第一話 X day
プロローグでは飛ばしていたけど練習もかねて幼少期から書いて行きます。
ちょっと展開急すぎたかな?
「おいこらレルカ!さっさと仕事を手伝わんか!そんな所で何をしてる!」
蓄えたあごひげをなでながら男は言う。この男こそレルカの父、リレグラ=アルメニアである。
190はある身長に筋骨隆々とした身体は50を超えた年齢を全く感じさせない。中年をわずかに過ぎていてもその整った顔立ちも全く崩れていない。何より特徴的なのが真紅に輝く髪と目である。
「まあまああなた、レルカも13歳ですよ。遊びたい年頃なのでしょう。」
くすくすと上品に笑っているのがレルカの母、カリーナ=アルメニアである。畑仕事をしているため、格好こそはみずほらしいが、顔立ち、体つきともに絶世の美女という言葉をそのまま表しているようだ。彼女もまた目の色が変わっている。きれいに輝く金髪とそれを写し取ったかのようなきれいな金色の目。あまりの色気にたったまま男を気絶させたこともある。彼女とつり合うのは今彼女の隣にいるリレグラくらいのものであろう。
父が怒りながら、母が微笑ましく見ている先では2人の息子、レルカ=アルメニアが家の煙突の上で片手逆立ちしているのである。彼は親の特徴を忠実に引き継いでいた。そのぼさぼさの髪は真紅だが、前髪の一部に一房だけ母譲りの金髪が輝いている。目は金と紅のオッドアイである。それはともかく、
「おいおいカリーナ、あまりあいつを甘やかすなよ。甘やかしてばかりいてはあいつの為にならん。もっとこう、男らしくだな・・・」
「あら、二階建てのうちの煙突の上で片手逆立ちするような子が男らしくないのかしら?」
抗議を軽く受け流されたリレグラは一瞬黙ったが、次は情に訴える作戦に出ることにした。
「あんなとこから落っこちたらただの怪我じゃすまないぞ。だからはやく・・・」
「大丈夫よ、私達の息子なんだから。」
「しかし・・・」
カリーナは夫の言葉を遮って息子に質問する。
「レルカ?落っこちることある?」
息子は一瞬間を空けて、
「ない!だいじょぶ!」
「ほら、ああいってるんだし、満足したら降りて手伝ってくれるわよ。」
というとカリーナはさっさと畑仕事に戻って行った。リレグラは諦め、内心ため息をつきつつ息子に降りたら手伝えよ、とだけいってカリーナを追いかけるように畑へ向かった。長男は既に畑で母の手伝いをしていた。
何故彼が煙突の上で逆立ちをしていたかというと、もちろん仕事がめんどくさいというのもあるが、自分の限界を知りたかったからである。は?と思う人もいるだろう。レルカは10歳の頃から、ふと、自分はどのくらいのことまでできるのだろうと様々なことをやった。村の周りをぶっ倒れるまで走り続け、倒れた所を母に見られて心配させるなとビンタされ、三日間寝ずにいて仕事の真っ最中に眠気で倒れ、心配させるなと父に拳固をくらった。
彼は自分でも何故こんなことをするようになったのか分からなかった。が、自分にできることは全てやってみたかったのだ。
そろそろつかれたな、と彼は煙突の上で逆立ちをやめて普通の体勢に戻ると、ふと何処からか叫び声のようなものが聞こえたきがした。それに加えて獣の鳴き声のようなものも・・・
次の瞬間だった。村の櫓に設置してある警鐘を打ち鳴らす音とともに拡声魔法による警備兵の大きな声が聞こえた。
「魔物だぁー!!!!魔物がきたー!!!!!」
一瞬静まり返った村はすぐにパニックに陥った。村長であるレルカの父と母カリーナは村人を村中央にある対魔物用シェルターへ必死で避難誘導をしている。警備隊は武器をもって魔物を向かえ打つ準備を始めている。
魔物が近づいている証である砂煙とわずかに立ち上る黒い瘴気。それを見た瞬間レルカの身体に熱い何かがたぎるような気がした。
ドクンッ・・・ドクンッ・・・
レルカは胸が苦しくなった。目の前が真っ白になった。次の瞬間には家の屋根から飛び降り、警備隊駐屯地の武器庫の入口に立てかけてあった槍をつかんで飛び出していた。
「レルカ!何処へいっているんだ!!早く戻って来い!」
そんな父の言葉もレルカには聞こえていなかった。警備隊が向かった戦場へと駆けていた。不思議と足が軽かった。今なら何処へでも走って行ける気がした。そしてレルカは戦場へ辿り着く。
魔物はゴブリン種の亜人型の魔物。警備隊は善戦していたが、相手は人間に戦闘力で勝る魔物の上に数で劣る。警備隊10に対してゴブリン17である。警備隊の全滅が避けられないことは誰が見ても明らかだった。この警備隊の隊長はジノ=デリム。彼は死んでも村は守る、と覚悟は決めていたが、それだけでは戦況は動かせなかった。絶望しかかっていた時に飛び込んできた小さい影を見て彼は驚愕した。その小さい影こそ村長の次男レルカだったのだから。
レルカは近くにいたゴブリンに槍をしごいて飛び掛った。ゴブリンはレルカに気づかない。背中から一気に槍を突き刺すとゴブリンは心臓を貫かれて一瞬で絶命。槍を右に振り、ゴブリンの死体を抜くとともに死体を別のゴブリンにぶつけて地面に倒し、2体目に止めを刺す。そこでレルカに気づいたゴブリンの1体がレルカに向かって剣を振り下ろす。レルカはその剣の軌道を読みきり、槍の柄をひねりながら剣を受けると一気に跳ね上げ、がら空きになった腹を刺そうとすると、その腹にはなぜか鎧が付けられていた。ゴブリンは鎧など付けないはずだ。剣は跳ね上げたが、ゴブリンは剣をしっかりにぎっていたために振りかぶった形でゴブリンの頭上にある。振り下ろせばレルカは簡単に斬られる。レルカはゴブリンがニヤリと笑ったように見えた。ここで殺しきれなければ確実にやられる。熱くなった頭が一気に冷えた。恐怖が襲ってきた。そのときだった。冷えた頭になにか文字が浮かんだ。躊躇している暇は無かった。
「アクティブスキル”三連刺”!」
槍が紅色の燐光を帯びた。腕にほとんど力を込めることはない。魔力が槍を、自分を引っ張ってくれる。今までの数倍の速度で突き出された槍はいとも簡単にゴブリンの鎧を突き破るとそのまま深々と貫く。だが、それで終わることなく目にも留まらぬ速さで更に二回ゴブリンを串刺しにする。そのゴブリンは驚いたような顔をしたかと思うとどさりと倒れ、息絶えた。
それから15分後のことである。残ったのは山と積まれた17体のゴブリンの死体とその脇に槍を持ったままゴブリンの返り血で真っ赤に染まった少年であった。
誤字脱字等ありましたら報告いただけるとありがたいです。