと思って」


「えっ⁈ちょっと待って。散らかってる。少し待って」


「うん。待ってる」

勇輝は不意を突かれてか、体調からか、判断を間違えた。ここは体調が悪いからと追い返すべきだっただろう。


しかし、そんな事は全く思いつかず部屋を片付けていた。

5分から10分で部屋を片付けて勇輝はドアを開けてしまった。


遥香は冷えないのかって、大丈夫。勇輝よりは脂肪があり燃焼できる。


ドアを開けて、勇輝はやっと気付いた、自分の判断が間違っているという事に。


遥香の微笑みが、勇輝には獲物に狙いを付けた蛇に見えた。



遥香は料理を作り出す。女子力の高い服で。勇輝はそれを始めは見ていたが、そのうちに眠りについた。頭痛が止まない。取り敢えず帰って欲しいが、今更言えない。


どれ位時間がたっただろう。あまり調理道具や食器の無い勇輝の部屋で何とか(?)雑炊を作り終えた遥香は勇輝を起こした。勿論、その前に鏡で髪型と化粧のチェックはした。


「雑炊出来たよ」


「んっ、うん。ありがとう」

決して心からは言ってい無い。


「熱いから私が冷まそうか?」

勇輝は慌てて「それは嫌だ」と心で言いつつ


「大丈夫、自分で出来るよ」

と笑顔を作る。


雑炊を見ると、まあチャンと出来てはいる。遥香がこの雑炊を作るのに異常に時間がかかった事など勇輝は寝てて解らない。


しかし、勇輝は心の中で思っている。「何で皆んなでサービスエリアで晩御飯食べたのに雑炊を作りに来たんだ?」



遥香的には部屋に来る理由が必要なだけで有った。

雑炊なんて実は作った事ない。「料理は母親がするもの」と心に決めてた。なので味見すらしていないものを勇輝に出していたのだ。



勇輝は雑炊に口を付けた。。。味がしない。「お粥⁇」そう、出汁の味など何もない。お湯に具材とお米、煮て卵を入れて終了。お米に火が入っていたのが奇跡だろう。お米を洗う知識は有ったようだ。


