第1話 召喚
玄鴉です。
あらすじにも書きましたが、処女作の為、文章力が最低です。
読まれる際は、自己責任で見てくれると嬉しいです。
「うわぁ、綺麗な桜。早起きして良かったかな」
薄桃色の花弁が舞う中、漆黒の髪をポニーテールにした少女が嬉しそうに顔を綻ばせた。
今時は珍しい膝下までの濃紺のスカートを靡かせ、桜の花弁に手を伸ばす。
「去年は早く散っちゃったから、今年は長く咲いてて欲しいなぁ」
ぽつりと呟くと桜の木にそっと触れ、幹を撫でる。
──・・れ。
風の音に混じり、何かが聞こえるのに彼女は気が付いた。
きょろきょろと辺りに視線を向け、耳を澄ますように手を耳に翳した。
──・たれ。・の・・み、よ
「誰なの?何て、言ってるの?」
何かが掠れているものの人の声だと理解したのか、問い掛けながら聞き逃さないように少女は、意識を傾けた。
少女は、意識を傾けてしまった。
足元に現れた淡く光る陣にも、気付く事は無く。
──来たれ。古の姫君よ!
「え?」
その言葉と共に陣は一瞬だけ激しく光を放った。
光が収まった後には、光る陣だけでは無く、少女の姿すら無くなっていた。
ただ一つ、少女が持っていた通学用の鞄だけを残して。
ーーーーーー
「ん‥え?‥‥此処は、何処?」
意識を失っていたのか、目が覚めた。
ぼんやりと周りを見ると女性をモチーフにしたステンドグラスが目に入る。
さっきまでいた桜並木じゃない!?
「召喚に応じていただき感謝します。古の姫君よ」
穏やかな声をかけられて思わず振り返ると、そこには二人の青年と同い年くらいの少女がいた。
さっき声をかけてきたのは、若そうな栗毛に青い目をした青年で、神官服というのかな?金色の刺繍が襟や袖にされた純白の長い服を着ている。
他の二人も、まるで中世ヨーロッパみたいな服装をしていて、まるでファンタジーの物語から出て来たみたい。
「あの‥召喚って?それに、いにし、え?の姫君とは、何ですか」
私が疑問を問いかけると、もう一人の赤い髪に緑の目をしたマントを羽織った青年が眉をひそめて不機嫌そうに神官服を着た青年を見る。
もしかして、聞いちゃいけない事だったのかもしれない。
思わず謝罪の言葉を言おうとすると、神官服を着た青年が口を開いた。
「召喚とは、貴女様をこの場へと呼び寄せた魔術の事ですね。古の姫君とは、貴女様の呼び名であり、遙か昔に我が国へと嫁がれた姫君の事を示す言葉でもあります」
ちゃんと、説明してくれるんだ‥でも、意味が良く分からない。
そう思っていた事が顔に出ていたのか、金髪碧眼で薄蒼のドレスを着ている少女が二人の青年に提案してくれた。
「フレイ様、クロード兄様、姫君は此方の事に疎いのよ?それに、召喚されて疲れておられるだろうし。だから、詳しい話は明日にしましょう?ね?」
うわぁ‥お人形みたいに可愛い子に上目遣いで、しかも首を傾げられたら、並大抵の人なら落ちるんじゃないかな。
赤い髪の人は、不機嫌そうなのが消えて狼狽えまくってるし‥神官服の人は、全く表情を変えないけど。
「確かに、クローディア様の言に一理ありますね‥では、詳しい事は後日という事でよろしいですか?‥‥勿論、よろしいですよね?クロード様?」
へぇ、お人形みたいな子がクローディアちゃんで、赤い髪の人がクロードさんで、兄妹なんだ。
神官服の‥と言うか、もう神官で良いよね?‥神官の人はフレイさんっていう名前だね。
ん?クロードさんが青ざめてるのは何で‥‥うん、私は何も見てない、フレイさんが真っ黒な笑顔でクロードさんに迫ってるなんて、見てないよ?
「初めまして、古の姫君様。私は、クローディア・ユル・アイヴァンと申しますの」
ちょっと現実逃避してたら、クローディアちゃんが挨拶してくれたみたい。
何か、昔のお姫様とかお嬢様みたいな名前と話し方だな‥って、私も挨拶しないと!
「えと、私は九要。こっち風に言うなら要・九かな?」
「カナメ・イチジク様?」
首を傾げて私を見るクローディアちゃんは、やっぱり可愛い!
私は頷いて、年齢を聞いてみると、やっぱり同い年の15才だった。
クローディアちゃんって呼んでみると、頬を薄く染めて嬉しいって言ってくれたし、カナメちゃんって呼んでくれるみたい!
「じゃ、じゃあ行きましょう?カナメちゃん。まだ二人は話があるみたいだもの」
チラリとクローディアちゃんは、まだ黒い笑顔を浮かべてるフレイさんと青ざめたままのクロードさんに視線を向ければ、私の手を取って歩き出した。
「良いの?あの二人‥フレイさんとクロードさん?置いて行っちゃって」
「構わないわ。ああなったら暫く、兄様はフレイ様に弄られますもの‥待つだけ時間の無駄ですわ」
あ、そうなんだ‥なんか、可哀想っていうか、クローディアちゃんも慣れてるって言うか‥‥うん、気にしないでおこう。
でも、何処に行くんだろう。
「これから向かう場所は、この神殿の客室ですわ。私の部屋の隣で、部屋から見える中庭が綺麗なのよ。気に入ると思うわ」
クローディアちゃんが説明してくれる。
この神殿は、神々を統べる女神・ユーリア様の主神殿で、帝都で一番大きい事。
ユーリア様以外に、それぞれ光・闇・水・炎・地・風を司る神様がいる事。
この国はアイヴァン帝国で、アイヴァンって名乗ったクローディアちゃんは第三皇女だって事。
アイヴァン帝国は、この南大陸で一番大きい国だって事。
南大陸にはアイヴァン帝国の他に、二つ国がある事。
南大陸の他には北大陸があって、北大陸には国は無くて、魔物っていう生き物が沢山いるって事。
‥私は、此処とは違う世界から喚ばれた事。
‥‥私は、元の世界には二度と戻れない事。
「申し訳無いと思いますわ。それでも、カナメちゃんが‥いいえ。古の姫君の事が必要でしたの‥‥あぁ、もう部屋に着いてしまいましたね。それでは、ゆっくりと休んで下さいませ」
案内された部屋は、白で統一されたシンプルな部屋で‥綺麗な筈なのに、どうしても、そう思えなくて。
クローディアちゃんの言葉が頭の中を、グルグル回ってる。
もう、二度と、戻れない。
なんか、他人事みたいで現実感が無い。
分からない。
どうしたら良いんだろう?何で、私だったのかな‥?
「これから、どうなるのかな‥?」
部屋の窓から、空を見上げる。
私のいた世界と同じ、青い空と白い雲。
私のいた世界とは違う‥‥大きな太陽と‥寄り添うような、小さな太陽。
世界の違いを実感しながら、立ち尽くすしか、私には出来なかった‥。
如何でしたか?
一話目ですが、プロローグよりも昔の話になりました。
また、次話でお会いしましょう。
もし、脱字や誤字がありましたら、教えて下さると嬉しくおもいます。