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0002 優しさ

クリス王子はエリザベート公爵令嬢に聞いた。

「何故こんな所で泣いているんだい?」

エリザベート公爵令嬢は答えた。

「悲しいのです。ただ、ただ毎日恋しくて悲しい。」

エリザベート公爵令嬢はクリス王子を見ると驚いた。

「なんでもないです!」

エリザベート公爵令嬢は固まってしまった。意中の相手にこんなことを言ってしまった自分があまりにも恥ずかしかった。

エリザベート公爵令嬢は扇子で顔を隠した。それがクリス王子の気を引いてしまった。

「何故泣いているんだい?」

クリス王子が近づいてきて、エリザベート公爵令嬢の涙を指でぬぐった。

エリザベート公爵令嬢は顔が赤くなった。素晴らしい人だと思った。自分がワガママに見えてきた。何故こんなに大人になれないのだろう?両親のことを考えて、他の殿方と恋路を走った方が良いのに。

「答えろ、答えたくなければいい。」

「す、すいません、すいません。」

「とにかく、人を呼ぼう。こんな所で一人で泣いているなんて可愛そうで見てられない。」

とても優しい人だとエリザベート公爵令嬢は思った。

「クリスエイト王子、そのような好意には私には。」

「こんな所で可憐な女が泣いているのだ、何か訳があるのだろう、ハルバード。」

黒髪の騎士が出てきた。

「どうされましたか?王子。」

「この者を医務室に。」

「いえ、最後までここにいさせてください。」

エリザベート公爵令嬢は不謹慎だと思いながらクリス王子と騎士に言った。クリス王子が結婚式を終えるまで見届けなければ、この思いをなくす決心がつかない。

しかし、当のクリス王子にこんなことは言えないので、エリザベート公爵令嬢はこう言った。

「先約があります。」

もちろん、嘘だ。好きな人は目の前にいる。

エリザベート公爵令嬢はそういうと、いそいそとその場を離れた。 

こっちの方がよかったかもしれない。

クリスエイト王子の声を聞くことが、優しさに触れることがとても愛しく、エリザベート公爵令嬢は心が軽くなることを感じた。

クリス王子は優しい人だった。それだけでも心が軽くなった。自分は間違っていなかった。これまでのことが走馬灯のように記憶として写る。

エリザベート公爵令嬢は貴賓室に戻った。

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