「ごめん、体調が悪くてあまり食べれない」


「うん、大丈夫だよ。食べれるだけ食べて」

勇輝は箸を置いて再び謝った


「ごめんね」

しかし心の中では「ちょっと自分で食べてみなよ。しかも空腹ですら無いだろ!」

そんな勇輝に全く気付くわけでは無く


「大丈夫、薬飲む?買って来たんだ」

これは勇輝は少し喜んでしまった。男の一人暮らし。薬の買い置きもあまりない。風邪薬は既に切らしていた。


「ありがとう」

勇輝はは薬を受け取り水を《自分で汲みに行って》飲んだ。遥香、気が利かないらしい、、、。


薬を飲んで少し落ち着いた勇輝はじっと座り続けている遥香を変に思いながら話かけた。


「ありがとうね」

実際、これしか今は思い浮かばない。


「うん」

精一杯の笑顔。勇輝には正直、、、。


しばらく下らない会話をしていたが、勇輝は思わず言ってしまった。

これも作戦ミスだろう。いや、風邪のせいか?薬が効いて来て意識が睡魔に負けているのか。


「誠とはどうするの?」

遥香は待っていたとばかりに哀しい顔をした。


「心配してくれるの?」

これはヤバイパターンだ。

その時、遥香の携帯が鳴った。勇輝は心から喜んだ。「危なかった。薬で意識ががヤバイ。早く寝て逃げなければ」


遥香は携帯を覗き込んで、勇輝に気付かれない様に電源を切った。誠からだった。そう、さっきのメールだ。


「ちょっと具合が悪くなって来たから寝るね」

この言葉で終わるはずだった、勇輝は。しかし遥香は勇輝の予想に反した。

勇輝の予定では


「じゃあ、帰るね。ゆっくり治してね」で、あった。しかし遥香は


「そう、じゃあしばらく様子を見て勇輝が大丈夫そうなら帰るね」


「んっ⁈」なんかおかしい。「普通は風邪で苦しんでる人がいたらそっと寝かしてやらないか?お前は奥様か!」心で呟いたが既に元気は無い。


仕方がない。遥香側から見ると彼女は奥様とまでは言わないがそれに近いポジションを狙っているのだから。


勇輝は慌てて布団に包まり睡眠に入った。「早く寝なきゃ。早く寝なきゃ。」心で呟いている?恐怖(?)で少し睡魔が負けている。


その間、遥香は何をしていたかは解らない。出来る女子なら食器類を片付けていただろうが、朝見てみるとそれは台所に置きっ放しであった。


その時遥香は部屋を片付け、、、いや漁っていた。女性という生き物の性なのか。


どうやら女の気配は無いらしい。そして、そっと自分の気配を残す。ポシェットから女性しか買わない様なハンドクリームを出しそっと棚に置く。


勇輝を見ると寝ているらしい。食器類をシンクに持って行き、上着を取り、、、着るのかと思いきやポケットから何かを取り出し勇輝が寝ている側に置いた。これが何かは皆さんの想像にお任せする。


電気を消し帰るのかと思いきや、薄着になって勇輝が寝ている布団に入って行った。


勇輝は、、、目が覚めてしまった。しかし、動くわけなはいかない。しっかり寝たふりを続けている。


遥香はそっと勇輝の腕に触れた。そして一気に勇輝に引っ付いてみたが反応が無い。


勇輝は決して起きてはならない。これは戦いだ。起きたら食べられてしまう。あの大きな口で、、、。


数十分いや勇輝には数時間に感じられた戦いが終わったのは流石の遥香も今日の銚子日帰り旅行で疲れていた為か眠りについた時だった。


勇輝は疲れ切っていた。身体は力を入れ過ぎて筋肉が痛い。遥香の寝息を聞いた時、勇輝もゆっくりと眠りについた。





誠はモヤモヤを抱えたまま朝を迎えた。睡眠はちゃんととったのだが、沙羅だけで無く遥香にも連絡がつかなかった。

モヤモヤを抱えたまま通勤すると、電車の中でメールが来た。


<昨日はごめんね。寝ちゃってた。今晩なら逢えるよ>

遥香からで有った。




遥香は少し不機嫌な朝を迎えていた。勇輝は朝も起きるわけにはいかず、出勤時間ギリギリまで寝ているフリをした。遥香は家を出る準備を進めていた。


「大丈夫?勇輝。今日は休む?」

そういう発想は無かったが、ここは休むべきだと勇輝は思い。


「ごめん、そうする。後で課長に電話する」

体調が悪い事にならなければ遥香も困るのである。女としてのプライドが傷つく。隣で寝ているのに朝まで手を出され無かったのは勇輝が体調が悪いからだと思い、、、いやそう信じきっていた。



遥香は勇輝の家を出ると、携帯の電源を入れた。誠からはあの後にもう一件メールが来ていた。


<寝てるのかなぁ〜。>

慣れない道を駅に向かって歩きながら誠に返信をした。


<昨夜は、、、、、、、今夜は逢えるよ>

勇輝を釣り損ねた遥香はまだもう少し誠をキープしなければならないらしい。



そして、誠のもう1人のメールの相手は、、、。会社に着いてもまだ誠に返信はしていなかった。なぜ?単純に忘れていただけであった。


誠は我慢できずに会社に着くと沙羅にメールした。


<おはよう。誘ったのは迷惑だった?>


沙羅は「はっ!」とメールが来ていた事を思い出したが、決して慌てるで無く返信する内容を考えていた。しかし、途中で「勇輝は来てないんだぁ。風邪が悪化したのかなぁ」と考えたり。

絵里とふざけてたり。結局返信したのはお昼休みであった。


<美味しい和食食べたいなぁ>


誠はやっと来た返事が前向きな言葉だった事に喜んだ。この時、遥香の事は少し忘れていた。思わず「今夜行こう」と誘ってしまいそうだった。しかし、そこは抑えて即返信。


<いつ行く?それも兼ねてお昼一緒に食べようよ>


メールを見た沙羅は絵里に目配せした。絵里は何か感づき沙羅の側に来た。


「誠にお昼と和食に誘われた」

小声で遥香には聞こえない様に話す。


「マジでぇ。行動が早いねぇ。どうする」


「うーん、皆んなで行こう」


「皆んなって、勇輝は居ないよ」


「遥香も誘う」


「お主も悪よのぉ」

絵里は笑っている。沙羅と絵里に比べれば誠位の男なんてまだまだ子供だ。遊ばれてるよ。



誠は待ち合わせの定食屋に向かった。少し遅れたのは作戦(?)、では無く昨日から待たされたメールの仕返しのつもりだった。

しかし、着いてみると見事にやられた。席には沙羅、絵里、遥香、そしてなんと課長までいるではないか。

完敗である。


「遅いよ誠。私達注文終わったから早く注文しな」

絵里が心の中で笑いながら誠を急かした。

誠はロースカツ定食を注文して、冷静を取り繕った。


「誠、美味しい和食見つけたんだって」

絵里からの攻撃。誠はもう何も出来ない。「なるようになれ」


「皆んなで一緒に行こうよ」

沙羅は天然で発言「ナイス助け舟」誠は沙羅が助けてくれたと勘違い。


「ふーん、どこに有るの?」

美味しい和食の話を初めて聞いた遥香は納得はいかない。「なんで私が誘われる前に沙羅と絵里が知ってるの!」自分の事は棚に上げて遥香は少し不機嫌だ。


その時課長はビーフシチューを食べていた。


「い、いつ行く新橋の和食」

誠はかなり劣勢だ。「勇輝助けてくれ」勇輝は家で寝ている。


「来週行こうよ。勇輝も体調回復してるだろうし」


「そ、そうだな。勇輝も参加だな」

誠は言いなりだ。


場の空気が固まりそうな時。


課長が言葉を発した。


「私も参加していいが、割り勘だぞ」

絵里は笑い出した。


「課長、勿論ですよ」

沙羅と絵里は楽しそうだ。遥香も少し気が緩んだらしい。課長の間の悪さに笑っている。誠は救われた気分だった。




勇輝は体調も回復して暇であった。


「お腹空いたなぁ」

冷蔵庫に昨夜の残骸(?)の野菜が、有った。これだけじゃお腹は膨れない。


「ネギラーメンにニンニク沢山入れて元気になるか」

勇輝はシャワーを浴びて外に出た。お昼過ぎの日差しは暖かかった。


ラーメン屋に着いて注文を終えると、朝からリズムが違い見てなかった携帯を確認する。


いや、嘘だ。本当はこの人からメールが来ているのを感じていて携帯を見なかったのだ。


<元気になった?今夜は行けないけど、体調が悪い様なら言ってね。駆けつけるから>


想像以上の内容だった。何と返信して良いか解らず携帯を置く。「沙羅に相談かなぁ」勇輝は声にならない声で呟いた。

しかし、沙羅に昨夜の事を何と説明するのだろう。

勇輝がそんな事を考えている時、遥香は少しピンチを迎えていた。



定食屋からの帰り道。絵里は遥香に小声で話しかけた。


「昨日は誠と仲直りしたの?泊まったんでしょ」

絵里は遥香の服装が昨日と同じなので当たり前の様に話した。


「う、うん。まあまあかな」

遥香は絵里に目を合わせずに少し変な返答をした。

絵里は変に思いながら誠の尻を叩いた。


「しっかりしなよ」

誠は何事かとキョロキョロしている。絵里はチラッと遥香を見るが、遥香は課長と喋っていて、こちらに気付かないフリをしている様だった。課長は楽しそうに遥香と会話していた。


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